(文・撮影=布施鋼治)
「今年はオリンピック・イヤーです。今のところ、日本は10階級で枠を取っている。でも、まだ男子のフリースタイルとグレコローマンで4階級ずつ取っていない。4月のアジア予選、5月の世界最終予選では、重量級にもチャンスがある。全階級出られるように頑張ってもらいたい」
1月4日、東京・味の素トレーニングセンターで男女3スタイルのオリンピック代表内定選手、予選出場予定選手を中心とした新春合宿がスタートし、報道陣に公開した。
その中には、これからパリ・オリンピックの出場枠獲得を目指す男子フリースタイル65㎏級の清岡幸大郎(日体大)や同97㎏級の吉田アラシ(日大)の姿も。冒頭の言葉は練習前、日本レスリング協会の富山英明会長が発したものだ。
続けてマイクを握った同協会・藤沢信雄専務理事は「あと7ヶ月しかないけれど、一番怖いのは、けが。フルに(練習と試合が)できれば、日本の選手はトップに立てる」とゲキを飛ばした。「オレは重量級だから勝てないと、思う選手もいるかもしれない。でも、大谷翔平はメジャーリーグでトップになった。勝てる練習をすれば、勝てるようになる」とも。
1月10~14日開催の世界レスリング連盟(UWW)のランキング大会「ザグレグ・オープン」(クロアチア)出場する女子50㎏級の須﨑優衣(キッツ)、同62㎏級の元木咲良(育英大)、男子グレコローマン77㎏級の日下尚(三恵海運)は、出発前の最終調整に励んだ。
「世界選手権から4ヶ月経つ。コンスタントに試合をやってオリンピックに挑みたい、という気持ちがあったのでザグレグ・オープンに出場することになりました」(須﨑)
男子では唯一、東京オリンピックに続いて連続出場となる男子グレコローマン60㎏級の文田健一郎(ミキハウス)は、東京オリンピックを迎えるときの心境を懐かしそうに振り返った。「(前回は今より)もうちょっとフワフワした気持ちがあったかもしれない。でも、それからいろいろな経験をして、少しは落ち着いたというか、パリに向けて気持ちは高まっています」
そしてパリの前にひとつ大会に出場する意欲があることを明かした。「基本的に調整は東京オリンピックのときと同じ流れで、日体大を中心にやっていきたい。直前にひとつ国際大会をはさむことで、気持ち的にも体重的にも、一度(パリに臨むときと同じ状態に)してみたい」
富山会長は「昨年はWBC(ワールド・ベースボール・クラシック=侍ジャパンは7戦全勝で3大会ぶりに7度目の優勝を果たした)で盛り上がった。今年はレスリングの金メダルラッシュで盛り上げたい」と宣言した。すでにパリに向けての闘いは始まっている。