クロアチア・ザグレブで行われた世界レスリング連盟(UWW)のランキング大会「ザグレブ・オープン」に出場した男女3選手が1月14日、成田空港に帰国した。
5試合に圧勝して優勝した女子50kg級の須﨑優衣(キッツ)は「オリンピック・イヤーの最初の大会。目標を達成して、いいスタートを切れました」と第一声。2回戦のエリザベタ・スミルノワ(AIN=ロシア)戦では、開始30秒くらいに背後に回り込まれて2点を失ったが、タックルを受けてのテークダウンではなく、「うまさにやられた」という失点。「私もそうした技を習得しよう、と思いました」と言う。
この試合を含めてAIN(ロシア、またはベラルーシ)との選手が3試合あった。ロシアの選手との試合は2019年8月の世界ジュニア選手権決勝以来、シニアに限れば2018年2月の「クリッパン女子国際大会」(スウェーデン)以来で、シニアになってからベラルーシ選手とは意外にも初対戦。男子と違ってずば抜けて強い国ではないが、時に強豪が出てくる国だけに、「いい経験ができ、オリンピックにつながると思います」と言う。
研究されている中でも、5試合を通じて2失点、すべてフォールかテクニカルスペリオリティでの勝利に「練習していることが間違いではないと思います。この練習を続けていけば、目標(オリンピック2連覇)を達成できると確信できました。人生をかけて頑張ります。
男子グレコローマン77kg級の日下尚(三恵海運)は、昨年の世界選手権で銅メダルを取り、マークされるようになってから初めての国際大会。昨年の72kg級世界チャンピオン(イブラヒム・ガネム=フランス)と、2022年の82kg級世界チャンピオン(ブルハン・アクブダク=トルコ)の2人の新旧世界王者を破っての銅メダルと健闘した。
「(4回戦で)負けたことは悔しいのですが…」と前置きしたあと、「ネガティブな気持ちはまったくなかった。いい経験ができた」と振り返る。1日6試合闘うのも、これまでになかった経験だが、そのうち4試合が世界選手権でメダルを取ったことのある選手という厳しい内容。「オリンピック前にこうした経験ができたのは、本当によかったです」と言う。
82kg級で世界一に輝いたアクブダクは、「でかい」と感じたという。それもあって終盤まで劣勢をしいられたが、闘い続けられる体力を発揮し、最後は「気持ちで闘いました」と、あきらめない姿勢が勝利につながった。オリンピックでは、他にも82kg級から階級を下げてくる強豪が出てくるだろうから、そうした相手との闘いの予行練習になったことだろう。
負けた相手のゾルタン・レバイ(ハンガリー=2022年世界選手権2位)には、グラウンドで一気に極めてこられ、「対策されていると感じた」と言う。「課題であり、次へ向けて修正する材料です」と話す。これも大きな経験となった。
試合以外では、飛行機の乗り継ぎがうまくいかずに到着が遅れたり、ホテルのエレベーターが急に落ちて、ちょっとの時間だが閉じ込められたりなどのトラブルがあった。遠征につきもののアクシデントを乗り越えることも優勝の条件。「遠征でなければ経験できないことは多い。4月のアジア選手権(キルギス)にも出て、外国選手との闘いを経験し、パリでは表彰台の一番高いところに立ちたい」と気合いを入れた。
準決勝で世界チャンピオンのアイスルー・チニベコワ(キルギス)に終了間際の逆転負けを喫した女子62kg級の元木咲良(育英大)は「去年の世界選手権決勝のときより手ごたえはありました。(今回は最後の30秒で逆転されたが)何をやるべきかが分かった。収穫のある試合でした」と、実力差は狭まっているとの感触。
世界選手権で負けたあとは、「絶対に勝てない」という気持ちがあったというが、今回は試合のすぐあと、「これやりたい、あれやりたい、帰国してから、すぐこれに取り組みたい、早く監督と話をして練習したい、という気持ちだった」と言う。
対戦成績は2連敗となったが、「2連敗したから、次は2連勝です」と口にするあたりは、気持ちは上向いている。
この試合で右ひざを痛め、大きなけがではなかったが、「大事なことは、この大会でメダルを取ることではない」として、3位決定戦は棄権した。負傷を治すことが最優先だが、4月のアジア選手権にも出て試合経験を積む予定。「今回の遠征を経験し、まだ強くなれると思った。メダルを取る以上に価値のある遠征でした。パリが楽しみになりました」と話した。