▲全日本トップ選手~次世代の有望選手の約150選手が参加しての合同練習がスタート
男女3スタイルの全日本チーム合宿と、スポーツ振興くじの助成金を受けてのNTS(ナショナル・トレーニング・システム)中央研修会が2月8日、東京・味の素ナショナルトレーニングセンターでスタート。オリンピック代表内定選手から高校有望選手まで150人近い選手と20人を超えるスタッフが集って実力アップをはかった。11日まで行われる。
他に、韓国から「日本の練習をぜひ見学したい」として韓明愚・韓国協会副会長をリーダーに約20人の指導者が訪れ、今や韓国を上回る成績を残している日本の練習を見学した。
NTS中央研修会は、一貫強化を目的に、全日本合宿と合同という形で2010年にスタート。男子の高校選手が全日本選手に挑める貴重な練習機会となり、2020年まで継続。コロナで中断したあと昨年復活し、今年は初めて女子が加わって3スタイルでの練習となった。
女子が加わった背景としては、女子の全国的な普及がある。コロナ前までは、年末に全国の6地区で男子のNTS研修会を開催する一方、女子は味の素トレセンでNTS研修会・全国女子高校生合宿として実施してきた。年ごとに、「男子の参加する研修会に女子選手も参加させて、よりハイレベルの技術を学ばせたい」という声が強くなり、各地区の研修会に女子も参加するようになって、女子も地方での研修会~中央研修会という流れとなった。
赤石光生・強化委員長は「時代の流れでしょう。地方からの声にこたえる形で実施しました。時代にあったやり方をしなければならない」と、強化には柔軟な思考が不可欠と説明。初日の高校選手の練習を見て、「自分たちの時代よりはるかに高いレベルでやっています。若い選手が上を突き上げることで、全体のレベルが上がっていく」と話した。
全日本チームに限れば、今年の正月明けに3スタイル合同の合宿をやっている。2021年の東京オリンピック前にも何度か実施しており、「チームが心をひとつにするためにも必要」と、チームの一致団結につながると考えている。中央研修会参加の高校選手からの刺激をもらい、勢いをつけて春の決戦(オリンピック予選)へ向かう腹積もりだ。
全日本学生連盟の馬渕賢司強化委員長(中京学院大監督)は「昨年の全日本選手権は、学生が19階級を制した(男子フリースタイル8、男子グレコローマン4、女子7)。学生連盟の立ち位置を明確にし、学生連盟として日本レスリング界を盛り上げていきたい」と、参加の意義を話す。
3月には学生チャンピオンを中心にした男女24選手がトルコ遠征に行く予定で、その選手も参加している。「空港で初めて顔合わせ、ではなく、事前に一緒に汗を流すことで団結心が生まれる。メールやSNSで伝えるだけでは駄目。実際に会って心構えを話すことが大事。貴重な練習機会になります」と話した。
男子フリースタイル74kg級でパリ・オリンピック代表に内定している高谷大地(自衛隊)は、京都・網野高時代に中央研修会に参加したことがある。オリンピック代表を勝ち取っての“里帰り”となった。「若い選手が多くて活気ある練習はいいですね。集中力が高まる練習ができます。高校時代の恩師が来ていて張り切っている選手もいるし、いいムードと感じる合宿です」と言う。
オリンピックを目指す練習に専念したい部分もあるだろうが、「(技術などを)若い選手に伝えていかなければならないと思います。高校生にとっては、全日本トップ選手と触れ合える貴重な機会。上の世代と下の世代が一緒になって頑張っていこう、という気持ちを再確認できるいい機会です」と、若い選手にとっても自分にとっても必要な場であることを強調した。
女子53kg級で無敵の白星街道を突っ走る藤波朱理(日体大)にとっては、これだけ多くの選手が集まっての合宿は初めてのこと。コロナ禍のときは、全日本合宿であっても少人数でのことが多かっただけに、「これだけ大勢の選手とともに練習するのは、新鮮に感じます」と話す。
先月14日の大学女子リーグ戦では、57kg級世界チャンピオンの櫻井つぐみ(育英大)との対戦がマスコミの注目を浴びたが、この日の練習では、櫻井のみならず、50kg級世界チャンピオンの須﨑優衣(キッツ)とのスパーリングも実施。55kg級には奥野春菜(自衛隊)もいて、世界チャンピオン同士の練習は日常茶飯事というのが、今の全日本チーム。「女子全員で切磋琢磨し、全階級で金メダルを取れるように高め合っていきたい」と言う。
今月後半には至学館大への出げいこも予定している。いろんなチームでの練習に加わって多くのタイプの練習相手を求め、パリ・オリンピックでの金メダルを目指す。