3月7~10日にトルコ・イスタンブールで行われた2024年「ヤシャ・ドク&ベービ・エムレ国際大会」に出場した学生選抜チームが3月12日、成田空港に帰国した。優勝5選手を含めて9選手がメダルを獲得した。
馬渕賢司監督(中京学院大監督)は、男子フリースタイル61kg級の小野正之助(山梨学院大)が初の国際大会ということにやや驚いたそうだが、優勝という結果を出したことで実力を再認識。昨年(ブルガリア遠征)も同65kg級の清岡幸大郎(日体大)が初の国際大会で初優勝を遂げ、その後大きく飛躍した例を挙げて、日本の軽量級は世界で通じる実力があることを実感したもよう。今回は結果を出せなかった選手も、この遠征を機に「今後、さらに躍進してほしい」と望んだ。
強化のための学生の遠征は、国内大会や授業の関係でこの時期にしか実施できず、所属や選手の家族の経済的な協力があって成り立つ。若い選手に活躍の場を与えられる場として、「有意義な遠征になると思います」と話し、今後も周囲の理解を得たうえで続けていきたい気持ちを話した。
国内では数々のタイトルを持っている小野は、コロナ禍で世界への道が閉ざされていたり、けがで予選に出場できなかったりで国際舞台のマットに上がる機会がなかった。今大会では、2回戦で昨年のアジア選手権優勝・世界選手権3位のキルギス選手、準決勝で東京オリンピック57kg級5位・2022年世界選手権61kg級2位のイラン選手を破るなど、国内で培った実力を遺憾なく発揮した。
「自分のことを知られていなかった、という面があると思います」と謙遜しつつ、「強い選手が相手でも勝てるんだ、と思いました。自分のレスリングが世界でも通用すると思いました」と、かなり自信になった様子。
ただ、「この階級のトップは日本にいます。国内のトップを目標にしたい」と話し、もっと頑張らなければならない状況を強調する。2022年世界王者の樋口黎(ミキハウス)のことで、オリンピック出場のため57kg級へ下げているが、オリンピックのあとは61kg級に戻ってくることを予想。世界一になるには樋口の壁を破らなければならないとし、今後の努力を誓った。
女子50kg級で、昨年のU23世界選手権に続く優勝を遂げた伊藤海(早大)は、そのときと同じく決勝は相手の負傷棄権による闘わずしての優勝。「ともに相手が恐れをなして、逃げたのかな?」との声に苦笑いし、「3試合を闘い、日本にはいないタイプの選手と、もっと闘わないとならない、と思った大会でした」と話した。
国際大会は負け知らずの8大会連続優勝だが、シニアの大会は「クリッパン女子国際大会」(スウェーデン)に続く2大会目。シニアでは簡単に勝てないことを実感し、「しっかり対策しないとなりません」と気を引き締めた。今年は、2年連続U23世界チャンピオンを目指して4月のジュニアクイーンズカップに勝ち、全日本のタイトルを取ることが目標。
遠征に参加したほとんどの選手が、U23世界選手権予選(3月17日)やジュニアクイーンズカップ(4月14日)の出場を予定しており、5月には明治杯全日本選抜選手権が待つ。
■女子59kg級優勝・中西美結(至学館大)「海外の試合での優勝はなかったので、優勝できてよかったです。去年のU20アジア選手権では、インド選手に流れをもっていかれて負けました。今回は相手のペースに持っていかせなかったので、その経験が生きたのかな、と思います。今年はインカレでの優勝が目標ですが、どんな大会でもひとつひとつ勝っていきたい」
■女子65kg級優勝・吉武まひろ(日体大)「いい動きだったとは言えませんが、優勝できたのはよかったです。ノルディック方式の試合になり、4人のブロックでなかったので、ちょっとほっとしましたね。世界選手権に出ていた選手にも勝てて、自信につながりました。ただ、課題はたくさん見つかりました。(来月の)アジア選手権へ向けてしっかり克服したい」
■女子72kg級優勝・新倉すみれ(神奈川大)「(6大会目での国際大会初優勝)素直に、めっちゃうれしいです。1試合目は動きが悪かったのですが、2回戦からは動くようになり、練習してきたことを出せたことが勝因だと思います。来月、アジア選手権に出ます。2年連続銀メダルに終わっているので、今年は優勝が目標。非オリンピック階級の世界選手権を目指して明治杯も頑張りたいと思います」
■女子57kg級2位・中村成実(法大)「2回戦からぎりぎりの試合が続きましたが、最終的にメダルを持って帰ることができて、よかったと思います。決勝は、相手の方が力強くて技もあったので、もっと練習する必要を感じました。今年はインカレで優勝が目標。国際舞台ではU23の世界選手権を目指したい」
■76kg級3位・山本和佳(至学館大)「納得のできる結果ではなかったのですが、世界2位でアジア大会優勝の選手(アイペリ・メデトキジ=キルギス)をはじめ、世界トップ選手と試合ができ、いい経験になりました。キルギス選手には気持ちで負けた面があったのかもしれません。遠い存在だったのが、もう少し頑張れば、と思えた試合でした。去年のアジア大会とU23世界選手権でメダルがなかったので、それだけは嫌だと思って闘いました」
■男子フリースタイル70kg級3位・青柳善の輔(山梨学院大)「とりあえずメダルを取れて、よかったです。(準決勝は微妙な判定での逆転負け)海外であのような展開になったら、仕方ないと思います。しっかりと勝ち切れる選手になる必要があります。ただ、シニアの国際舞台でもメダル圏内の実力はついたのかな、という気がするので、今年の世界選手権で優勝を目指せる位置にきたと思います。その前に、去年3位だったアジア選手権でそれ以上の成績を目標にして闘います」
■男子フリースタイル86kg級3位・髙橋夢大(日体大)「去年のダン・コロフ国際大会優勝のイラン選手と闘い、最初の4失点が大きく響いて追いつけなかった(4-9で黒星)。闘い方次第では、もっといい勝負ができたと思います。自分の強みであるタックルからの処理はうまくできたことが多かったけれど、ディフェンスに課題がありました。海外で勝つには、もっと練習しないとならない。外国選手に力負けすることはなかったので、86kg級の闘いには慣れたと思う」