インドのパリ・オリンピック予選の国内選考会が3月10日にパティアーラで行われ、2021年東京オリンピックの男子フリースタイル57kg級銀メダルのラビ・クマール、同65kg級のバジラン・プニアが優勝を逃し、パリ・オリンピック出場が難しくなった。
57kg級はクマールを破ったアマン・セフラワト(2023年アジア選手権優勝)、65kg級はプニアを破ったロヒト(2021年世界選手権5位)ではなく、ロヒトを破ったスジート・カルカル(2022年U20アジア選手権優勝)が4月のアジア予選(キルギス)に出場予定。アジア予選で出場枠獲得を失敗しても、5月の世界最終予選(トルコ)に出場するという。
クマールとプニアは、出場枠を取ってきた選手との国内最終予選で“出場枠奪取”の可能性があるが、現在、インドのレスリング協会は会長のセクハラ問題で混乱を極めており、インド・オリンピック特別委員会(IOA)の前記の決定が規定通りに行われるかどうか疑問視されている。
女子では、2018年アジア大会優勝のビネシュ・フォガトが50kg級を勝ち抜き、アジア予選に出場する予定だが、すでにインドが出場枠を取っている53kg級にもエントリーし(注=優勝して最終選考で出場枠を奪うためと思われる)、同級での優勝を逃した後、50kg級の試合に出場して優勝するという前例のない形での代表権獲得。
IOAが認めた中での結果だが、主催を剥奪された形となっているインド・レスリング協会(WFI)は、世界レスリング連盟(UWW)に対して「レスラーが同じ日に2つのカテゴリーで競技することを許可されたとことは、レスリングの歴史の中で一度も起こったことがない」と、この結果の無効を訴えている。
UWWルールの第7条では、「出場が認められる階級は『1体重階級』とする。つまり、正規の計量時に計量された体重の階級である。」との規程があり、1人の選手が同じ大会で2つの階級に出場することはできない(注=1大会で両スタイルに出場した選手は過去に世界で何人もいる)。IOAは「委員会全体が彼女の要望に応えることに同意した特別ルール」と、フォガトを全面支援の姿勢。
インドでは、会長のセクハラ疑惑に対して、プニアやフォガトら現役選手が強硬な抗議活動を展開。UWWは指定した期限内にインド協会が選挙を実施できなかったことを受け、昨年8月、同協会に資格停止処分を科し、選手は「インド」ではなく「UWW選手」として国際大会への参加を認める措置をとった。
今年2月に、いくつかの条件のもとで処分を解除。「インド」としての出場を認めるとともに、追跡調査を実施するとしていた。インドのメディアで報じられている限りでは、インド・レスリング界の混乱、WFIとIOAの対立は依然として続いており、迷走はおさまってはいない。
アジア予選に出場予定のインド選手は下記の通り(注=UWWの発表ではありません。最終エントリーまでに変更の可能性もあります。インドは同名の選手が多く、成績とは別選手の場合もあります)。
▼57kg級 Aman Sehrawat=2023年アジア選手権優勝・アジア大会3位
▼65kg級 Sujeet Kalkal=2022年U20アジア選手権優勝・U20世界選手権3位
▼74kg級 Jaideep=2023年U20世界選手権3位
▼86kg級 Deepak Punia=2023年アジア大会2位
▼97kg級 Deepak=2022年コモンウェルス大会3位
▼125kg級 Sumit, Sumit=2021年アジア選手権7位
▼60kg級 Sumit, Sumit=2023年U23世界選手権3位
▼67kg級 Ashu=2023年アジア選手権8位
▼77kg級 Vikas=2023年アジア選手権72kg級3位
▼87kg級 Sunil Kumar=2021年アジア選手権7位
▼97kg級 Nitesh=2023年U23アジア選手権3位
▼130kg級 Naveen=2023年アジア選手権8位
▼50kg級 Vinesh Phogat=2022年世界選手権53kg級3位
▼57kg級 Anshu Malik=2021年世界選手権2位
▼62kg級 Mansi=2022年世界選手権59kg級7位
▼68kg級 Nisha=2023年アジア選手権2位
▼76kg級 Reetika, Reetika=2023年U23世界選手権優勝
※53kg級は出場枠を獲得済み