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2024.04.07

男子グレコローマンの日本代表選手が遠征前の最後の練習

 

(文・撮影=布施鋼治)

 キルギス・ビシュケクで行われるアジア選手権(4月11~16日)パリ・オリンピック・アジア予選(19~21日)へ向けての男子グレコローマンの全日本合宿が、4月6日から東京・味の素トレーニングセンターで予定されていた。しかし、2日から始まった男子フリースタイル合宿に体調不良者が確認され、同スタイルの合宿とともにグレコローマンの合宿も大事をとって中止となった。

 出場を予定している選手たちは、それぞれの所属などで調整に励んだ。公開練習も予定されていた6日、日体大のグレコローマンの練習には、アジア選手権に出場する60kg級の稲葉海人(日体大大学院~滋賀県スポーツ協会)、77kg級の日下尚(三恵海運)、130kg級の小林奎太(長野・小諸商高教)、そしてアジア予選に出場する67kg級の曽我部京太郎(日体大~ALSOK)の姿があった。

▲全日本合宿は中止となり、曽我部京太郎ら日本代表選手は各所属で最後の調整へ

 稲葉は、パリ・オリンピック出場を内定している文田健一郎(ミキハウス)を相手に汗を流した。「僕は中1の頃から健一郎先輩に面倒をみてもらっています。ずっと目標にしている先輩。ふだんの生活では、いい兄貴という感じで、僕に背中を見せてくれる」

 しかしながら、文田とは同じ60㎏級。稲葉は「パリまでは先輩のサポートがあるけど、それが終わったらライバルになる」と断言する。「次のロス・オリンピックに向けて、健一郎先輩のことも対策してやっていきたい」

 日下と曽我部は日体大の松本慎吾監督を相手に練習する場面が目立っていた。現役を退いて10年以上が経つが、その強さは健在で、2人ともやられる場面も。逆に、監督の巨体を投げたり崩したりする展開もあったので、松本監督は教え子たちの成長に目を細めていた。

▲曽我部京太郎を押さえる松本慎吾監督

 日下は「勝手に“チーム四国”を作りました」と明かす。「アジア予選に出場する清岡幸大郎や櫻井つぐみの恩師で、つぐみの父親でもある櫻井優史先生は僕の高校の先輩なんです。しかも、櫻井先生の実家とウチの実家は近くて、僕の両親と櫻井先生が通っていた中学校が一緒というくらい距離が近い。つぐみや幸大郎の活躍は励みになる一方で、負けたくないという気持ちにもなりますね」

 ちなみに今回のアジア選手権に高校生で出場する男子グレコローマン82kg級の吉田泰造(香川・高松北高)は、日下と同郷で高校の後輩でもある。前述した清岡の妹で女子55kg級の清岡もえ(育英大)も高知県出身選手として今大会に出場する。さらに、曽我部も愛媛県今治市出身なので、チーム四国に加入する“資格”を持つ。もっというと、松本監督も愛媛出身だ。

▲松本監督を俵返しで投げる日下尚

 曽我部は「今日の練習は、試合前で硬くなっていた自分の動きを松本先生に見てもらっていたという感じ」と振り返った。「今は、勝つ、という気持ちしかない。たくさんの人たちが応援してくれているので、その気持ちにも応えたい。そのせいで気持ちは高ぶっているけど、たかぶりすぎないように気をつけています」

 それぞれの思惑を胸に、グレコローマン勢は間もなくキルギスに旅立つ。


 ■アジア予選・67㎏級出場・曽我部京太郎(ALSOK)「エントリーのメンバーはほぼ予想通り。自分の長所を伸ばしつつ、ミスがないようにどれだけ自分の持ち味を出せるか。あとは体のコンディションが一番だと思う。体と気持ちのコンディションはしっかりと仕上げていきたい。自分は東京オリンピックの世界最終予選で、高橋昭五先輩の試合を目の前で見ていたけど、あと一歩というところで負けてしまった。そして(今回代表争いをした)遠藤功章先輩の気持ちも背負って闘いたい」

▲松本慎吾監督を投げる曽我部京太郎


 ■アジア選手権77㎏級出場・日下尚(三恵海運=1月の「ザグレブ・オープン」に続く大会出場)「楽しみです。世界選手権準決勝で負けている相手(キルギス初のグレコローマンの世界王者のアクジョル・マフムドフ)もエントリーしている。世界選手権で闘ったときの映像を見返したけど、『もっとこうしたらいい』という部分ばかり見つかった。いまはワクワクしています。アジアのあとには6月のハンガリー(UWWランキング大会)にも出ます。オリンピックのシードをとりたいので。人によって考えは違うけど、僕の場合、(オリンピックでは)1試合でも少ない方がいい。1試合1試合に出せる集中力が違うと思うので」

▲松本慎吾監督と練習する日下尚


 ■アジア選手権60㎏級出場・稲葉海人(滋賀県スポーツ協会=アジア選手権初出場)「世界チャンピオンのジョラマン・シャルシェンベコフ(キルギス)も出てくるので、高いレベルの闘いになると思う。(文田)健一郎先輩が負けたシャルシェンベコフに勝ち、健一郎先輩にプレッシャーをかけたい。すでにイメージはしている。試合になると、どうなるかわからないけど、自分のレスリングをしっかりと出して倒したい。たぶん、パリにも(練習パートナーとして自分が)帯同すると思うけど、オリンピックに向け、少しでも日本の強さを見せて、海外勢にもプレッシャーをかけたい」

▲文田健一郎と練習する稲葉海人(青)







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