(2024年4月15日、キルギス・ビシュケク / 撮影=保高幸子)
■77kg級優勝・日下尚(三恵海運=世界V2のマフムドフを破って優勝)「最高です。世界選手権で負けてから、リベンジする目標を持ってやってきました。相手の敵地で勝てたのは、自分のレスリング人生で大きなことです。戦略は、あれ(相手をばてさせて最後は何もさせない)しかなかった。世界選手権で闘ったときの動画を見て、あのときは様子を見た部分が多いことが分かった。それをなくし、できるだけ相手を動かそうとして、その作戦が当たりました。(相手のリフト技は)上がってしまったんですけど、1点で押さえられたのがよかった。
(完全アウェーの中で勝てたメンタルの強さを指摘され)うどんのコシの強さでしょ(笑=注・地元香川の名産がうどん)。アウェーの場は好きなんです。勝ったときの会場のシーンとした雰囲気、最高でした(笑)。自分のスタイルにはめれば(周囲に惑わされることなく)世界王者も倒せる域まで来ていると思うので、オリンピックの雰囲気も大丈夫です。
ここはゴールではありません。オリンピックで金メダルを目指しています。数多くの動画でマフムドフの強さが広がっていて、周囲にも『あの選手にどうやって勝つの?』と思っている人もいます。本気でやればできないことはありません。若い選手は動画を見てびびることが多いですけど、それは違うことを証明していきたい。
相手は(負けたのが)ここでよかった、と思っているでしょうが、『嫌だ』という印象を与えることができたでしょうし、自分にとってはこの勝利は大きい。やってきたことが間違いでなかったことが分かった。もっと強くなれると思います」
■63kg級2位・鈴木絢大(レスターホールディングス=本来より上の階級で決勝進出も、無念の銀メダル)「最初4点を取って、安心したというか…。スタンドで取られない自信はあったので、もう少し攻め方を考えないとならなかったのかも、と思います。一本背負いや首投げを警戒されていたので、そり投げに切り替えたのですが、極めが足りなかったのと、相手が汗をかいていたことが影響しました。
オリンピック出場がなくなって、けがもあり、2月には腰も痛くなって厳しい状況でしたが、その中でも、(準決勝は)去年のチャンピオンに勝てたのはうれしいです。でも、63kg級でも勝つために来たので、負けてしまったのは悔しいです。今年は非オリンピック階級の世界選手権があるし、(予選の)明治杯でしっかり勝って、世界選手権へ向けて取り組みたい。60kg級に戻すので63kg級の体づくりはしていないにもかかわらず、ここまでできたのは自信になったし、悔しさが刺激になる」
■87kg級3位・角雅人(自衛隊=昨年のアジア大会に続く銅メダル)「目標としていた結果とは違いますが、メダルを取れたことはよかったです。今までは結果だけを追い求めて来ました。今回は楽しさを求めました。これまでは、オリンピックを目標に自分を追い込んできました。オリンピック出場を逃して、気持ちを切り替えるのに時間がかかりましたが、それでも練習を続けて、レスリングは楽しい、と思えることが多かった。結果を求めてぎらぎらという気持ちで闘うことは、大事なことですが、楽しんでやってみようかな、と。
これまで死ぬ思いでレスリングをやってきました。今回は楽しかったです。こんなに素直な気持ちで最初から最後までやったのは、初めてです。周囲は『角は終わった』と思っていたでしょうけど、練習は続けていたし、楽しんでやるという気持ちになっています。試合内容はともかく、その気持ちで闘えたのはよかったです。結果にこだわるのは当たりまえですし、結果を出した選手しかここには出られません。そういう世界で生きている限り、それが当然ですが、根本は楽しくてレスリングを始めたと思います。その気持ちを思い出すことができました」