キルギス・ビシュケクで世界2連覇の強豪(アフメド・マフムドフ=キルギス)を破り、アジアの頂点に立った男子グレコローマン77kg級の日下尚(三恵海運)が4月18日、成田空港に帰国。大勢の報道陣に囲まれ、「世界選手権で負けた相手にリベンジするためにアジア選手権に出ました。勝ててよかった。人生をかけてオリンピックで金メダルを取りにいく。強い思いをもってオリンピックに臨む」と力強く話した。
世界選手権で負けてから、映像でしっかりと研究し対策を立てた。「それが試合ではまり、勝つことができました」と、徹底した研究を勝利の要因と分析。「(地元香川名物の)うどんのコシの強さを示せました」と笑わせたあと、「世界に、クサカもいる、というアピールになったと思います。一番の収穫は自信。世界で勝てる、という自信がつきました」と、成果を話した。
マフムドフは、あらゆる競技を通じてキルギス初のオリンピック金メダルが期待される地元の英雄選手。街には大きな看板があり、試合では大きな声援が送られたという。そんな中で試合をする完全ヒール(悪役)の役割が、最後は会場を静まらせて「気持ちがよかったです」と言う。
マフムドフとの試合で、そり投げを仕掛けられ、首だけでこらえて1点に抑えたシーンを問われると、「相手の投げと自分のバランスの攻防だった。うどんの太麺のように、自分のコシの太い体幹で耐えました。コシです。コシで耐えました」との答え。取材を受ける機会が多くなったためか、報道陣を笑わせる“技術”も向上しているようだ。
選手の試合映像が簡単に手に入る現在、研究と対策は優勝のための必須条件。今度は日下が世界の選手から徹底的に研究されることになるが、「(出場が予想される選手の)やりたい攻撃は分かっている。こちらも対策し、相手を上回る実力をつけたい」と、相手の上をいく闘いを目指す。
勝てなかったときの自分を考えると、こうして多くの報道陣を集める今の自分が考えられないそうで、「本当にうれしいことです」と感慨深そう。一方で、「勝てなかった頃の思いを忘れず、調子に乗っては駄目、という気持ちを持ってやっていきたい」と、“初心忘るべからず”の姿勢を強調した。
その気持ちからか、今回は「自分は前座」と言い切る。きょう19日からパリ・オリンピックのアジア予選が始まり、「勝手につくった」という“チーム四国”から、清岡幸大郎(三恵海運=男子フリースタイル65kg級、高知県出身)と曽我部京太郎(ALSOK=男子グレコローマン67kg級、愛媛県出身)が出場するからだ。
「四国って田舎なんです。関東の高校のように簡単に大学の練習に加わることもできない。そんな中で、みんなが力を合わせて必死に練習して、ここまで来ました。2人には絶対に出場枠を取ってほしい」と話した。
ともに日体大のレスリング場で汗を流しているチームメート。取材対応と遠征のねぎらいのため用意された「うどん」を、同郷で同じアジア・チャンピオンの吉田泰造(香川・高松北高)とともにたいらげて香川愛を強調するとともに、四国愛を訴え、四国のパワーをアピールした。