(撮影=保高幸子)
4月11日から21日まで、キルギスで行われた2024年アジア選手権とパリ・オリンピック・アジア予選に、日本の女性審判として初めて古里愛里審判員(茨城・東洋大附牛久中高教)が参加。「会場の雰囲気やマット上での緊張感が、今まで参加してきた国際大会と全く違いました」との感想を持ちつつ、務めを終えた。
思っていたよりも審判に指名される機会がなく、待機の時間が長かったそうで、沖山功・日本協会審判員長や他国のⅠS級(最高位)の審判員らのレフェリングを見て学ぶ場となった。古里審判員は「カテゴリーI」。世界選手権やオリンピックを裁けるIS級の審判は「動きがゆっくりで、何ごとにも動じない強さが感じられました。高い集中力で冷静に判断しながらも、適度な脱力感でマットに上がっていました」と、強弱をつけたレフェリングを感じたそうだ。
マットに上がる機会があったが、「緊張でガチガチになってしまい、冷静な判断ができませんでした」と言う。
それでも大会を終え、「シニアの国際大会で常時マットに上がるレベルの審判になるために、多くの課題が見つかった大会でした。日本に戻って、国内の大会1つ1つで、審判技術はもちろんのこと、もっともっとメンタル面の強化をしなければならないと感じました」と言う。
経験豊富な沖山審判長や、世界レスリング連盟(UWW)の小池邦徳審判員と一緒の参加に「学ぶことが多かった」と振り返った。マットの上以外でも、「他国の審判員とのコミュニケーションの取り方や、危機管理能力など、遠征中の心得について様々なことを教えていただきました」と、先輩審判員の指導に感謝。「この大会に参加するために、家族や職場や多くの方のサポートをいただいたので、そのことに心から感謝しています」と締めくくり、今後の飛躍を誓った。
女子がオリンピック種目になる前の女子世界選手権では、日本初の女性国際審判だった増田早苗さんが参加して決勝戦のレフェリーに抜てきされたことはあったが、オリンピック種目となり、世界選手権が男女同時に実施されるようになってから、日本女性で世界選手権を裁いた審判員はいない。
UWWは、2028年ロサンゼルス・オリンピックで審判の比率も男女同数か、それに近い割合に近づけることを目標にしており、今後も女性審判員の抜てき・登用が進むものと思われる。日本の女性審判員の奮起が望まれる。