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2024.05.04

【2024年JOC杯・特集】「チーム四国」への加入を目指し、古豪・徳島県から2位に入賞! 伝統復活を目指すつるぎ高・藤田隆和監督

 

 パリ・オリンピックの代表に内定した男子グレコローマン77kg級の日下尚(三恵海運=香川県出身)が「勝手につくった」という「チーム四国」。日下のほか、昨年の世界選手権で高知県出身の櫻井つぐみ(育英大助手)がパリ・オリンピック出場枠を獲得し、今年4月のアジア予選(キルギス)で高知県出身の清岡幸大郎(三恵海運)と愛媛県出身の曽我部京太郎(ALSOK)が代表内定に加わり、勢力を増してパリへ向かう。

 四国にはもうひとつ、徳島県がある。過去のオリンピックの代表選手はのべ13人で、世界チャンピオンも輩出。歴史的観点から見れば、他の3県の比ではない。だが、今の実力は大きく引き離されている。それでも、3県が成長した方法であるキッズクラブからの一貫強化でベースをつくり、復活へ向けて動き出している。

▲徳島県勢として久しぶりの2位入賞を果たした中平旭(徳島・つるぎ高)と同高の藤田隆和監督

 2024年JOC杯ジュニアオリンピックカップのU17男子グレコローマン65kg級で中平旭(徳島・つるぎ高)が3試合に勝って決勝へ進出。田中陸(千葉・日体大柏高)に敗れて銀メダルに終わったが、一時はリードする健闘を見せ、今後に期待できる内容を残した。中平は「最後の1分を闘う力がなかった。終盤の粘りでは相手の方が上だった」と敗因を分析し、今後に役立てる腹積もり。

 「王者・日体大柏という名前に気後れした面は?」との問いに、「まったくありません」ときっぱり答え、今年の目標を8月の全国高校生グレコローマン選手権での「優勝」と言い切った。こうした言葉を、自信を持って言える選手が後に続けば、徳島県の復活も遠い日のことではないはず。

王国復活への道は確実にスタートしている

 同県の一貫体制による強化で立ち上がったのが、1991年に全日本王者に輝いている藤田隆和・同高監督(国士舘大OB=同県出身)。10年以上前、2012年ロンドン・オリンピックまで全日本女子チームのスタッフを務めていた藤川健治コーチ(当時自衛隊)弟・康広さん(徳島・池田高卒)が立ち上げたキッズクラブ「ジョイフル」をコーチとして助け、そこで育った選手を高校で引き受けてさらに強化することで、復活を目指した。

 当時はレスリング部のない高校に勤務していたが、2016年につるぎ高校に赴任してレスリング部を引き継ぎ、昨年の県大会の学校対抗戦で初優勝を達成。インターハイ初出場を果たすまでにチームを育てた。その間の2017年愛媛国体では、「選手の手本になるように」との気持ちから、52歳にして出場し、教え子に挑戦する姿勢を見せた(関連記事)。決して早いスピードではないが、王国復活への道は確実にスタートしたと言える。

▲高校レスリング界を席巻する日体大柏(千葉)の選手を相手に、一時リードする健闘を見せた中平旭

 今大会での2位選手誕生に、「キッズからやっている選手です。一歩一歩頑張れば、ここまで来られるのかな、という気持ちです」と話し、積み重ねの結果だったことを強調。一貫強化のひとつが結実しつつある手応えを感じているようだ。「四国の他の3県がオリンピック選手を生み、非常に高いレベルになっています。徳島県も追いつきたい、という思いでいっぱいです」と話す。

キッズクラブ設立も大事だが、続けてもらう努力が必要

 現在の県内の実施高は3校(つるぎ高のほか、穴吹高池田高)。つるぎは部員が11人いるし、いずれも学校対抗戦のメンバーが組める選手数がいるので、その点は好材料。しかし、やはり全国レベルの選手が生まれ、その選手が全体を引っ張り、他の選手から目標とされる存在となることが必要。“井の中の蛙(かわず)”であってはならない。中平の全国2位躍進は、リーダー輩出の足がかりができたと言える。

 一貫強化は全国各地で実施されており、その中から強豪選手が誕生しているのは事実だ。だが、そんな例ばかりではない。小学校時代はレスリングに取り組んでくれても、全員がレスリングを続けるわけではなく、卒業すると他のスポーツへ流れることも多い。藤田監督も、そんな経験を数多くしている。

▲セコンドとして中平に指示を与える藤田監督。強化が実る日は近い!

 「保護者との連携を取り、地道に指導してレスリングへ引きつける努力をするしかないですね」と藤田監督。一貫強化を目指してキッズクラブをつくることも必要だが、続けてもらうだけの努力も必要。同県だけではなく、レスリング界全体で普及と広報(啓蒙や目標の設定など)の努力も欠かせまい。

四国3県と国士舘大OBの“絶対に諦めないという強い思い”で成長する!

 藤田監督は「高校に入ってからレスリングを始める選手も少なくないんです」と話し、一貫強化だけではなく、そんな選手を大事に育てていくことの必要性も感じている。財政的には厳しいが、レベルアップのため、四国の他県のみならず、九州、ときには関東の大学へ出げいこに行くこともある。

 そんな努力が実って、今年はつるぎ高校から男子で日体大、女子で育英大というトップ大学へ進んだ選手が生まれた。選手としての成長はもちろん期待するが、日本トップレベルの技術を学び、将来、教員を目指して地元へ戻ってきてくれる足がかりができたことがうれしそう。

▲将来の希望の星は、熱心な指導者や保護者により確実に成長している。「ジョイフルレスリングクラブ」は週3回道場で練習を行い、他県の合同練習にも積極的に参加をしている=藤田隆和監督提供

 藤田監督は、日体大の一強だった時代に、真っ向から挑んだ国士舘大のメンバー。チームを支えた同世代の選手では、沖縄・北部農林高の屋比久保監督(関連記事高知・高岡高の小玉康二監督(関連記事石川・志賀高の山下勝監督(関連記事福島・喜多方桐桜高の下村保伸監督(関連記事茨城・鹿島学園高の高野謙二監督(関連記事藤田龍星・宝星兄弟の父・征宏さん(関連記事、東日本学生連盟の会長に就任した吉元収・神奈川大監督などが選手育成で手腕を発揮しており、「励みになります。もっとやれる、という気持ちになります」と言う。

 四国3県と国士舘大の同世代のOBの強い思いを受けながら、古豪復活へ向けて藤田隆和監督の挑戦が続く!







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