西日本学生リーグ戦で5季連続優勝を達成していた周南公立大が、盤石の試合内容で2024年春季リーグ戦を制覇。連続優勝記録を「6」に伸ばして、歴代3位タイから単独3位に躍り出た。
恒例の守田泰弘監督の胴上げ。6季連続優勝にからめて、その体が6度宙を浮くはずだったが、6度目は上げる選手と上がる監督のタイミングが合わず、途中で終わってしまう中途半端な形へ。単独3位に躍り出た優勝としては、「?」のフィナーレだった。
守田監督は「選手には『6度』と言っていたんですけど、体力がね…。秋季までにはしっかり体力をつけます」と苦笑い。胴上げされることを経験できる人は限られているので、ピンと来ない人の方が多いと思うが、胴上げは上げられる側も体力が必要なのだと言う。
確かに、空中に上げられ、つかまるところもない状態で体の姿勢を保たねばならないのだから、腹筋や背筋など全身の筋力、そしてバランス力が必要となる。体力が不十分だと、2、3回上がっただけで腹ばいになって落ちたりし、ギブアップするのではないか。
守田監督は「宙に浮く恐怖心もあるんですよ」と話し、恐怖心に打ち勝つ精神力も必要と力説する。年齢を重ねれば体力も気力も若いときほどではなくなり、2、3回は上がっても、5回、6回と宙を浮くことは厳しくなる。今回は、5回上がった段階で守田監督の顔に浮かんだ「もう、いい」という表情を選手が読み取り、中途半端な6回目になったようだ。
「体重が増えては選手に負担がかかるので、やせますよ。秋は7回上がるよう、体力と気力を整えます」と、苦笑いの中にダイエットと体力づくりを宣言した。
近大との決勝は、第1試合の北村一気(65kg級)、第2試合の松田來大(70kg級)とも、先制し、追い上げられることはあっても逆転を許さない強さで勝って2連勝。第3試合の宮原健史郎(57kg級)のときは、終了間際に微妙な判定があって、近大の髙橋瑠希弥は自らの逆転勝ちを確信してマットを駆け回ったが、ビデオチェックの結果、宮原の手が上がって優勝へ“王手”をかけた。
松田と宮原は、昨年の秋季リーグ戦決勝で敗れた選手だが、ともに1点差の惜敗。その経験が無駄ではなかったことを証明するかのような接戦を制する勝利に、周南公立大陣営は沸き立った。
ここでマットに上がったのが、昨年秋季で優勝を決める勝利を挙げた61kg級の小石原央義主将(4年)。65kg級の西日本学生王者だけに、一気にチームの優勝が決まると思われたが、やってみなければ分からないのが勝負の世界。2学年下で西日本学生選手権61kg級3位の川合相希に地元の吹田市民教室~千葉・日体大柏高で鍛えられた実力を発揮され、前半のリードを守れずに3-7で不覚。流れが変わる可能性も感じられた。
しかし、今の周南公立大にその心配は不要だった。続いてマットに上がった4年生の権田龍副主将が気合十分の試合を展開。アンクルホールドの連続で、わずか1分2秒でテクニカルスペリオリティ勝ち。実力差というより、気合の差と言うべき内容であっさりと勝利を決め、周南公立大の6連覇が決まった。
権田は「どんな形であっても、自分が取る(勝つ)、という覚悟に変わりはなかった」と振り返り、ひとつ前の試合で主将が負けはしたが、持っているすべてを出したことを強調。気迫のすごさを指摘されると、「燃えるものが体の内側から出てきました」と、自分がチームの勝利を決めるという気持ちを振り返った。
団体戦は「ポイントゲッターがつまずいても、だれかが勝つ」が勝利の鉄則と言われる。今回は自分が勝って主将の黒星を消したわけだが、「目の前の試合に集中して勝つ、が基本だと思います」と話し、だれが勝とうが負けようが、全力で勝ちに行くことの重要性を話した。
優勝を引き寄せる活躍をしたが、個人戦では2021・22年の西日本学生新人選手権優勝のあと、優勝に恵まれていない。今年は「西日本インカレでは優勝、全日本の大会では表彰台」を目指して頑張り、「秋季リーグ戦は、もちろん優勝が目標。連覇を気にしないことはできませんが、あまり考えずに臨みます」と目標を話した。
守田監督は「初優勝を目指すつもりで、と伝えて臨ませた」と振り返る一方、6連覇について「『気にするな』と言っても重圧はあったと思う」と、優勝を続けているチームならではの大変さを思いやる。100点の内容とは言えないとしながら、「勝ち切れたという点ではよかったと思います」と選手の健闘をたたえた。
主将が負ける予想外の展開となったが、「(小石原は)これまでチームを助けてきた選手です。今回は助けられましたね。4年生が『自分たちの代でも勝ち続けるんだ』という気持ちで燃えていましたので、流れがよかったです」と、権田の後に闘った西村将希とともに、最上級生の団結を評価した。
最初の方で闘った2年生、3年生が流れをつくってくれたことも評価し、「全試合、7-0で勝つ意気込みで臨め、気持ちでも負けていなかった大会でした」と、層の厚さを強調。「全国で勝てるチームづくりという目標はぶれていない。反省すべき点は反省して、さらに上を目指したい」と話し、秋季での7連覇達成へ向けてかなりの手応えを感じたようだ。
7回の胴上げを成功させるためには、守田監督のダイエットと体力づくりもさることながら、レスリングとは違う筋肉を使う選手側も、宙へ上げる腕力の強化が必要となる。今の戦力なら、リハーサル・トレーニングに練習時間の一部を割いても、無駄になる可能性は低いだろう。秋季には「7度の胴上げ」が実現するか。
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