(2024年5月23~26日、東京・東京体育館 / 取材=布施鋼治・渋谷淳・粟野仁雄ほか、撮影=矢吹建夫)
■50kg級・吉元玲美那(KeePer技研=食あたりの影響で体調不良の中、3年ぶり2度目の優勝で明治杯受賞)「試合中はずっと集中できたけど、試合の合間の時間の方がきつかった。今までにない経験で、先が見えない中での闘いでした。いつもは内容も考えてやっているんですけど、今回はそれも考えず、とりあえず集中すれば体だけは動くと信じて闘っていました。それで体は動いていたので、よかった。
決勝は、第1ピリオドでしっかり決め切って追加点を取りたかった。でも、相手も対策をしているので、取れなかった。第2ピリオドの失点はタックルの処理が甘かったから。大きな反省点だと思います。守ったあとにもう一度自分からタックルをとりにいきたかったけど、『勝ちにこだわるなら、しっかりディフェンスしないと』と優先順位を決めたので、ああいう闘いになりました。今回の反省をいかし、二度と同じ過ちはおかしたくない」
■53kg級・岡田愛生(東洋大=能登半島地震の被災地の出身。選手生活で初の全国一に輝く)「小学校2年生くらいから、友達のお父さんがレスリングをしていたことがきっかけで始めたけど、これまで一度も優勝したことがないので、うれしいです。今日の決勝の相手(坂本由宇)にも負けたことがある。リベンジできました。ずっと50kg級でやってきて、4月のジュニアクイーンズカップで初めて53kg級に出ました。その方が動きやすかった。
(石川県志賀町に)帰省している時に地震が起き、そのときは実家にいました。怖かった。津波が来るというので学校に避難した。実家は倒壊はしなかったけど、家族は短い期間だけ避難生活しました。今でも練習場は使えない。私は東洋大で練習ができるけど、地元の小さい子供たちはできない。優勝を報告できれば地元も盛り上がるし、復興に向けていい結果が残せたかな、と思います。(地元の子供たちからは)『頑張ってね』と言われていた。今日は親が応援に来てくれました」
■55kg級プレーオフ勝者・清岡もえ(育英大=初戦で高校生相手に不覚を取ったが、プレーオフでライバルの村山春菜を破る)「負けたあと、気持ちをうまく切り返られたのがよかった。最近は兄(幸大郎)の活躍が自分の頑張る源になってる。自分も最後まであきらめなければ、絶対に勝ち取ることができると思った。試合が終わって、すぐに反省点を確認し、それを修正して対策をたてました。
アジア選手権でけがをして、練習ができなくて不安が大きく、兄に『緊張する』とラインしたら、『いつも通りやれば勝てる。そのくらいの実力おまえにはあるから、それを信じて』と返ってきた。兄の存在は大きい。一番の目標はロサンゼルス・オリンピックで金メダルを取ることなので、まず世界選手権で金メダルを取りたい」
■女子55kg級優勝・村山春菜(自衛隊)⇒「健闘選手の声」(6月1日掲載予定)へ
■57kg級・屶網瑠夏(至学館大=決勝の新井一花戦、ラスト1秒での逆転勝利で優勝)「勝ちたい気持ちは自分の方があると信じて挑みました。今回、姉(屶網さら)はひざのけがで出場していないので、姉の分まで、最後までポイントを取っていこうと思いました。ずっと勝てなかった南條(早映)さんが反対ブロックで負けてしまったけど、決勝で当たった新井選手にも自分は一回負けている。挑戦者の気持ちで最後まで点数を取っていこうと思いました。
相手に5点を取られたときは、ひとつ投げて4点を取って一気に追いつこうと思った。でも、相手は投げを警戒していたので投げられなかった。最後も取り切れるとは思わなかったけど、攻めていこうと思いました。その気持ちが逆転につながったんだと思います」
■59kg級プレーオフ勝者・金城梨紗子(サントリー=準決勝で負けた尾西桜にプレーオフでリベンジ)「(尾西が18歳と聞いて)私、もうすぐ30歳になるけど、まだできるという気持ちで闘っています。いつが最後の大会になってもいいように。(プレーオフは)第1ピリオドで5点取られて、ちょっと難しいかな、と思ったけど諦めなかった。(インターバルで)セコンドのまっすぐ先のところに母がいた。何も言わなかったけど、『しっかり行ってこい』と言ってくれた気がしました。若さ、勢いが必要ということを相手に実感させてもらいました。それを上回る気持ちでやっていた。
アジア選手権で負けたけど(3位)、自分が思っていたよりやれたかな、と感じた。優勝したらきれいな引き時かと思ったんですが、母から『続けろということじゃないの』と言われ、自分もそんな気持ちになった。世界選手権は、楽しみというより、闘うぞ、という気持ちです。東京オリンピックの前の方が何百倍もきつかった。あれを経験しているから、難しいものなどないのかなあ、と思える」
■59kg級優勝=尾西桜(日体大)⇒「健闘選手の声」(6月1日掲載予定)へ
■62kg級・稲垣柚香(自衛隊=社会人となって初の全日本選抜選手権で優勝)「新しい環境で練習させてもらい、ここはしっかり結果を出したいと思いました。ホッとしています。決勝は高校生が相手だったけど、2028年のロサンゼルス・オリンピックに向けて、いろいろな相手が出てくると思うので、どんなタイプでも自分のレスリングを貫いて、もっと強くなっていけるように頑張りたい。
自分は、体は小さいけど、逆にその部分をいかしたい。今日も圧をかけ、うまく崩せたと思います。自衛隊の中にはパリ・オリンピックに内定している選手や、強い先輩がたくさんいる。そこから何かを吸収して、自分のものにしていきたい。例えば高谷大地選手は、一本一本のスパーリングで試合をしっかり想定してやっている。当たりまえだと思うけど、自分もそういう姿勢を見習いたい。天皇杯でもしっかりと勝ち切りたいし、いい通過点にしていきたい」
■65kg級優勝&プレーオフ勝者・森川美和(ALSOK=決勝でラスト1秒に逆転勝ち、プレーオフで全日本選手権優勝の吉武まひろを下す)「この大会は圧勝しようと思っていたけど、内容はよくなかった。今日、運動会で会場に来られなかった弟(中学生2人)から『最後まであきらめるな』というメッセージをもらい、決勝ではそれも頭をよぎって、ラスト1秒で逆転できたのかなと思います。
去年の天皇杯で負けて、心に穴が空いた期間も長かったけど、ロサンゼルス・オリンピックは自分が絶対に代表になると思って練習してきました。(東京オリンピックとともに)代表になれない悔しい思いを2度もしたので、『次は見とけよ』くらいの意気込みでやっていこうと思います。(2022年の)世界選手権優勝もうれしかったけど、価値があるのはオリンピック。あと4年、しっかりやって最高の自分にしたいと思ってます」
■68kg級・星野レイ(神奈川大=昨年のU20アジア&世界チャンピオン、明治杯初出場で初優勝)「うれしいです。決勝で当たった宮道りん選手は、片足を引っかけてタックルに入ってくると聞いていたので、それに対処しようと思いました。優勝の要因は、失敗しても自分から攻めて最後までとり切ろうと思い続けたことだと思います。今年4月から大学に進学して練習環境も変わりました。新たな環境で練習し続けたことが自分が成長できた要因のひとつだと思います。
地元は神奈川(川崎)で、実家から通える大学が希望でした。入学前にお邪魔させていただいたとき、すごく環境がよくて『ここなら自分は強くなれる』と思ったので入学させていただきました。現在、女子部員は10人いないくらいですが、切磋琢磨して、毎日頑張っています。井上(智裕)コーチには個人的に教えてもらったりして勉強になります。シニアの世界大会で優勝することが目標です」
■72kg級・石井亜海(育英大=初の72kg級挑戦で優勝。世界選手権出場を決める)「(パリ・オリンピック代表選考の)プレーオフのあと、全日本レベルの試合に出るのは初めて。いろいろな感情のこもった大会になりました。(本来より)上の階級なので、フィジカル面に心配がありましたけど、想定内の対応ができたと思います。タックルに入って押しつぶされる場面がなかったです。1年前の自分を考えると、確実に成長できていると実感しています。以前は、練習チャンピオンだったと思います。練習で満足していた。今は、それを試合につなげられるようになっていると思います。
もうロサンゼルス・オリンピックを見つめています。自分の狙った階級で、確実に内定を勝ち取りたい。去年のように、勝ったり負けたりではなく、圧倒的な強さでロサンゼルスに行けるようにしたい。(パリ代表内定の育英大の2選手と自分は)わずかな差だとは思いますが、その差があったから結果に出たのだと思います」
■76kg級・山本和佳(至学館大=ジュニアクイーンズカップU23に続く優勝)「鏡選手(優翔=パリ・オリンピック代表内定)が棄権した中の闘いでしたが、優勝はうれしいです。(実質的な決勝だった2回戦の松雪泰葉戦は)今回は絶対に勝つ、という気持ちで臨みました。いつもは、なかなか攻められない相手ですが、今回は自分から攻めようと思い、攻めてポイントを取ることができたので、よかったです。
泰葉さんに失点せずに勝てたのは、今後に向けて大きいと思います。U23の世界選手権出場が決まっています。去年5位でしたので、今年は優勝を目指して頑張りたい。そのあとの全日本選手権でも優勝できるように頑張りたい」