2024年東日本学生リーグ戦の二部リーグに、総合格闘技のリングの方が似合っているのでは、と思われる“褐色(かっしょく)の巨体”の姿があった。外国からの留学生が参加するのは特別に珍しいことではないが、それが防衛大学校の選手となると、「?」と思ってしまう。
同チームの125kg級に登録され、5試合にフル出場して3勝2敗(2テクニカルスペリオリティ勝ち)だったのは、エクワォンチムナチ・マイケル(4年生)。184cm。日本人の母と英国系ナイジェリア人の父の間に生まれ、国籍は日本。兵庫・須磨翔風高校でレスリングをやっていた。
2017年のJOCジュニアオリンピックのカデット(現U17)男子グレコローマン76kg級(このときの優勝選手が日下尚=現三恵海運)や全国高校生グレコローマン選手権などへの出場経験があり、「最高で全国ベスト16くらいだった」と言う。
防大へ進んだのは、父は自営業者だったが、父の兄弟4人と祖父が軍関係者だったことで、国を守る使命が芽生えたからのようだ。全寮制の防大へ進むと、部屋の先輩に誘われて「気がついたら柔道部に入っていた」と笑う。そのうちに「レスリングがしたい」として昨年の今頃から再びレスリングへ。このリーグ戦を目標に練習してきた。
ここまでに個人戦出場の機会はあったが、「防大のために頑張りたい」という気持ちだったのでスルーし、この大会に絞った。ただ、自分の実力がどのくらいか分からなかったので、「不安ではありましたね」と言う。
久しぶりに試合に出て、やってきた技が出せたこともあったので、「1年間でしたが、練習してきて、成長できたことを感じました」と言う。試合では「練習でやってきたことしかできない」と思ったそうだ。
大学の大会はこれが最初にして最後の予定だが、毎年2月か3月に実施されている全自衛隊選手権への参加を希望しており、卒業まで練習は続ける予定。卒業後は陸上自衛隊へ進んで国防に従事することになり、配属される駐屯地によってはレスリングができる。全自衛隊選手権に定期的に出ることも考えているとのことで、同大会の台風の目となるかもしれない。
最近のスポーツ界で「マイケル」と言えば、ラグビー日本代表チームの主将を務めるリーチ・マイケルが有名だが、自衛隊レスラーの「エクワォンチムナチ・マイケル」にも注目!