米国のキューバ大使館のツイッターやキューバのメディアは、同国がパリ・オリンピックに16競技62選手を派遣することを明らかにした。代表チームの中心は、男子グレコローマン130kg級でオリンピック5大会連続優勝を目指すミハイン・ロペスであり、昨年の世界選手権で2人が世界王者に輝いたレスリング勢(同67kg級のルイス・オルタ・サンチェス、同97kg級のガブリエル・ロシヨ)であるという。
41歳のロペスは、2021年東京オリンピックで4度目の優勝を達成。当時はパリ・オリンピックを目指すかどうかは未定としていたが、昨年から世界でだれも達成していない5大会連続優勝を目指すことを明らかにし、世界レスリング連盟(UWW)も報じていた。
当初は昨年のパンアメリカン大会(チリ)に出場する予定だったが、父の死に遭遇してモチベーションが上がらずに不出場。東京オリンピックのあと、一度も大会に出場していない。しかし、キューバのラウル・トルヒージョ・コーチは「ロペスはオリンピックで5度目の金メダルを獲得することに非常に集中している。実戦から離れていることは問題ではない」と断言。
ロペスも「繰り返します。これは達成可能な目標です」とコメントしており、偉業達成への気持ちは盛り上がっているもよう。今年の初めにはクロアチアとブルガリアへ遠征して欧州選手のほか、中国のメン・リンジェ(孟令哲=2023年アジア大会2位)や、エジプトのモハメド・アブデラティフ(2023年世界選手権3位)らとも練習したと伝えられている。
夏季オリンピックの個人同一種目で4個の金メダルを取った選手は、ロペスで7人目で、レスリングでは2016年リオデジャネイロ・オリンピックの伊調馨に続く2人目。冬季オリンピックでは、2022年北京大会のスピードスケートでイレイン・ブスト(オランダ)が5大会連続優勝を達成しているが、1500mと3000mの2種目にわたっている。
パリ・オリンピックに出場すれば、6度目のオリンピック出場となり、1908年~28年に大会の中断をはさんで5大会連続出場を果たしたジョージ・マッケンジー(英国)を上回ってレスリング界初の快挙ともなる。
キューバは現在、過去30年で最悪の経済危機に直面しており、優秀なスポーツ選手の国外への逃亡が続出。「187人の優秀な選手が国を離れた」とのことで、パリ大会には難民チームで参加する選手が2人いるという。かつて栄華を極めたボクシングが衰退する一方、前記3選手の優勝が狙えるレスリングの踏ん張りで、「最低5個の金メダルが目標」と報じられている。
《関連記事》
■2023年12月3日: ミハイン・ロペス(キューバ)が、あらためてオリンピック5連覇への姿勢を示す
■2023年7月10日: オリンピック5連覇を目指すミハイン・ロペス(キューバ)が11月に復帰戦
■2023年5月24日: ミハイン・ロペス(キューバ)が前人未踏のオリンピック5連覇に挑戦へ…UWWが報じる
■2023年3月15日: 【特集】パリ・オリンピックまで500日(中編)…注目のトピックス1~5
ポール・エルブストロム(デンマーク)=ヨット・男子フィン級 / 1948~60年
アル・オーター(米国)=陸上・男子円盤投げ / 1956~68年
カール・ルイス(米国)=陸上・男子走り幅跳び / 1984~96年
※ベン・エインズリー(英国)=セーリング・男子レーザー級、フィン級 / 2000~12年
マイケル・フェルプス(米国)=競泳男子200m個人メドレー / 2004~16年
伊調馨(日本)=レスリング・女子63・58kg級 / 2004~16年
ミハイン・ロペス(キューバ)=レスリング・男子グレコローマン120・130kg級 / 2008~21年
※レーザー級とフィン級は明らかに違う種目であり、「同一種目4連覇」と見なさない媒体が多い。「ヨット」は「セーリング」の旧称