2024年パリ・オリンピック／男子グレコローマン130kg級展望（8月5･6日実施）

《男子グレコローマン130kg級・エントリー選手》

全世界が注目！ ミハイン・ロペス（キューバ）の5連覇への挑戦

　パリ・オリンピックの全競技を通じて、大きな関心を集めるひとつが男子グレコローマン130kg級。ミハイン・ロペス（キューバ）が夏季オリンピックの個人競技では史上初となる5大会連続優勝に挑む。2021年東京オリンピックのあと、試合に出場しておらず（昨年のパンアメリカン大会に出場予定だったが、父の死去で不出場）、調整具合が気になるが、クロアチアとブルガリアで練習を積むなど最善を尽くしている。

▲2021年東京でオリンピック4連覇を達成したミハイン・ロペス（キューバ）。パリで前人未踏の記録に挑戦する

　夏季オリンピックの個人同一種目で4個の金メダルを取った選手は、ロペスで7人目。レスリングでは2016年リオデジャネイロ・オリンピックの伊調馨に続く2人目。冬季オリンピックでは、2022年北京大会のスピードスケートでイレイン・ブスト（オランダ）が5大会連続優勝を達成しているが、1,500mと3,000ｍの2種目にわたっている。

　優勝すれば「41歳11か月」の史上最年長オリンピック王者となる。これまでの最年長は、1920年大会のアドルフ・リンドフォース（フィンランド）の「41歳6ヶ月12日」で、戦後では1972年ミュンヘン大会のナトリー・ロシン（ソ連）の「40歳6ヶ月0日」。出場6度は、1908年～28年に大会の中断をはさんで5大会連続出場を果たしたジョージ・マッケンジー（英国）を上回ってレスリング界初の快挙ともなる。

敵は世界王者アミン・ミルザザデ（イラン）のみか？

　ノーシードなので、1回戦で昨年の世界王者で第1シードのアミン・ミルザザデ（イラン）と対戦することもありうる。世界選手権のあと、アジア大会と今年のアジア選手権でも勝って好調を維持。イラン・グレコローマン初の最重量級のオリンピック王者を目指す。

▲イラン・グレコローマンの強さを見せられるか、アミン・ミルザザデ（イラン）＝2023年世界選手権

　ロペスを破ったことのある2022年世界王者のリザ・カヤルプ（トルコ）は、ドーピング違反で不出場。他人の不幸を喜ぶことはないだろうが、ロペスにとっては追い風。代わって出てくるムハメット・バクルは2023年U23世界選手権優勝の選手だが、シニアの国際舞台では特別な実績はなく、キャリア的にロペスに対抗するのは厳しいのではないか。

　世界選手権3位で第2シードのアブデラティフ・モハメド（エジプト）、欧州予選を通過した2022年世界選手権3位のアリン・アレクサク・チウラリウ（ルーマニア）、2016年リオデジャネイロ大会3位のサバフ・シャリアーティ（アゼルバイジャン）、東京大会5位でキューバ出身のヤスマニ・アコスタ（チリ）らも上位進出の可能性はあるが、ロペスに対抗できるものかどうか。

　2018年世界選手権で2位となったアダム・クーン（米国）は、アメリカン・フットボールへ転向してレスリングに復帰。オリンピック出場枠を取った選手を国内予選で破ってパリのマットに立つ。2018年ころの力を取り戻せるか。

　ロペスの現在の実力が不明なので予想しづらいが、ロペスとミルザザデが優勝を争うのではないか。

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夏季オリンピックの個人同一種目の4連覇達成選手

　ポール・エルブストロム（デンマーク）＝ヨット・男子フィン級 ／ 1948～60年
　アル・オーター（米国）＝陸上・男子円盤投げ ／ 1956～68年
　カール・ルイス（米国）＝陸上・男子走り幅跳び ／ 1984～96年
※ベン・エインズリー（英国）＝セーリング・男子レーザー級、フィン級 ／ 2000～12年
　マイケル・フェルプス（米国）＝競泳男子200ｍ個人メドレー ／ 2004～16年
　伊調馨（日本）＝レスリング・女子63・58kg級 ／ 2004～16年
　ミハイン・ロペス（キューバ）＝レスリング・男子グレコローマン120・130kg級 ／ 2008～21年

※レーザー級とフィン級は明らかに違う種目であり、「同一種目4連覇」と見なさない媒体が多い。「ヨット」は「セーリング」の旧称

オリンピック・チャンピオン／年長記録（男子グレコローマン）

オリンピック・チャンピオン／年長記録（男子フリースタイル）

※1913年生まれで、以下不詳。1月1日生まれとして計算。