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2024.08.01

【特集】“聖地”に戻った全国少年少女選手権、桑田信明・全国少年少女連盟事務局長に聞く(上)

 

 キッズ・レスリングの“聖地”とも言える東京・代々木競技場第1体育館に、少年少女選手と保護者の声援が戻ってきた。新型コロナウィルス感染拡大のため2020年に途切れた全国少年少女選手権は、2021年の熊本での大会(無観客・5~6年生のみ)、2022年の代々木での無観客大会、昨年の三重・四日市での有観客大会を経て、今年、やっと応援のある代々木競技場第1体育館での開催を実現できた。

 コロナ禍のため選手の勧誘が滞り、参加選手数はコロナ以前より減ったが、1,102選手が集まって再出発を遂げた同大会。大会運営を支えた桑田信明・全国少年少女連盟事務局長(大会総務委員長)に、大会開催の苦労と今後の展望を聞いた。

▲2016年以来、8年ぶりに開催された有観客の代々木大会。選手と保護者の熱気が充満した


多くの人の協力で実現できた…桑田信明・連盟事務局長

――コロナ禍が開けて、2022年に3年生以上の大会に戻り、今回は有観客でやっと本来の大会に戻った感じがしますが、ここまでを振り返って、いかがでしょうか。

桑田 コロナ禍の中で一番苦労したのが、2021年の熊本大会ですね。コロナ感染を防ぐための警備を厳しくやり、計量のときの審判員に防護服を着せるなど万全を尽くしました。もちろん無観客で、保護者の来場も遠慮してもらいました。2022年の東京大会、昨年の四日市大会を経て東京に戻り、やっと有観客での東京開催に戻った、という感覚です。

――今年の開催までの苦労は?

桑田 正直なところ、やるべきことが山のようにありました。選手数が多く、年度初めからここまでの期間が短いので、本当にハードな日が続きました。ここ数ヶ月間、仕事と食事、睡眠以外は、すべて開催へ向けての作業をしていた、という感じです。具体的な形で言い表せないですよ(笑)。でも、今年から今泉斉介理事(進行委員長)が作成した新しいシステムにより、エントリーの確認負担が減った部分もあります。DX化(デジタルトランスフォーメーション=データとデジタル技術の活用による業務改善)を進めています。

――事務局長を引き継いだのは、いつでした?

桑田 昨年4月です。引き継ぐことが多く、まだ修行中の身なんです(笑)。これまで通りのクオリティ(質)を保てているかどうかは分かりません。

――聞いているだけでは、できません。経験をして、ときに失敗してこそ、いいものが生まれるのではないですか?

桑田 そうなることを目指します。白井正良・競技副委員長も全面的に協力してくれましたし、大会当日は東京都協会のほか東日本学生連盟など多くの方々の協力を得ています。一人でやっているわけではありません。連盟が一体となってやっていこうと思います。

▲大会まで、さらに大会中も八面六臂(ぴ)の活躍だった桑田信明・全国少年少女連盟事務局長

ドローンを飛ばして観客席を撮影、熱さを全国へ

――開会式では、ドローンを飛ばして観客席のもようを撮影し、会場の熱さを全国に届ける企画がありました(下の動画)。他の連盟では実行していない試みですね。

桑田 去年から実施しています。ドローンが飛ぶ大会は、日本レスリング界で初だと思います。これだけの数の選手と保護者が集まっているわけで、その熱気を全国に伝えることで、レスリングを盛り上げる要因になると思いました。パイロットはドローン国家資格を持つ平岡未明審判員です。

――ドローンが自分の座っている近くにくると、子供達は喜んで手を振りますね

桑田 自分の姿が全国に流れると思うのは、楽しいでしょう。楽しむことが大切です。恒例にしていきたい。

2018年の「1,399人」を目標に参加選手数の増大を目指す

――マット6面となると、普通は長方形にしきますが、「コ」の字形に設置してありましたね。固定観念から脱却した発想だと思います。

桑田 実は、全中(全国中学生選手権)でやっていて、その模倣なんです。長方形にすると、医事の人たちが全マットを見渡せなくなるんです。「コ」の字にマットを配置して、真ん中の空いている場所に待機してもらうことで、すぐにマットへ行けるわけです。配置としては、この方がいい、と感じました。

▲実用性を考え、「コ」の字型に配置されたマット。固定観念にとらわれず、新しいことを試して、いいものを目指す

――今年の参加選手数は「1,102人」でした。3年生以上の大会になった2017年以降、最高が2018年大阪大会の「1,399人」。それには及ばなかったわけですが、連盟としては、ここに追いつきたいのか、今ぐらいの選手数がちょうどいいので、増えるようなら4年生以上の大会にするのか、どちらを考えていますか?

桑田 選手数が多い方が盛り上がるので、増やしていきたいと思います。最高の1,399人に比べると減っているのは、コロナで選手集めができなかった影響があるわけで、来年以降、増えていくと思います。そうなると、運営が厳しくなり、7面マット、8面マットの必要も出てきて、審判の数もスタッフの数も必要になってくる。今でも審判員の数が足りずに、やっと集めている状況。全国大会を裁けるカテゴリーⅠの審判の育成も同時にやっていかなければならない。そうした苦労や心配があるのは事実です。

――参加希望の選手が増えても、審判の数を増やすことが限度となれば、4年生以上の大会に変える必要も出てくるのではないでしょうか。

桑田 可能性はありますね。ただ、2018年大会を目標に、選手数は増やしていきたい。

――2008年の東京大会が「1,563人」。大会運営の限界として、翌年から幼児の部を取りやめたわけです。2016年の東京大会が「1,592人」で、翌年から小学校3年生以上の大会へ。「1,600人」が、今の規模で開催できる境界線でしょうか。それを超えるようなら、4年生以上と狭めるほか、予選制の導入も検討すべきかもしれないのでは?

桑田 毎年冬に行っている全国選抜少年少女選手権は、この大会のベスト8以上の選手に出場資格があります。いわば予選制の大会です。全国少年少女選手権は予選制をつくらず、オープン参加としたい。3年生以上で1600人を超えるうれしい悲鳴になったときは、いろんなことを考えていくことになるでしょう。

《続く》







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