世界レスリング連盟(UWW)は8月7日、女子50kg級で決勝進出を果たしながら、計量失格したビネシュ・フォガト(インド)に関し、パリ市内でインド・オリンピック委員会と同レスリング協会の要人と会談し、同選手が順位がつかない失格となったことに同情の意を示す一方、「国際ルールに従ったもの」との見解を示した。
ルールでは、2日目の計量に失格した場合は、順位はつかない。インド側は「計量をパスして闘った日の結果を有効とすべき」とし、ビネシュは2位になるべきだと主張したが、UWWは「すべて定められたルールにのっとって行われる」とした。一方で、議論する余地のある問題とし、今後、ルール改正の検討が行われる可能性を示唆した。
インド側は、UWWのネナド・ラロビッチ会長がていねいに話を聞いてくれたことに感謝し、「アスリートが健康上のリスクを負わないようなルールである必要性は理解する。すべてのアスリートがオリンピックの価値とフェアプレーを守ることが重要である」との見解を話した。
2日間計量は、2018年にルールが改正され、1回戦から決勝までを2日間かけて行われるようになってから実施された。2日目の計量にパスしなかった場合は失格となって「順位なし」となる。UWWは「選手の健康を考えてのルール」とし、選手が過度な減量をしないことを望むためのルールとしている。
計量については、1986年までは連日の早朝計量、1987~1992年までは試合終了後1時間半以内に連日の計量が行われていた。当時は1回戦から決勝が3日間にわたることもあった。
1992年バルセロナ・オリンピックでは、男子フリースタイル74kg級の原喜彦(現全国高体連レスリング専門部理事長)が6位以内を確保しながら、日本チームが最終日のための計量時間を間違えて計量失格となり、6位の順位を剥奪された。しかし、当時はそれまでの成績が有効で、失格とはなっていない(11位以下の厳密な順位はつけていない時代で、UWWデータベースでは「11位タイ」となっている)。
1993年から試合は1日または2日間で実施され、計量は初日の前日のみに変更。2005年からは1日で決勝までを行うようになり、ともに試合前日の計量をパスすれば、体重を完全に元に戻して試合をすることができた。2018年に30年ぶりに連日の早朝計量に変更。前記のルールが実施された。
昨年の世界選手権では、男子フリースタイル65kg級の乙黒拓斗(自衛隊)が3回戦で敗れ、敗者復活戦へ進む権利があったが、負傷のため棄権。診断書を提出せず翌日の計量を棄権したため、順位はついていない。