パリ・オリンピックの金メダリストの何人かも会場に姿を見せる中で開催された2024年文部科学大臣杯UNIVAS CUP全日本学生選手権。前半の男子グレコローマンでは、昨年63kg級で優勝した丸山千恵蔵(日体大)が67kg級に上げて優勝。2年連続で学生王者に輝くとともに、この階級で初の優勝を引き寄せた。
昨年12月の全日本選手権は63kg級だったので、階級を上げて約8ヶ月。「(初の優勝まで)時間がかかったな、という気持ちですけど、まだフィジカル面が全然足りていないな、と感じる面もあります」と話し、うれしさの反面、この先に予想される困難を考えて気が引き締まる思いもある様子。「この階級で、やっとスタートラインに立てた、という感じです」が、今の正直な気持ちだろう。
最大のヤマは、準々決勝で当たった昨年の国体王者・西田衛人(専大)戦。階級を上げての初めての大会となった今年3月のU23世界選手権代表選考会では、1回戦で西田に2-2のスコアながら敗れており、階級アップ後の初戦で遭遇した“難敵”だ。
しかも、「大学入学後、日体大の学生・OB以外に負けたことがない」という成績の中で、他大学の選手に負けた初めての相手が西田だったと言う。「本当に悔しかった。絶対にリベンジする」という気持ちでぶつかった相手だ。
結果は、リフトは完璧に決まらなかったが、相手のステップアウトをさそって取った1点が決勝点となり、2-1の勝利。グラウンド攻撃でしっかりポイントを取るのが理想だが、西田の終盤の怒濤の攻撃をぶれない構えで守り切ったスタンド防御力は光った。
「5ヶ月前に(西田に)負けたときは体が全然できていなかった。あれから5ヶ月、まだまだなんですけど、フィジカル面の強化が順調にいっていることは感じましたね」と振り返る。
準決勝と決勝も、1、2回戦で見せたテクニカルスペリオリティ勝ちのような猛攻ではなく、着実に勝ちを求めた試合展開。新階級の上位選手相手には「手堅く、勝ちにこだわりました」という作戦はもっともだが、「得意のリフト技が決められなかったのは、大きな反省点」とも話し、機会さえあれば豪快な4点技も狙っていた様子だ。
決まらなかったのは「相手が重いから?」との問いに、「重さではないです。研究されていましたし、自分の技術不足です」と説明。ただ、かからない中から今後の練習の仕方を見つけたそうで、今回の経験をどう生かしていくか。パリ・オリンピック代表の曽我部京太郎(ALSOK)とは「まだ差がある」とのことなので、この優勝で満足しているわけにはいくまい。
この夏に向けては、オリンピックの60kg級で優勝した文田健一郎(ミキハウス)の練習相手の一人として、何度も一緒に汗を流し、文田をサポートするとともに自分の実力アップもはかってきた。「あこがれていた先輩で、自分が一番近くにいて練習していたと思います。文田先輩の優勝は本当にうれしかった。それが自分の優勝にもつながったと思います」と、気持ちの盛り上がりも十分だった大会。
今度は自身が世界で輝く番だ。秋にある全日本大学グレコローマン選手権や国スポで勝って、12月の全日本選手権ではこの階級での初優勝が目標。来春の卒業後は、「今回のオリンピックを見て、日体大が世界で一番の練習環境だということが分かりました。日体大を拠点に練習できる環境でレスリングを続けたい」と、引き続き“世界最強チーム”で汗を流せる就職先を求めている。
愛知県出身選手なので、2026年9~10月に名古屋で行われるアジア大会は大きなモチベーション。この大会の出場と優勝をステップに、「2028年ロサンゼルス・オリンピックを目指します。もう闘いはスタートしていると思います」ときっぱり宣言。