1934年(昭和9年)に創部された慶大レスリング部の創部90周年祝賀会が9月21日、東京・銀座にある福沢諭吉ゆかりの交詢社で行われ、約150人が節目を祝った。
今年は女子68kg級の尾﨑野乃香(4年)が、同部としては1952年ヘルシンキ大会の北野祐秀(フリースタイル52kg級)以来のオリンピック出場を果たし、附属の慶應高校が57年ぶりにインターハイ学校対抗戦に出場、同個人戦80kg級で岡澤ナツラが1960年の八田忠朗(元米国代表チーム・コーチ)以来の優勝を果たすなど、乗りに乗っている中での記念式典となった。
会では、7月1日に就任したばかりの加茂具樹部長が「8月末に練習を見学に行き、生き生きと、そして楽しそうに練習に励んでいる選手を見て心強く思いました。楽しさと強さの両立は難しいと思いますが、リーダーが尽力し、部の発展につなげていってくれるものと思います。皆様のご支援をお願いします」とあいさつ。
三田会(OB会)の皆本幸造会長が「昭和の後半に部員の確保が難しくなり、低迷した時期がありました。90周年を迎えるにあたり、72年ぶりに尾﨑選手がオリンピック出場を果たし、高校もインターハイ学校対抗戦に出場し、90周年に華を添えてくれました。生やさしい道ではないと思いますが、選手達は伝統を守っていってくれるものと確信しています。100周年、110周年でも皆様と祝杯をあげたいと思います」と話し、引き続きの支援をお願いした。
来賓として出席した日本協会の富山英明会長が「尾﨑選手は(パリでは)優勝する実力は十分にあったが、日本チーム最初の試合ということで(動きが硬く)実力を出し切れなかった。銅メダルを取ってくれたことで、あとから出場した選手はリラックスして試合ができ、金メダル8個という結果につながった。4年後のロサンゼルスと8年後のブリスベンでこそ金メダルを取り、100周年を飾ってほしい」と激励。
インターハイで優勝した岡澤ナツラは同会長と同じ茨城県出身の選手。それだけに期待しており、「将来が楽しみです。慶應や早稲田といった大学がレスリング界を引っ張っていかないと発展はない」と続けた。
同部から72年ぶりにオリンピック出場を果たし、銅メダルを取った尾﨑は「皆さんのおかげで銅メダルを取ることができました。自分だけの力ではできませんでした。たくさんの方のおかげでここにいます。金メダルを獲得したかった思いは強くあります。今までの頑張りを否定したくはないですが、金メダルに届かなかったことを重く受け止め、今後の4年間、しっかり頑張っていきたいと思います」と、ロサンゼルス大会での金メダル獲得を宣言。
64年ぶりのインターハイ王者となった岡澤は「90年の歴史は、数多くの選手の努力とOBの方々の熱い情熱によって支えられていると思います。今年のインターハイ学校対抗戦では3回戦で敗れてしまいましたが、個人戦で2人が決勝に進み、自分が優勝することができました。来月の国民スポーツ大会でも頑張り、後輩にいいバトンを渡したい」と、今後の健闘を誓った。
最後に三田会の藤田由美理事長が「皆さんは道場の汗とマットのにおいを思い出して懐かしく思われたことと思います。そういうことを共有できる仲間との集まりが、この会です。次は100周年です。頑張りましょう」とあいさつし、90周年を締めた。
慶大は2016年の東日本学生リーグ戦二部リーグで優勝し、入れ替え戦も勝って、翌年、45年ぶりに一部リーグで闘った。コロナによる2度の中止をはさんで2022年に二部リーグへ戻ったが、今年の大会で二部リーグ優勝を果たした。
しかし、同リーグの改編のため来年も二部リーグでの試合。これまでの6~8チームでの闘いから12チームでの闘いを勝ち抜かねば一部リーグへ昇格できない厳しい闘いとなるが、慶應高校の強豪選手が進学予定で、インターハイ優勝経験者を擁するチームで、その壁に挑む。