9月27~29日に大阪・堺市金岡公園体育館で行われた西日本学生選手権の男子グレコローマンで、九州共立大が10階級中、半数の5階級で優勝を遂げた。
2021年大会の男子フリースタイルで徳山大(現周南公立大)が5階級を制しており、半数制覇が初の快挙というわけではないが、特筆すべきは、昨年の同大学は優勝がなかったこと。優勝「0」から1年後に半数制覇というのは例がない。加えて、今年7月の西日本学生新人選手権でも優勝がなく(フリースタイルも優勝なし)、2大会連続で「優勝なし」の屈辱をはね返しての半数制覇は、快挙と言える。
同大学の藤山慎平監督は「押しつけの厳しさを一切なくし、選手の自主性による強化を心がけました」と振り返る。2009年の創部以来、結果を出せないときには練習を厳しくすることでチームを強化してきた面があったことは確か。厳しさを否定はしないが、“恐怖指導”を脱却し、選手が自ら競技力向上に打ち込む雰囲気をつくったことを強調する。
その一環として、日々のトレーニングや試合結果を逐一インスタグラムにアップ(クリック)。これが、「けっこう選手の励みになり、発奮材料になっている」と言う。今の選手は、目立つことを好む傾向が強い。「高校生もよく練習に来ますが、『雰囲気がいい』と言ってくれます。もう、厳しさを前面に出す時代ではありません」と言う。
昨年の男子グレコローマン55kg級学生王者の荒木瑞生が大学院生として残り、選手兼任ながら指導にも力を入れており、若い指導者の加入も「大きかった」そうだ。
西日本学生界は、かつては1~2大学がずば抜けて強い時代があった。追従する大学があっても1~2大学。西日本学生選手権の男子グレコローマンでは、福岡大が9階級実施時代の1993年に7階級、翌1994年に5階級で優勝。徳山大が1995年に6階級で優勝し、同年のフリースタイルは福岡大が6階級で勝つなど、タイトルの寡占(かせん=少数が支配すること)は珍しくなかった。
西日本学生界の踏ん張りに加え、日体大卒業の強豪選手がいくつかの大学の指導者に就任するなどして全体のレベルが上がり、2000年以降、1大学が半数以上を制したケースは数えるほど。10階級になった2018年以降の7年間の両スタイルで、5階級を制したのは2021年の徳山大(前述)と今回の九州共立大の2例だけ。
チャンピオンを輩出した大学数も、男子フリースタイルは今年まで3年連続で7大学。男子グレコローマンは、今年は5大学だったが、2020~22年は6大学、昨年は7大学。関大、関学大、大体大などの古豪が復活したほか、帝塚山大や天理大などからも優勝選手が生まれ、戦力が均衡してきた。
そうした“戦国時代”の中で、優勝選手を「0」から「5」へ増やした九州共立大の踏ん張りは賞賛されよう。一方、ハイレベルでの戦力均衡化は、全体のレベルが上がることを意味し、この流れを加速させたいところ。理想は「10大学がチャンピオンを分け合う」こと。「東日本へ追いつく」という西日本の悲願は、全体のレベルアップという形で着実に進んでいる。
年 | 男子フリースタイル | 男子グレコローマン | ||
大学数 | 最多優勝大学 | 大学数 | 最多優勝大学 | |
2024年 | 7 | 近 大(3階級) | 5 | 九州共立大(5階級) |
2023年 | 7 | 周南公立大(4階級) | 7 | 周南公立大(3階級) |
2022年 | 7 | 周南公立大(3階級) | 6 | 周南公立大(4階級) |
2021年 | 6 | 徳山大(5階級) | 6 | 九州共立大、徳山大(各3階級) |
2020年 | 5 | 中京学院大(3階級) | 6 | 九州共立大、徳山大(各3階級) |
2019年 | 7 | 中京学院大(3階級) | 5 | 九州共立大(4階級) |
2018年 | 6 | 4大学(各2階級) | 5 | 中京学院大、徳山大(各3階級) |