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2024.11.26

【2024年韓国オープン・特集】元世界女王を撃破! 2028年へ向けて飛躍の基盤をつくった類家直美(女子62kg級=レスター)

 

 韓国で久しぶりに開催された国際大会の「2024年韓国オープン国際大会」。女子62kg級の類家直美(レスター)が決勝で元世界チャンピオンを破って優勝。この秋、国民スポーツ大会と全日本女子オープン選手権で優勝した勢いを加速させた。

 決勝の相手、オーコン・プレブドルジ(モンゴル)は、日本の女子レスリング界にとって忘れることのできない選手だ。世界的には無名だった2016年1月の「ヤリギン国際大会」(ロシア)で、無敗の白星街道を突っ走っていた伊調馨(58kg級)を10-0のテクニカルフォール(現テクニカルスペリオリティ)で破って優勝。リオデジャネイロ・オリンピックを7ヶ月後に控えていた伊調の行く手に暗雲を立ちこめさせた選手。

▲元世界チャンピオンであり、日本人キラーのオーコン・プレブドルジ(左=モンゴル)を破って優勝した類家直美

 リオデジャネイロではキャリア不足を露呈してしまったが、翌2017年に63kg級で世界一に輝くと、2018年アジア大会では川井梨紗子にフォール勝ち(階級区分が変わって62kg級)。このときの“優勝”はドーピング違反で取り消され(4年間の出場停止処分)、本当に勝ったとは言いがたい。それでも試合の記録は残るので、世界で唯一、日本を代表する2人の強豪に“土をつけた”選手と言える。

 プレブドルジも30歳となり、4年間のブランクは大きいと思われるが、それでもパリ・オリンピックで5位に入賞。ロサンゼルス・オリンピックへ向けて早くもスタートを切っている。

先制攻撃はならなかったが、立て直して逆転勝ち

 類家もその経歴は熟知しており、試合前、「ここで勝てれば世界でも上の方へ行けると思い、絶対に勝とう、と思って臨みました」と考えた。パワーがあって上半身で勝負してくることも知っていた。それについては準決勝でプレブドルジと闘った榎本美鈴(自衛隊)も「今まで経験したことのない想像以上のパワーで、対応できずに負けてしまいました」と話しており、卓越した力の持ち主であることは間違いない。

 類家は「自分から攻めることを心がけていました」と話すが、第1ピリオドは0-3となってしまい、出鼻をくじかれた形。唯一仕掛けたタックルは、小手投げのように振られてポイントにはつながらない。パッシブこそ取られなかったが、終始押されており、やはり一筋縄ではいかない相手だ。

▲第1ピリオド、唯一仕掛けたタックルは、うまい身のこなしでかわされて0点

 思った闘いができなくとも、立て直せるのが実力者。「3点くらいなら、まだ大丈夫と思い、どんどん攻めて最後は体力(スタミナ)で勝てればいいかな」と気持ちを切り替え、第2ピリオドに入ると、正面タックルで4点を取って逆転。焦りが見えてスタミナの切れかけた相手に片脚タックルで2点を加え、再度の正面タックルで2点を取ると、“リンクル”で2点。

 終盤、相手の意地の前にテークダウンを2度取られたが、10-7のスコアで振り切った。先制攻撃という課題は克服できなかったが、相手の流れを断ち切って反撃できる闘いは今後に大きく役立ちそう。この勝利で「世界の中で自分がどのあたりにいるか、分かったような気がします」と言う。

▲気を取り直して臨んだ第2ピリオドの序盤、4点タックルが決まって流れを変えた

オリンピック5位に勝って、世界での立ち位置を認識

 愛知・至学館高時代の2018年に18歳で65kg級全日本チャンピオンとなり、翌2019年のアジア選手権で2位、2020年にアジア・チャンピオンに輝いた。しかし、コロナのブランクと日本代表へあと一歩の状況が続き、海外でもまれる機会がなかった。かろうじて至学館大卒業前に学生選抜チームのメンバーとしてブルガリアの国際大会に出場したのみ。

 今大会も社会人選抜チームの遠征であり、全日本チームの遠征ではなかったが、元世界チャンピオンのオリンピアンに勝つ収穫があった。「世界のレベルを分からないままだったので、こうした機会を得ることができてよかったです」という言葉に実感がこもる。

 練習拠点の日体大では田南部力コーチからの熱烈指導を受けおり、「組み手の種類や、落としたり、崩してからのアタックを学んだことが大きいです」と言う。同チームは藤波朱理のパリ・オリンピック優勝や、59kg級で全日本選抜選手権優勝の尾西桜の躍進などで熱く燃えており、気の抜けない練習が続いている。藤波とスパーリングもするが、「学ぶことしかないです」と言う。

▲形はやや崩れたが、パリ・オリンピックで日本選手が多用したことによって世界的な流行となりつつある“リンクル”にも挑戦

 「同じ相手との練習だけでは、本当に技が決まるかどうか分からないので」と、ときに他チームへの練習にも参加。オリンピック前に藤波が至学館大へ出げいこしたときには同行し、久しぶりに母校でも汗を流した。

必要な意識改革、日本代表チーム入りで乗り越えられるか

 高校~大学で7年間、指導した同大学の栄和人監督は「身体能力が高い。社会人になって、意識が変わってくれれば飛躍すると確信していました」と言う。全日本チャンピオンとなって日本代表チーム入りすれば、その課題も解決するのではないか。全日本チャンピオンへの復帰が待たれる。

▲逆転を狙うプレブドルジの最後の攻撃を必死にこらえた

 リオデジャネイロ大会があった2016年の末には須﨑優衣、向田真優、東京大会が予定されていた2020年の末には藤波朱理、櫻井つぐみ、尾﨑野乃香、鏡優翔というシニアの世界では“新星”と呼べる選手が飛び出し(全日本チャンピオンに輝き)、途中でつまずいたり、負傷で一時離脱しながらもVロードを突っ走った。

 類家の場合、新星とは呼べないだろうが、“眠っていた新星”と表現してもさしつかえあるまい。来年へ向けての目玉選手になりうる成績を残した一人であることは間違いない。「海外より日本の方がレベルが高いので気を抜かず、もっとレベルアップできるように頑張りたい」と1ヶ月後の勝負へ向けて表情を引き締めた。







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