(文・写真=布施鋼治)
パリ・オリンピックでの53kg級金メダル獲得から約3ヶ月半。藤波朱理(日体大)が復帰戦を飾った。
11月24日、東京・自由ヶ丘学園高校体育館で行なわれた「2024年度第6回東日本大学女子リーグ戦STIカップ」で、日体大の59㎏級にエントリーして2試合に出場。神奈川大の山内泰美(3年)と育英大の新井一花(2年)を相手に、いずれも失点0でのフォール勝ち。圧巻の“横綱相撲”を見せつけた。
「みんなが頑張っている姿を見たら、自分も頑張らないといけない。そういう気持ちになる」
特筆すべきは、いずれの試合でも体格的なハンディやパワーの差を微塵も感じさせかったことだろう。「今日は59㎏級での試合だったので、53㎏級とは6㎏も違う。でも、体重はしっかりあったので、今までの闘い方と大きくは違わない。試合や試合前の感覚を思い出してすごく楽しかったです」
現在の通常体重は60㎏。藤波はほぼナチュラルでマットに上がったことになる。試合後の会見では、今年12月の天皇杯全日本選手権(東京・代々木競技場第2体育館)には出場せず、来年以降、階級を上げることを宣言した。
「次の大会は来年になると思うけど、階級を57㎏級に上げる決断をしました。そのためにこれからはしっかりと(階級に合った)体作りをしていきたい」
階級転向の理由のひとつとして減量苦を挙げた。「53㎏までの減量は、ものすごくきつかった。減量の過程で筋肉も落ちる感覚があった。通常体重から3㎏程度落とすくらいが最も高いパフォーマンスができる感覚です」
実現すれば、世界の女子選手では史上初となる階級を上げてのオリンピック2階級制覇という思いもある。「今まで階級を上げて連覇した方はいないと聞いています(注=伊調馨と川井梨紗子は階級を下げての2階級優勝)。それだけ難しいことだと思うけど、だからこそ挑戦のしがいを感じます」
10月から日体大・女子レスリング部のキャプテンに任命された。「チーム全体を見るポジションに就くのは初めて。今まではオリンピックに向けて自分のことばかり考えてやってきたけど、これからは日体大(女子)全体を強くすることもできるようにしたい」
キャプテンとして初めて挑んだ団体戦は? 「結果として優勝することはできなかったけど、そこを目標にしたうえでの練習は楽しかった。チームとして闘った団体戦は思い出に残る1日になりました」
育英大戦での新井の試合の直後は、石井亜海(4年)の牙城を崩すべく奮闘していた後輩の尾西桜(1年)に必死に声援を送っていた。
11月11日に21歳になったばかりの藤波。2028年ロサンゼルス・オリンピックに向け、確かな一歩を踏み出した。