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2024.11.27

【2024年韓国オープン大会・特集】会場を沸かせた優勝後のパフォーマンス、余裕を持っての国際大会初優勝…男子フリースタイル74kg級・青柳善の輔(クリナップ)

 

 優勝したあとのパフォーマンスと言えば、オリンピック3大会連続出場の高谷惣亮選手(現拓大監督)が有名。全日本選手権や全日本選抜選手権で優勝する度に、流行に合わせてマット上でダンスを披露。観客を楽しませた。11月22~24日に韓国・尚州で行われた「韓国オープン国際大会」では、男子フリースタイル74kg級で優勝した青柳善の輔(クリナップ)が、韓国で人気となっている2つのパフォーマンスを披露し、会場を沸かせた。

▲優勝を決め、韓国で根強い人気を持つカンナム・スタイルのダンスを披露した青柳善の輔

 「試合前から、やるつもりだった?」との問いに、「はい」と即答。余裕がなければできないことだが、決して浮かれ気分での行動ではない。そうした気持ちでいた方が、「気負わずに試合ができます」とのこと。悲壮感を持ってマットに上がり、勝つことに集中することだけが勝利への道ではない。

 勝負で重要なことのひとつが「リラックス」。試合で極度に緊張し、硬くなっては、持っている力を出すことはできない。試合前から自分が勝つと決めつけ、会場を沸かせることまで考えるプラス思考で闘うことこそが、実力を出し切る要素なのかもしれない。

 パリ・オリンピックで優勝した樋口黎選手(ミキハウス)は、マットに上がる前に、どこに日本のカメラマンがいるかをチェックし、勝ったあとそこへ向かってガッツポーズすることまで考えていた事実を明かしたことがある(協会機関誌「オリンピック・レスリング」2016年夏季号)。それくらいの余裕をもって闘う方が、いい結果を出せるのではないか。

▲韓国の人気サッカー選手のソン・フンミンの十八番ポーズ。地元カメラマンの要望にこたえてマットサイドでも披露

U23世界王者の髙橋海大(日体大)との“間接対戦”に勝利

 そうした域に達するには、実績を積み重ねて優勝を射程距離に置くことが必要。青柳は2022年から今年10月にかけ、U20とU23の世界選手権、シニアのアジア選手権と世界選手権で銅か銀のメダルを取り続けている。だからこそのパフォーマンスであることは言うまでもない。

 もっとも、それらは65kg級か70kg級での成績。今大会はオリンピック階級だけの実施なので74kg級への出場となり、簡単に勝てるとは思っていなかったようだ。この種の国際大会は慣例で2kgオーバーでの計量(74kg級は76kg級で計量)。通常体重が72kgしかない青柳にとっては、ふだん80kgもある選手と闘うことになり、かなり不利な状況だ。

 実際に「相手は重かった」という感触があった。それでも1回戦からの3試合をテクニカルスペリオリティで勝ち、かなりの自信を持ったことだろう。決勝の相手は昨年のアジア大会3位で、先月のU23世界選手権の決勝に進み、髙橋海大(日体大)が3-1で勝った相手。いずれライバルとなるであろう髙橋との実力比較のうえでも、負けられない相手だ。

 試合は第1ピリオド、アクティビティタイムで1点を取り、第2ピリオドは圧力をかけて2度の場外ポイントで3-0。中盤にローシングル(左足首へのタックル)を仕掛け、粘られながらも粘り返して2点を追加。ラスト40秒に2点を失ったものの、5-2で勝利。気負いのない闘いで初の国際大会優勝を飾り、この日、会場を最も沸かせたパフォーマンスへつなげた。

▲ローシング(低い片脚タックル)で粘り強く攻め、5-0とリード

《青柳の決勝の動画》=1:41:30から決勝、1:50:20から優勝後のパフォーマンス

連戦での出場にためらいなし、外国選手との闘いで実力アップへ

 10月末に70kg級でU23世界選手権(銅)と非オリンピック選手権(銀)に続けざまに出場した。今の時期は、来月の全日本選手権に向けて心身ともダウンさせ、エネルギーを補充するべき期間かもしれない。

 事実、世界選手権のあとは練習量を落としており、今のコンディションでは、同じ階級にエントリーしていて国内の74kg級で実績を残している高田煕(自衛隊)には「勝てなかったでしょう。(高田が準決勝で負けて)闘うことがなくてよかった」と振り返っている。
 
 それであっても、国際大会出場にためらいはなかった。外国選手との数多くの闘いの中から実力がアップするからだ。「アオヤギと闘いたい、という海外の選手を探してほしいです」という言葉も頼もしい限り(「そんな選手がいるのか、分からないですけど」と続くのだが…)。外国選手との闘いに特別な意識を持つことがないまでに経験を積む腹積もりだ。

▲終了間際、自滅で“人間風車”を決められそうになったが…

 もう、ストイックに勝利だけを求める時代ではない。「目立ちたい」という気持ちで観客を楽しませ、人気を得るためにスポーツに打ち込んでも、おかしなことは何もない。世界レスリング連盟(UWW)の大会が、以前とは比べものにならないほどショーアップされるようになって久しい。レスリングをメジャーな存在にするために、選手にも人気獲得への意識改革と行動がほしいところ。

 もちろん、多くの価値観が存在する時代。「闘った相手に対して失礼」として、パフォーマンスはおろか、派手なガッツポーズやウィニングランもやらない信念を持っている選手もいる。それが否定されてはならない。その行動が魅力となって人を引きつけることもある。要は、いかに信念をもって行動するか。

 青柳は韓国の観客に受けるためのパフォーマンスを考え、それを実行した。すでに、ロサンゼルスのファンを楽しませるパフォーマンスを考えているのか? その思いを現実のものにするため、この国際大会初優勝におごらず、変わらぬ努力が望まれる。

▲賞金700ドルをゲット! プロ選手なのだから、派手なパフォーマンスは当然か?

 







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