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2011.11.02

【特集】いい時の自分を取り戻し、日本代表奪還へ!…男子フリースタイル84kg級・松本篤史(ALSOK)


(文=樋口郁夫)

 日の出の勢いで実力をアップさせ、日本代表にまで昇り詰めても、壁にぶつかる時がやって来るのが勝負の世界の常。男子フリースタイル84kg級で昨年世界選手権に出場した松本篤史(ALSOK=右写真)も、今年、この壁にぶつかった。それは一段上に行くために必要な試練。いま、必死になってその壁を乗り越えようとしている。

 「今年は本当に不本意でした」と言う松本は、「国体も終わり、悪いところも見つかった。全日本選手権まで2ヶ月を切った。直前まで強くなるために考えながら練習を重ね、がむしゃらにやりたい」と話す。フリースタイルの基本はタックルであり、タックルのない闘いでは勝てないことは、世界での闘いを経験して感じた。今は右ひじを痛めているため、差しなどグレコローマンのテクニックを中心にやっている。けがをしていても、鍛えるべくことはたくさんある。毎日が勝負だ。

■半年間のブランクにもかかわらず日本代表を奪取!

 2010年の松本の躍進は目覚ましかった。チーム事情によって2009年秋から試合に出場することができず、全日本選手権は不出場。力をつけるべく冬の海外遠征にも参加できなかったが、実戦の場に復帰した直後の5月、全日本選抜選手権で全日本王者の松本真也(警視庁)を2回戦とプレーオフで連破し日本代表の座を奪い取った。ブランクがあってもこの成績。一気に世代交代をも予感させた台頭だった。

初出場だった2010年世界選手権では上位入賞ならず

 しかし、同年9月の世界選手権(ロシア)と11月にアジア大会(中国)では、3試合を闘って南アフリカ選手に勝っただけの1勝。結果を出すことができず、これで歯車が狂ってしまった。12月の全日本選手権で松本真にリベンジを許す。年が開けてのデーブ・シュルツ国際大会(2月、米国)で3位に入り、シニア初の国際大会メダルを取って上昇ムードをつくったのも束の間。4月の全日本選抜選手権と先月の国体で、ともに門間順輝(秋田・城東消防署)に黒星。3番手にまで落ちてしまった形となった。

 国体での門間戦は、コーチの「1ピリオドを捨ててでも(相手を)崩してばてさせろ」という指示を忠実に守ろうとしすぎたことが敗因。「気持ちが先走ってしまい、相手が崩れていないのに自分だけが動いていた感じ。崩すことだけを考えてしまった。崩しながら取りに行けばよかった」と反省する。

 「門間さんのスタイルは自分のスタミナを減らさずにカウンターで攻めること。そこをしのいで攻撃しなければならなかったんです」という分析もする。「戦術のミス?」との問いに、「いえ、自分が弱かったんです。甘かったんです」と、力なく笑った。

■初出場の経験をもとに、もう一度世界で勝負したい

国体で門間に敗れた松本(赤)だが…

 門間は日体大の1年先輩で、入学した時はかなりの実力差があり、練習ではしごかれた。その時の思いがよみがえったことも考えられるが、「いえ、まぐれ勝ちであっても、試合で勝ったこともありますし(2008年全日本選手権)、それはなかったです」ときっぱり。

 連敗したとはいえ、「苦手意識を持つことはありません。苦手意識なんて感じたら、勝てる相手にも勝てなくなりますよ」と言い切った。その力強い言葉があれば、全日本選手権では門間の壁を乗り越え、松本真と再び日本代表を争うシーンが見られるだろう。

 昨年の世界選手権は「初の大舞台に舞いあがってしまい、何もできなかった」と振り返る。それまでに2005年アジア・カデット選手権(優勝)、2007年世界ジュニア選手権(5位)とJAPANシングレットを着て闘ったことがあるが、「規模が違いすぎます。会場の広さといい、観客の数といい」と、経験したことのないプレッシャーの前に、培ってきたものを出すことができなかった。

 負け惜しみで言うのではなく、「練習でやっている自分を出せれば、勝てない世界ではない」という思いがある。そのことが分かっただけに、もう一度あの舞台で闘い、今度は実力を出し切って世界の選手と闘いたいという気持ちだ。

 ロンドン五輪までには、もう世界選手権はない。次に出るのは五輪のマット。今度の全日本選手権はロンドン五輪のトライアルに出るために勝たなければならない大会。目標は優勝以外にはなく、「死ぬ気で取りにいきます」という言葉も。「次(の五輪)がある、なんて思っていてはダメです。崖っぷちの気持ちで臨む全日本選手権です」と言う。

全日本合宿で練習する松本

■日本代表奪還のためには、いい時の自分を取り戻すこと

 勝つための対策は「いい時の自分のレスリングをすること」。いい時の自分と、今の自分が試合をしたら、「今の自分は負けます」と話し、試合ビデオを見比べたりし、昇り調子の時のレスリングを取り戻すべく努力をしている。

 現在の練習環境は、レスリング活動に専念でき、選手としてこれ以上はない素晴らしい環境だ。一方、授業があった学生時代と違い、朝練習と午後練習の間を何となくすごすことが多く、メリハリがなくなって、それがマイナスに作用してしまった面があると反省する。

 「(練習の合間に)自分にプラスになることをやらないとなりませんね」。休養のとり方や気分転換の仕方なども、経験することによってのみベストの方法が分かる。そのやり方は百人百様。それを見つけ出さなければ再飛躍はあるまい。ALSOKの先輩はそれを見つけ、実行しているから結果が出せている。

 いろんな経験をした1年間。国際大会銅メダル獲得と、スタートがよかったのだから、決して「最悪の年」ではない。最後を締めくくれば、途中が帳消しされて「いい年」と呼べる。「いい2012年」へつなげるためにも、死に物狂いで全日本選手権へ向かう。

松本篤史(まつもと・あつし)=ALSOK

 1988年3月24日、群馬県生まれ、23歳。千代田ジュニア教室出身。群馬・館林高~日体大卒。高校時代の05年にアジア・カデット選手権で優勝。日体大に進み、06年世界ジュニア選手権で5位入賞。08年は学生二冠(全日本学生選手権、全日本大学選手権)を制覇し、全日本選手権で2位に躍進。09年はアジア選手権出場の機会を得たが初戦敗退。世界選手権代表も逃した。しかし全日本学生選手権で優勝。10年に世界選手権に初出場したが2回戦敗退。同年のアジア大会は初戦敗退。181cm。

 







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