日本レスリング協会公式サイト
JAPAN WRESTLING FEDERATION
日本レスリング協会公式サイト
2012.11.21

【押立杯関西少年少女選手権・特集】来年は“熊本生まれのタイガー”が全国で暴れ回る!

(文=樋口郁夫)

西日本を中心に62チームが集まった押立杯関西少年少女選手権。九州から参加したクラブのひとつが熊本・玉名市のタイガーキッズ(右写真)。マイクロバスを借り、大型運転免許のある指導者3人が交代で運転しての長距離移動で20選手が参加した。結果は、5階級で優勝。同門で決勝を争う階級もある強さを見せ、団体の得点は62点をマーク。圧勝で初優勝を飾った。

 坂口秀春代表は「上級生が結果を出してくれました」と予想以上の成績に驚きの表情。これまでは5、6人程度の参加だったそうだが、この大会のレベルが高いことを感じ、「それなら全員参加させよう」となり、今年は全国大会の出場選手数(21人)とほぼ同じ20選手で参加。「年初めから、今年はこの大会を目標にしてきました」という努力が実った。

 「一生懸命にやっていれば、そんなに強くなかった子でも勝てるようになりますね。技がたまたまかかったという選手もいますけど…」と笑う坂口監督。地方での地道な努力が実り、来年の全国大会は一気に台風の目になりそうな雲行きだ。

セコンドで試合を見つめる坂口秀春監督

■長距離移動が、選手、指導者、保護者の一致団結にひと役

 同監督は熊本・北稜高校を経て自衛隊体育学校の出身。1年後輩だった宮原厚次・前監督は「手足が長く、技もいいものを持っていましたけど、性格の優しさがマットの上にも出てしまうような先輩でした」と振り返る。けがもあってオリンピック出場の夢はかなわなかったが、レスリングへの真摯な姿勢が買われ、神奈川・湘南高校(防衛大臣直轄の少年工科学校と提携=現在は横浜修悠館高校)レスリング部の監督へ。その後は防衛大のレスリング部の監督を務めた。

 同監督によると、前者はチームをインターハイに5度出場させ、後者は東日本学生リーグ戦で二部優勝に導いたという。どちらもレスリングを初めてやる選手ばかりのチーム。前出の宮原・前監督は「初心者にレスリングの面白さを教え、打ち込ませる能力はすごいです」と評価する。キッズ・クラブには最適の指導者かもしれない。

 大会は午後5時に閉会式が終わった。そこからバスで帰って玉名市に着くのは翌朝の3時から4時の予定。その日の学校を休ませることはしない。体力的にはきついように思えるが、熊本ではそうそう大会がないので、大会出場はほとんどが遠征。「それだけのプラスがあります。ずっとそうやっていますので、子供も親もそれが当たりまえと思ってくれています」と言う。

タイガーキッズ同士の決勝戦となった5~6年40kg級。全国王者の牛島颯(赤)が終了間際に逆転勝ち

 地方クラブならではの苦労だが、それだけのメリットがあるから遠征させている。試合に出ることで選手の実力が上がってくれることや、長距離移動のハンディを乗り越えて勝つ強さを養えることは言うまでもないが、遠征に際して保護者も同行してサポートしてくれ、選手、指導者、保護者が一体となれることも大きいという。坂口監督は「保護者も一緒になって闘い、成長していくクラブを目指しています」と強調。バスによる長距離移動が一致団結に一役をかっているという。

■熊本国体を機に、玉名工高レスリング場でスタート

 創部は熊本国体のあった1999年。指導能力を認められていた坂口監督が地元の駐屯地に転属となり、成年チームの監督を務めた。国体に向けては成年の指導だけだったが、国体後にキッズ・レスリングを見にいったところ、その熱心さに動かされ、「子供の指導もやってみるか」と、母校のレスリング場で手がけたのがスタートだった。

 「いなかですから、レスリングと言ってもなかなか浸透しませんでした。プロレスと間違われることもありましたし、金銭的な問題や学校との兼ね合いなどがありまして、クラブとしての体裁が整ったのは4年後くらいです」。初めて全国チャンピオンが生まれたのが2006年。しばらく間があき、その次のチャンピオンは2011年だが、全国少年少女選抜選手権や全国中学生選手権でも優勝者を輩出するようになり、一気に全国トップチームの仲間入りを果たした形だ。

 「うまくやる人なら4~5年で(全国で勝てる)チームをつくるでしょうけど、ふつうは、10年くらいはかかりますね」。現在は部員が約50人のクラブとなった。自衛隊体育学校でレスリングをやっていたとはいえ、定年退職した年齢となった現在、子供たちとの練習は楽ではない。中学生選手とのスパーリングではほとんどやられているという。しかし「体の動くうちは子供たちにご奉公しようと思っているんですよ」。2010年と今年、全日本マスターズ選手権に出場したのは、子供たちとの練習を想定しての体力強化か。

■虎の強さにあやかったのは、五輪代表チームより先

 キッズ・クラブ、特に地方のクラブはその名称に地名を入れる場合が多い。「タイガーキッズ」は地名が入っていないので、どの県のチームか分かってもらえない場合が多かった。ネーミングの由来は、坂口監督がつけたわけではないこともあって覚えておらず、「最初は『おニャン子クラブ』とか言っていたと思います」と定かでない(注・クラブのホームページによると『虎の子クラブ』)。「つけた人がタイガーマスクのファンだったのかもしれませんね」-。

 最近では強さのほか、スタッフが九州連盟の活動に参加したり、坂口監督が全国連盟の理事をやっているので、「熊本のチーム」とかなり浸透したという。奇しくも、今年のオリンピック・チームのトレードマークが虎だった(シングレットの胸にプリント)。「偶然ですけど、うれしかったですね。先取り? そうなりますかね」。

 ロンドンで燃えた“日本生まれのタイガー”に続き、来年は“熊本生まれのタイガー”が全国で暴れ回るか。

 







JWF WRESTLERS DATABASE 日本レスリング協会 選手&大会データベース

年別ニュース一覧

サイト内検索


【報道】取材申請について
-------------

● 間違いはご指摘ください
本ホームページ上に掲載されている記録や人名に誤りがある場合は、遠慮なくご指摘ください。調査のうえ善処いたします。 記録は、一度間違うと、後世まで間違ったまま伝わります。正確な記録を残すためにも、ご協力ください。


アスリートの盗撮、写真・動画の悪用、悪質なSNSの投稿は卑劣な行為です。
BIG、totoのご購入はこちら

SPORTS PHARMACIST

JADA HOMEPAGE

フェアプレイで日本を元気に