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2017.09.13

【特集】夢に向かって努力するイラン女性の熱意が伝わってくる…伊調馨選手がイランで女子の普及に尽力


イランでレスリングを指導する伊調馨選手(右端)

 【テヘラン(イラン)、文・撮影=保高幸子】イランの女子レスリングの発展のため、今月5日にテヘラン入りした伊調馨選手(ALSOK)が、イランのナショナルチームの合宿所である「レスリングハウス」で “指導者予備軍”女性への指導を続けている。

 伊調選手が指導しているのは、イラン各地で行われた4日間の合宿を経てトライアウトを受け、選ばれた女性たちで、総勢68名。前回指導したのは2011年世界選手権(トルコ)の59kg級で優勝したアナ・バシレンコ選手。イラン協会によると、イスラム教徒の女性のため、世界レスリング連盟(UWW)から「クラシック女子レスリング」が認められ、イラン女性の間でレスリング熱が高まっているという。

 参加者はラグビー、中国武術、テコンドー、空手、柔道などの経験がある人や、数年前からイラン女子が取り組んでいるベルトレスリング(アリシュ)の選手。イランでは宗教上の理由により、これまで女子レスリングをやっておらず、やっと道着を着たレスリングが芽生えた状況。「クラシック女子レスリング」は、選手はおろか、コーチもいない。

 身内でない男性と女性が接触することが禁止されているため、当然、コーチも女性でなければならない。練習場は男子禁制のため、言葉による指導もできない。まず、指導者の育成が必要で、今回の“伊調招聘”となった。

各地からセレクトされた68人を、さらに選抜して次の段階へ

 クリニックは9日間を3日ずつに区切り、68人を3グループに分けて実施。毎日2回の練習を2日こなし、3日目の午前練習までの5回の練習で覚えた技術を3日目の午後練習でテスト。その中でコーチになれそうな人材をピックアップし、このあとも外国から女性指導者を迎え、さらなる段階に進むという。

クラシック女子スタイルの練習着に身を包んだ伊調選手

 伊調選手は、キッズ選手相手は別として、レスリングの心得がない大人の初心者に指導するのは初めて。もちろん言葉の通じない外国での指導も初。「選手を指導すると思い込んでイランに来た。コーチ育成という重大なプロジェクトに関わると知り、戸惑いはあります。初心者で、しかも言葉が通じない。言葉が通じてもレスリングの指導というのは難しい面があるので、どうやったらもっと良くなるかなあ、といつも考えています」と話し、かなり神経をつかっている。

 しかし、「将来ナショナルチームのコーチになりたい、という大きな夢を持っているからか、みんな熱心で一生懸命取り組んでいますね」と、受講者の熱意が伝わってくるのも確か。「勘がいい人もいる。初日を終えて、けっこうレスリングっぽい形になって来たので、3日間ずつしかないのがさみしいです」とも話す。

 休憩の間にも指導案をつくるなど、まさにレスリング漬け。「(選手として)しっかり練習していた時より、マットの上にいる時間は長いですね」と笑う。

 参加者の一人は、レスリングの動きの理屈などはまだ分かっていないようだが、20歳でパワーもある。「選手としてやった方がいいのでは?」と尋ねると、「いいえ、代表チームのコーチになって、大会に参加したいんです」と目を輝かせた。

今年中に国内大会を開催、来年は国際大会の開催も

 UWW女性委員のメンバーで、今年2月に日本に女子の視察に来たファルナーズ・パナヒーザデさんによると、11月か12月には国内大会が予定されているという。さらに、エジプト、アルメニア、ロシアの一部のイスラム教地域からも普及促進の希望が出ており、「2018年は国際大会を開催したい」と意気込む。

異国で熱心に指導する伊調選手

 イラン女性だけでなく、イスラム圏の女性は肌の露出や体の線を出すことを禁止されていたり、出したくないという意識の女性が多い。ベルトレスリングなどの着衣の格闘技は認可され、選手も増えてきたが、オリンピック・スタイルのレスリングとは違う。今のままでは、オリンピックで闘う選手との接点はできない。

 世界の3大宗教であるイスラム教は教徒の人口も多い。戒律を守りながらもオリンピック・スタイルと同じルールのレスリングを楽しめるよう新スタイルが認められたようだ。

 パナヒーザデさんによると、どの宗教の選手も参加できるよう、試合着は2種類用意されている。ひとつは、髪を隠すフードはないが手首と足首を含めて肌が隠れるユニホーム。イラン女性が着ることになるのは、そこにフードとハーフパンツが加わったもの。

 オリンピック・スタイルのレスリングとは試合着が違うため、現状では日本の女子レスラーと試合をすることはないが、ユニホーム以外のルールは同じ。将来、世界選手権やオリンピックの種目となり、同じマットで試合をする可能性はゼロではない。

 伊調選手は「短い時間で難しい指導ですが、私にもいい経験になると思います。レスリングというものをしっかり伝えて、楽しさを知ってもらえたらいいなと思っています」。残り数日、イラン女子レスリングの普及に全力を尽くす。

 







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