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2017.10.07

【特集】米満達弘さん(自衛隊)が2年間のコーチ留学から帰国、米国での研修生活を語る

米国での2年間のコーチ留学を終え、帰国した米満達弘さん

 2012年ロンドン・オリンピックの男子フリースタイル66kg級で日本男子24年ぶりの金メダルを獲得した米満達弘さん(自衛隊)さんが、8月末、ペンシルベニア州立大学(ペンステート)での2年間のコーチ留学を終え、米国・ペンシルベニア州ステートカレッジから帰国した。

 2020年東京オリンピックに向けて、10月から自衛隊のフリースタイルのコーチに就任するとともに、ナショナルチームのフリースタイル強化委員に就いた。東京オリンピックで金メダルを目指す選手たちにとって、頼もしい存在になることは間違いない。米満コーチに2年間の米国生活について話を聞いた。(聞き手=増渕由気子/現地での写真は本人提供)


2004年アテネ王者ケイル・サンダーソンのもとで勉強

 ――2年間のコーチ留学お疲れ様でした。あらためまして、お帰りなさい。

 米満「ありがとうございます。無事に帰ってくることができました」

留学先のペンステートのレスリング場

 ――まずは、いかがでしたか? アメリカでの生活は。

 米満「今回のコーチ留学は2年間だったのですが、生活に慣れるのに1年くらいかかりました。1年経過した頃からは時間が経つのが早かったですね」

 ――現在、グレコローマンで全日本のアシスタントコーチをしている笹本睦コーチは欧州にコーチ留学をしましたが、米満コーチはアメリカでした。留学先はどんな基準で選んだのでしょうか。

 米満「いろいろな国が候補にあがりましたが、自分のなかではアメリカと決めていました。自分の希望を伝えたところ、協会からペンステートを紹介していただき、行くことに決めました。その大学には日体大レスリング部OBの大石八郎先生がいらっしゃって、大変お世話になりました」(注=山梨学院大の高田裕司監督、専大の佐藤満コーチも大石氏を頼り、ペンステートをコーチ留学の場所に選んだ)

 ――どんな毎日を送っていたのでしょうか。

 米満「ペンステートに入学希望の留学生たちを対象とした語学授業があって、午前中はそれに参加していました。サウジアラビア、クエートなどの中東国や中国、韓国などアジア圏の生徒が多かったですね。日本人は私一人でした。語学は、日常会話はもちろん、レスリング用語などは覚えました。もっと話せるようになれると思っていましたが、難しかったですね(笑)」

ニッタニーライオンクラブで練習したジェイク・バーナー(右)とフランクリン・ゴメス

 ――レスリングの環境はいかがでしたでしょうか。

 米満「ペンステートのレスリング部とは別に、大学が『ニッタニーライオンクラブ』というクラブチームを持っていて、オリンピックを目指すプロ選手たちが10~15名ほど集っています。そこに私も参加させていただき、ふだんは一緒に練習をしていました。

 ペンステートとこのクラブチームのコーチがとても有名な方で、2004年のアテネ・オリンピック金メダリストのケイル・サンダーソンさんに師事することができました。選手としてもNCAA(全米学生選手権)で4度チャンピオンになり、世界選手権やオリンピックで結果を出し、指導者としてもアメリカで評価が高いコーチの一人です」

 ――すごい方のコーチングを学ぶ機会に恵まれましたね。そうなると、選手たちの顔ぶれもすごかったんでしょうね。

 米満「そうですね。ケイルさんの指導を求めて、ロンドン・オリンピック金メダリストのジェイク・バーナー(96kg級)、リオデジャネイロ・オリンピック代表のフランク・モリナロ(65kg級5位)、ロンドンとリオデジャネイロ大会のプエルトリコ代表のフランクリン・ゴメス(2011年世界2位ほか)らもいました。彼らと一緒に練習をし、その選手たちを指導するケイルさんを間近で見ることができてとても充実した日々でした。

強くなる選手は自分でどんどん練習していた

 ――普段はどのような練習を行っていたのでしょうか。

 米満「時間が短いのが印象的でした。準備運動を各自で行い、技術練習が多かったです。基本ができている選手ばかりでしたので、練習メニューは同じことの繰り返しではなく、毎回違うことが多く、技の引き出しを増やす練習でした。トップ選手に特化した練習メニューだったので、今後ナショナルチームで生かせそうだなと思っています」

すばらしい練習施設を持つペンステート

 ――アメリカのトップ選手はどんな印象でしたか。

 米満「アメリカのレスリング人口はとても多く、その中で強くなる選手は自分でどんどん練習している選手です。全体での練習時間は短かったのですが、各自でどん欲に練習していました」

 ――日本との違いを感じたことはありましたか。

 米満「そもそも大学スポーツの規模が全く違いました。ペンステートはアメリカンフットボールが有名で、大学の敷地内に11万人が入る競技場があるほどなんです。レスリングに関しても、レスリングマットが合計で25面敷ける施設があり、環境は抜群。資金面も潤沢です。大学が企業と契約していて、プロテインなどが飲み放題。OBたちの寄付金などで活動費用は充実していました。

米国の大会は興行レベルで、どんな大会でも満員の観客が集まる

 ――チームの遠征などで大学以外の場所に行く機会はありましたか。

 米満「大学のレスリングチームの試合に同行し、アメリカの地方大会からNCAAの決勝戦まで様々な大会を観る機会がありました。どの大会も日本と次元が違っていて驚きました。大学スポーツが興行レベルの大会となっていて、常に満員の中で行われていました」

3日間6セッションでのべ11万人を超える観客が入るNCAA選手権

 ――日本の強化とだいぶ違う面が見られたのですね。

 米満「私は、アメリカと言えば日本に近いイメージを持っていたんですよね。映画とか音楽とか。けれどもスポーツ文化は違っていました。スポーツを通してアメリカの文化を学べたことは、私にとってとてもプラスになりました。日本は少数精鋭ですが、アメリカの人口はすそ野が広く、強い選手もいれば、弱い選手もいる。全体的に文武両道というイメージが強かったです。

 NCAAでも、医学部の学生でチャンピオンになった選手もいました。強い選手の一部はそのまま世界を目指し、それ以外の選手は別の世界で一流になって、その利益をレスリングに還元している仕組みがアメリカなんですよね。アメリカで一番になるのは大変なことです。そのアメリカ代表に、日本選手が互角以上に闘っていることは本当にすごいことなんだなと、あらためて感じました。日本とアメリカの強化方法は両極端で、その両方を知ることができました」

 ――充実した2年間でしたね。帰国してこの経験をどのように生かしていきたいですか。

 米満「10月1日付で全日本チームのフリースタイルの強化スタッフになりました。2020年東京オリンピックで金メダルを獲れるように全力でサポートしていきたいと思っています。

(注)インタビューに出てくるペンステートのコーチつきまして、これまで「カイル・サンダーソン」としてきましたが、「ケイル・サンダーソン」とします。

“満員御礼”が続く大学生の大会

9月の全日本と学生の合同合宿に参加した米満コーチ







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