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2011.08.26

【特集】世界選手権へかける(9)…女子59kg級・斉藤貴子(自衛隊)


(文=布施鋼治)

 8月中旬、世界選手権の女子59kg級に初出場する斉藤貴子(自衛隊=右写真)を自衛隊体育学校に訪ねると、かつてフリースタイル60kg級で活躍した山本英典コーチとマンツーマンのトレーニングに励んでいた。メニューは手のたぐり方。ロシアのレスリング界で発達する技術を吸収しようとしていた。

 目を輝かせながら、斉藤は言う。「タックルの切り方とか粘り強さなど、ロシアのレスリングはレベルが高い。自分もそのレベルに近くなれるように、いろいろ聞いて見せてもらっています。ちょっとずつですが、吸収できていると思います」-。

■柔道時代にできなかった日の丸を背負った闘い

 この1年、斉藤は飛躍的に成長した選手のひとりだ。昨年12月の全日本選手権で初優勝したのを皮切りに、今年4月の全日本選抜選手権も初制覇。その勢いで5月のアジア選手権(ウズベキスタン)も初出場初優勝を果たした。アジア選手権では「プレッシャーもあったのでは?」と水を向けると、斉藤は「楽しめた部分もあった」と言ってのけた。 「チャレンジャーだったので、どこまでできるかなという感じでした。言い換えると、怖いもの知らずでしたね」。

 飛躍のきっかけを作ったのは、全日本選手権だ。「自衛隊に入ってコツコツやってきたことが、去年になってようやく実になってきたんだと思います。これで負けたら終わり。自衛隊をやめるしかないと、気持ち的に開き直れたことも大きかった」と振り返る。

 全日本選抜選手権からは、試合になっても慌てなくなったが、それまではなかなか結果を残せずにいた。斉藤は柔道出身。8歳から大学卒業まで柔の道を突き進んだ。簡単にシフトチェンジすることはできなかった。「やっぱり試合になったら、なかなか自分を出せない。レスリングをまだ知らなかったんでしょう。今はちょっとずつレスリングがわかってきた気がします」(左写真=全日本選抜選手権で闘う斉藤)

 レスリングを始めてからは背中の後背筋が発達した。もう迷わない。今では柔道よりレスリングの方がやっていて楽しいと思えるようになった。それはそうだろう。柔道時代には夢のまた夢だった日の丸を背負えるようになったのだから。斉藤は「レスリングはやりがいのあるスポーツ」と語気を強めた。

■世界チャンピオンから第1ピリオドを先取

 「自分の適正に合っていたんですかね。私は、レスリングの方が、練習したらその分を試合で出せるような気がする」と言う。今は全てが経験。敗北を喫しても、肥やしにする自信がある。今年3月5~6日、フランスで行なわれたワールドカップでは世界王者ソロンゾンボルド・バチェチェグと対戦する機会に恵まれた。第1ピリオドこそクリンチによる攻撃をものにして先制したが、第2ピリオドになると、がぶり返しで後方に返されてそのままフォール負けを喫した。

 その時の感触を斉藤はいまも覚えている。「第1ピリオドでタックルに入れるという自信を持てた。それで第2ピリオド、積極的にタックルで行ってやろうと思ったら、うまく切られて、がぶられて返されてしまった。考えが甘かったですね」

 「手が届きそうな世界一だった? それとも手が届かない世界一だった?」と聞くと、斉藤はフフフッと微笑んだ。「近いんじゃないか、と。負けても得るものはありました。日本であそこまでのがぶり返しをかけられたことはなかったので、自分が攻めた時のがぶり返しという技術をこれから勉強していきたい」(右写真=世界チャンピオンからがぶり返しの洗礼を受けた斉藤)

 アジアや世界の大舞台を経験することで、日本との違いも肌で感じるようになった。「日本は日本で、テクニックがあってやりにくさもある。一方、アジアはアジアで外国人なんですけど、構えてきてタックルに絶対入らせない。逃げたり下がりながらカウンターを狙う選手が多い。ヨーロッパの選手になると、力も強くてガンガン前に出てくるパターンの人が多い」

■10歳年下の村田夏南子の試合からも学ぶ

 いまでは、柔道で培った足腰もレスリングにうまく活かせるようになってきた。「柔道をやっていたおかげで、足腰は強いと思います。それがうまくレスリングにかみ合ってきたのかも。他の柔道出身の選手も見ます。村田夏南子ちゃん(全日本選抜選手権55kg級2位)の試合は、どういうふうにうまく柔道を使っているのかという視点で結構見ています。彼女は柔道をうまく使っていると思いますよ。粘りとかも結構うまい」

 強くなるために努力は惜しまない。思ったことは紙に書く。試合映像はiPhoneに入れて見る。「ソロンゾンボルド選手(前述)やアメリカの選手(Kelsey Campbell)の試合を見ます。男子だとロシアのブバイサ・サイキエフの試合も見るようにしています。自分の試合はいい試合だけを見る。悪い試合を見てしまうと、またその時に戻ってしまうので」

 周囲は「チャレンジャーなんだから思い切りいけ」と肩をたたく。いまの斉藤には、それが心地よいプレッシャーになっている。「自分のレスリングは気合でいくガムシャラなスタイル。ケガに気をつけながら、トルコでは優勝して、そのあと気持ちよく観光に行きたい」 -。
 


斎藤貴子(さいとう・たかこ=自衛隊)

 1983年8月10日、千葉県生まれ、28歳。千葉・柏高~拓大卒。大学時代までは柔道の選手。卒業し、自衛隊に入隊してレスリングを始めた。2008年全日本社会人選手権で優勝。2010年にクリッパン国際大会で銀メダルを獲得し、今年のアジア選手権優勝。156cm。


 ◎斉藤貴子の最近の国際大会成績

 《2011年》
 【5月:アジア選手権(ウズベキスタン)】優勝(11選手出場)
決  勝 ○[2-1(3-3,4-3,2-2)]Liu Gui(中国)
準決勝 ○[フォール、2P(3-0,F3-0)]Sukhee Tserenchimed(モンゴル)
2回戦  ○[フォール、1P(F4-0)]Karina Aganesyan(タジギスタン)
1回戦   BYE

 【3月:ワールドカップ(フランス)】
3決戦 ○[2-0(1-0,2-0)]Amanda Joy Gerhart(カナダ)
3回戦 ●[0-2(0-1,0-4)]Li Hui(李絵=中国)
2回戦 ○[2-0(1-0,1-0)]Piva Mait De Valiere(フランス)
1回戦 ●[フォール、2P0:32(1-0=2:02,F0-4)]Battsetseg Soronzonbold(モンゴル)

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 《2010年》
 【7月:ゴールデンGP決勝大会(アゼルバイジャン)】5位(10選手出場)
3決戦 ●[フォール、1P(F2-7)]Ganna Vasilenko(ウクライナ) 
2回戦 ●[1-2(4-0,0-2,0-1)]Johanna Mattsson(スウェーデン)
1回戦   BYE

 【3月:クリッパン女子国際大会(スウェーデン)】2位(15選手出場)
決 勝  ●[0-2(2-2,0-5)]Marianna Sastin(ハンガリー)
準決勝 ○[2-0(2-0,5-0)]加藤優希(東京・安部学院高)
2回戦  ○[2-0(3-0,3-0)]Leigh Jaynes(米国)
1回戦  ○[2-0(1-0,2-1)]Margarita Fatkulina(ロシア)

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 《2008年》
 【NYACホリデー・オープン(米国)】4位(7選手出場)
3決戦  ●[フォール、1P1:33(F1-2)]Heidi Erdle(カナダ)
敗復戦 ○[2-0(1-0,1-0)]Nicole Darrow(米国)
敗復戦 ○[フォール、1P0:42(F7-0)]Melanie Carter(米国)
1回戦  ●[フォール、1P1:11(F0-3)]Deanna Rix(米国)







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