女子ワールドカップ(W杯)で日本に続く2位に躍進したロシアのユーリ・シャクムラドフ監督は、ロシア・レスリング協会のホームページに「2位に終わったが、日本と闘えるという手ごたえはつかんだ。日本戦はオリンピック実施の4階級のうち、2階級で勝ったことは価値がある。もう日本は怖い存在ではない。だれもが日本選手と互角に闘えるという気持ちになったと思う」と、今後に自信を話した。
同ホームページによると、日本戦の55kg級にマリア・グロアではなく、若いワレリア・ジョロボワを起用したのは、予選グループで最大の敵と考えていたカナダ戦で世界2位のトーニャ・バービックを破った実力を見せてくれたことと、カナダ戦と同じメンバーで臨みたい気持ちからだったという(実際には72kg級を交代)。結果として、世界1位(吉田沙保里)、2位の選手を含めた3戦全勝で、失点は吉田戦の2点のみという内容に、「最も輝いていた選手」と評した。63kg級のリュボフ・ボロソワも、伊調馨と0-2(0-1,0-1)という善戦を評価。浜口京子を破った72kg級のナタリア・ボロベワも、「(世界2位の)エカテリナ・ブキナと同じ実力がある。最高の誕生日になった(5月27日生まれ)」と話した。
打倒吉田を果たしたジョロボワは、昨年の世界選手権に59kg級で出場したあと(9位)、五輪階級の55kg級へ階級ダウン。今年1月のヤリギン国際大会(ロシア)で2位に入るなど(決勝の相手は村田夏南子)、この階級でも実力を見せ始めた19歳の成長株。
「前夜、決勝戦のメンバーに指名された時から吉田選手と闘うことを予想していました。シャクムラドフ監督から『必要以上に考えるな。リラックスして闘え』と言われ、負けることを恐れることなく闘えました」と振り返り、試合では、「何も考えなかったし、不安もなかった」そうだ。
同ホームページでは、吉田のこの敗戦を「キャリアで最初の黒星」と紹介している(注・世界レスリングのデータベースでは、2008年W杯の個人記録の掲載がなく、28大会連続で「1位」と記載されているためだと思われる)。「偉業?」という問いかけに、「とてもいい勝利でした。自信になり、今後の練習に必要なことが分かりました」と話した一方で、「この勝利のことは、もう忘れました。オリンピックへ向け、ハードな練習を再開します」と、新たな目標を定めた。
なお、ロシアの五輪代表はまだ決まっていない。