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2012.09.30

【世界選手権女子第2日・特集】「死ぬまで破られない記録をつくりたい」…55kg級・吉田沙保里(ALSOK)

 【ストラスコナカウンティー(カナダ)】世界女子選手権の第2日、五輪3連覇を成し遂げたばかりの吉田沙保里(ALSOK)が、“霊長類最強”とまで言われた不世出のレスラー、アレクサンダー・カレリン(ロシア)の五輪と世界選手権の優勝記録を塗り替えた。

 準決勝でヒヤリとさせられるシーンがあった分、決勝は安心して見ていられる試合だった。相手のヘレン・マルーリス(米国)は昨年の世界選手権5位で、今年はパンアメリカン選手権で優勝している選手。あなどれない相手ではあるが、21歳の若さでは、吉田の前に立てば蛇ににらまれたカエルだ。吉田は準決勝での反省からか、タックル系統の技ではなく、がぶって、振ってバックを取って1点を先制。さらに回り込んで1点を加え、第1ピリオドを難なく取った。

 米国の選手は平均して返し技が得意。そのことの対策もあったかもしれない。タックルで仕掛けてこない吉田を相手に、後手に回ったマルーリスに勝機を見出すことは難しい。吉田は第2ピリオド、バックに回って1点を取り、腕取り固めで一気にフォールを決めた。

■公約通り『チャンカパーナ』のポーズ

 ガッツポーズの吉田。続いて大会前の「優勝したら『チャンカパーナ』のポーズを決める」という公約通り、右手の小指と親指を立て、ほおを指すアクションで観客席の母・幸代さんらの声援にこたえた。そのあと、栄和人監督と父・栄勝コーチによる肩車。地元の観客も惜しみない声援をおくり、“世界記録”樹立を祝した。

 「(優勝回数で)世界一になった実感がこみあげてきていますけど、日が経てばもっとうれしさが倍増するような気がします」。マットから降り、興奮の冷めない表情で話した吉田は、表彰式のあと、「今はカレリンの記録を抜けたことのうれしさでいっぱいです」と話した。

 オリンピックのあと、3連覇を達成した国民的英雄は多忙な日をおくった。五輪選手の公式行事や表彰式、イベント…。日本代表として欠かすことのできないイベント出席が続き、練習時間は限られてしまった。約50日のうち、「しっかり練習できたのは20日くらいかな」と言う。

 しかし、世界トップレベルでの数多くの試合経験を持つ地力十分の五輪チャンピオンにとっては、9月16日からの全日本合宿でエンジンをかけた練習をこなせたことで“カレリン超え”の準備は万端だった。相手の実力を見極め、それに合わせて勝つすべを試合で出す技術は卓越しており、チャンスを確実にフォールへつなげる瞬発力で4試合連続フォール勝ちという最高の勝ち方を続けた。

 打倒吉田の戦法として、タックル返しを狙う闘い方が多く見られた時期もあった。吉田が“高速タックル”を控えるようになった今、今度はタックルを封じようとする闘い方が“主流”となった感がある。どの国もビデオによる研究が進んでいるのだろう、吉田の闘い方はあっという間に世界に広がるようだ。

■世界一とともに通り過ぎた20代

 しかし、吉田は言う。「自分も相手を研究していけば、自分のレベルも高くなっていくと思います」。初めて世界一になった時の吉田と、今の吉田とが闘えば、今の吉田が圧勝するだろう。進化を遂げながら達成した世界13連覇。いや、進化しなければ遂げられなかった大記録。周囲の注目は、あと4年間、進化を続け、五輪4連覇というカレリンも達成できなかった不滅の金字塔を打ち立てられるかどうかだ。

 吉田は2016年リオデジャネイロ五輪を目指すことは宣言しており、この日も「死ぬまで破られない記録をつくりたい」と、優勝記録をこのあとも積み重ねたい気持ちを表したが、その間をどうするかまでは明確にしていない。栄和人監督は「少し休みなさい、と言いたい」としているが、吉田は「休んでしまうと、きっと何もやらなくなってしまうと思います。それが怖い。今年はもう休んでも、来年は出たいと思います。気持ちを強く持たないと、14連覇、15連覇とは続かないと思います」と言う。

 12月の全日本選手権にその姿はない可能性はあるが、来年春の全日本選抜選手権、そして9月の世界選手権(ハンガリー)では、またその雄姿が見られる可能性は十分だ。

 誕生日(10月5日)の関係で、最初の世界一は20歳の時で、今回が20代最後の世界選手権だった。世界一とともに過ぎ去った20代。「子供の頃、30歳って『おばちゃん』と思っていましたけど、そんなことないですね。まだまだ若いですよ。30代でもできるところを見せたいです」。その笑顔には、三十路でも世界一を重ねるという強い意志がにじみ出ていた。

 「多くの人が応援してくださり、大きな力になりました。オリンピック終わってすぐなのに、家族もカナダまで応援に来てくれて、本当に心強かったです。父、監督、多くのコーチに感謝したい。高田専務理事にもオリンピックの前に指導していただき、お世話になりました。福田会長から直に電話をもらい、『今回は行けないが頑張れ』と言われ、協会の多く方もにもお礼を言いたい」。周囲への感謝を忘れず、最高の世界選手権を締めくくった。

 







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