2020TAコンソーシアム 海外育成プログラム(1)
男子カデット世代フリースタイル海外育成プログラム
2020TAコンソーシアム
プロジェクトマネジャ― 清水聖志人
2011年に制定した「スポーツ基本法」は、我が国におけるスポーツの施策策定および実施を国が責任を持って行うことを明確に示した。それを受けて2013年に策定された「スポーツ基本計画」に則り、文部科学省は新たな事業を実施している。その中の一つが、独立行政法人日本スポーツ振興センターが委託を受け、本協会が受託している2020ターゲットエイジ育成強化プロジェクト「タレント発掘・育成コンソーシアム」(以下、2020TAコンソーシアム)である。本事業は、各世代のタレント選考基準の作成や国内・海外育成プログラムの高品質化に注力し、JWF独自の発掘・育成・強化システムの構築に向け、アスリート選抜システム構築事業を推進する。
2014年10月19日(日)~10月28日(火)の期間、ロシア共和国・クラスノヤルスクにて、2020TAコンソーシアムの一環として第一回男子カデットフリースタイル海外育成プログラムを実施した。
レスリングの2020TAコンソーシアムは、「インテリジェントレスラーの育成」をコンセプトとしており、全国のU-12世代、U-15世代、カデット世代、ジュニア世代から優秀なタレントを発掘し、国内育成プログラムによって育成を行う。国内育成プログラムに参加した中で、特に優秀なタレントには海外における実践機会を提供する(海外育成プログラム)。
今回の海外育成プログラムには、第一回男子U-15/カデット育成キャンプに参加したタレントの中から、50kg級 谷山拓磨(京都八幡高等学校)、58kg 級志賀晃次郎(京都八幡高等学校)、76kg級山崎弥十朗(埼玉栄高等学校)の3名を選抜して同プログラムに派遣した。
本プログラムにおいては、10月20日から23日までクラスノヤルスクにて所在するミンディアシビリ・レスリングアカデミーにおけるインターナショナルキャンプに参加し、10月24~26日の期間、同都市にて開催される「Buvaisa Sytiev国際大会」に出場した。
【インターナショナルキャンプ】
イーナショナルキャンプが行われたミンディアシビリ・レスリングアカデミーは、2面のマットが敷かれている練習場が2か所、3面敷かれている練習場が1か所あることに加え、ウェイトトレーニング場、レストラン、メディカルクリニック、サウナ、アイスバス等が常設されており、非常に恵まれた環境であった。
本キャンプには、ロシア、カザフスタン、ウズベキスタン、アゼルバイジャン、タジキスタン等の選手が参加していた。大会前ということもあり、スパーリング量は少なく、ポジション別の攻防を中心としたトレーニングが行われた。カデット・ジュニア世代のトレーニング終了後に、シニアの練習も行われており、世界トップのトレーニングプログラムを見学することも大きな経験となったと推察された。
【Buvaisa Sytiev国際大会】
第10回Buvaisa Sytiev国際大会は、クラスノヤルスクに所在するIvan Yarigin体育館にて実施された。インターナショナルキャンプに参加していた国に加え、イラン、モンゴル、キルギス等、開催国のロシア以外の強国も数多くのタレントを派遣していた。この様な状況からも、強豪国は、早期から国際経験を積ませていることが伺えた。
■参加国
アゼルバイジャン、カザフスタン、ロシア、キルギス、モンゴル、イラン、ウズベキスタン、ドイツ、タジキスタン、ベルギー、フランス、日本 計12か国
■結果
【50㎏級】谷山拓磨(京都・京都八幡高) 3位=50選手出場
3決戦 ○[Tフォール、11-0]Darhan Kalhenov(カザフスタン)
敗復2 ○[6-4]Gulomjon Abudullaev(ウズベキスタン)
敗復1 ○[Tフォール、10-0]Araik Melkonyan(ロシア)
3回戦 ●[2-4]Razambek Jamalov(ロシア)
2回戦 ○[9-0]Javohir Iristaev(カザフスタン)
1回戦 BYE
【58㎏級】志賀晃次郎(京都・京都八幡高) 5位=43選手出場
3決戦 ●[2-10]Erik Abetyan(ロシア)
準決勝 ●[4-8]Buyan-Dash Sat(ロシア)
4回戦 ○[フォール、2:59=10-3]Garib Etumyan(ロシア)
3回戦 ○[8-5]Asiljan Tohtarjanuli(カザフスタン)
2回戦 ○[フォール、2P=8-2]Kuzel Irgit(ロシア)
1回戦 BYE
【76㎏級】山崎弥十朗(埼玉・埼玉栄高) 優勝=24選手出場
決 勝 ○[6-5]Ertine Mortui-Ool(ロシア)
準決勝 ○[Tフォール、10-0]Artem Krimov(ロシア)
3回戦 ○[4B-4]Eskali Dauletkazi(カザフスタン)
2回戦 ○[Tフォール、2P=10-0]Subudai Shoidun(ロシア)
1回戦 ○[7-0]Emir Matuev(ロシア)
【個別ミーティング】
本プログラム中、4回の個別ミーティングを実施した。内容は、海外育成プログラム評価シート(日々のコンディション、目標設定、目標達成度を日々評価するシート)やキャンプ、トレーニング時の映像を活用し、日々の目標達成度の確認に加え、技術的課題、体力的課題、精神的課題に関する議論を展開し、今後の目標設定と計画について共有を行った。
フリースタイルのカデット世代を対象とした海外育成プログラムは今回が初めての試みであった。今回派遣対象として選抜した3名以外にもカデット世代の優秀なタレントは多く存在する。今後はより多くのタレントに海外育成の機会を提供していくことが肝要となろう。
本事業は、オリンピック競技大会において永続的にメダルを獲得できる強化・育成システムの構築を目指すものであり、文部科学省及び独立行政法人日本スポーツ振興センターより事業の成果報告が求められる。このことから、本協会に関わる全ての関係者が方向性を共有し、事業の推進に努める必要がある。