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2015.05.16

【特集】伝統復活の足音を鳴らした昨季に続き、今年は40年ぶりの優勝を目指す…国士舘大

(文・撮影=樋口郁夫)

 大学のレスリング界に、かつての強豪チームが復活しつつある。1980年代~90年代前半の“日体大黄金時代”に、不動の王者に真っ向から対抗できる数少ない大学のひとつだった国士舘大。東日本学生リーグ戦での優勝は2度だが、オリンピック金メダリストをはじめ強豪選手を数多く輩出し、日本のレスリング界を支えたチームだ。

 昨年のリーグ戦では17年ぶりに日体大を破り、1998年以来の2位へ浮上した。今年(5月20~22日、東京・駒沢体育館)は7階級のうち6階級で4年生がレギュラーを占めるという3年計画で熟成させたチームで(昨年からのレギュラーは5選手)、狙うのは1975年以来40年ぶりのリーグ優勝。昨年の嶋田大育(74kg級=現青森市協会)のような絶対的なポイントゲッターはいなくとも、リーグ戦に必要な総合力で覇権奪還を狙う。

■嶋田大育の抜けた穴は大きいが、残してくれたものも大きい

 今季のリーグ戦で予想されるメンバーは下記の通り。

57kg級: 有延大輝(4年)=全日本学生選手権ベスト8
61kg級: 阿部宏隆(4年)=全日本選手権2位
65kg級: 古谷和樹(4年)=主将、全日本学生選手権ベスト8
70kg級: 工藤諒司(4年)=2013年東日本学生新人選手権フリースタイル66kg級2位
74kg級: 奥井眞生(2年)=全日本学生選手権優勝
86kg級: 菊本涼馬(4年)=全日本学生選手権グレコローマン80kg級3位
125kg級:志喜屋正明(4年)=全日本大学選手権97kg級2位

 国士舘大がいる予選Bグループは、東農大が部員不足で棄権し、早大、大東大との三チームでの争いとなった。早大、大東大とも、昨年の全日本大学選手権の大学対抗得点では国士舘大を上回っており、ともにあなどれない存在。和田貴広監督は「早大はいい選手が加入しているし、楽に勝つ、なんて気持ちは全くない。メンバーを温存する余裕はない。全力でぶつかる」と気を引き締める。

 だが、早大は保坂健(現自衛隊)と前川勝利(現ワセダクラブ)が抜けて再編成途上のチーム。大東大も昨年のリーグ戦では7-0で圧勝した相手。確実に勝ち抜き、昨年王者の山梨学院大への挑戦権を手にしたいところだ。

 和田監督は国士舘大復活の原動力を、「3年計画のチーム育成」というより、「昨年のチームが、嶋田を中心にまとまり、攻撃する姿勢があったことが大きい」と分析する。嶋田が仁川アジア大会に出場し、チームがハイレベルのレスリングに接したことと、1年生だった奥井が全日本学生選手権の両スタイルを制覇したことで上級生が刺激され、選手の意識がより高くなっていると分析。昨年からの流れをもってリーグ優勝を目指す腹積もりだ。

■「伝統の重みを感じ、使命感を感じます」…古谷和樹主将

 古谷主将は「去年の悔しい思いを胸に、リベンジを掲げてきました。挑戦者として挑み、優勝を目指します」と言う。自身は茨城・霞ヶ浦高時代の2011年にも主将を務め、例年以上に「実力不足」と言われたチームを引っ張ってインターハイ団体優勝を勝ち取った経験を持つ。

 チームを盛り上げるリーダーシップは抜群なわけで、「団体戦は、個人の力もさることながら、みんなで盛り上げていくことが大切です」という言葉を実践する能力も並ではあるまい。嶋田の抜けた穴を、団結によって埋められる可能性は十分だ。

 霞ヶ浦は、高校レスリング界に不滅の金字塔を打ち立てた強豪高であり、伝統をつくり上げて来たチームだが、国士舘大はオリンピック金メダリストを世に送ったチーム。加えて、全日本チームのトップが監督として指揮を執る。霞ヶ浦の主将を務め、国士舘大の全盛期を知らない古谷であっても、「伝統の重みを感じ、勝たなければならない使命感を感じます」と言わしめるほど。

 各選手が伝統の重みを意識できれば、昨年からの上昇ムードをさらに押し上げることができるだろう。

■JOC杯の負けをエネルギーに変えられるか、奥井眞生

 心配は、昨年の日体大戦で貴重な白星を挙げて勝利に貢献した奥井が、先月末のJOC杯で高校生(山崎弥十朗=埼玉・埼玉栄高)に敗れ、ショックが尾を引いているのでは、ということ。奥井に直撃すると、「高校生に負けたことではなく、実力で負けたことが悔しく、1週間は落ち込みました」と、悔しさと照れの入り混じった表情で答えてくれた。

 しかし、周囲から「ここで終わりじゃない。終わったら駄目だ」「もっと上で勝つために頑張るしかないよ」といった励ましを受け、「今は気持ちが戻り、頑張っています」と言う。昨年のリーグ戦の活躍を指摘されると、「みんなの応援がありましたから頑張れました。あの思いをもう一度経験したい。去年、瀬戸際の試合を経験させてもらったことは、今年、絶対に役に立つと思います」と表情が明るくなった。

 昨年のJOC杯も、同期ではあるが下の階級でやっていた木下貴輪(山梨学院大)に敗れ、「立ち直れないほどのショック」を経験しながら、それをエネルギーに変え、リーグ戦での活躍を経て、4ヶ月後の全日本学生選手権で1年生の両スタイル学生王者に輝いた。つまずきをプラスに変える力は十分に持っている。心配はなさそうだ。

■山梨学院大との全勝同士の決勝戦、実現するか

 昨年は決勝リーグの最初に前年優勝の山梨学院大と闘い、1-6で敗れて、この段階で優勝の望みがほとんど消えてしまった。今年は最終戦が山梨学院大との闘い。40年目の優勝を劇的なものにするためにも、全勝対決で対戦し、勝利したいところだ。

 山梨学院大は57kg級と125kg級にポイントゲッターを抱えるものの、61kg級の鴨居正和(現自衛隊)が抜けた穴を埋め切るのは厳しいのが現実。国士舘大は61kg級の阿部、65kg級の古谷主将、74kg級の奥井と3勝は見込めるので、“マジックナンバー”は「1」といったところか。

 もちろん、最終戦までに立ちはだかるチームに勝つことが絶対条件。「一戦一戦に全力を尽くします」(和田監督)と、初戦から全力で臨み、栄光復活を目指す。

軽量級を支える61kg級の阿部宏隆

トリを締め志喜屋正明と見つめる和田貴広監督


 







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