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2015.06.16

【全国中学生選手権・特集】決勝で双子の兄弟対決が実現! 史上初の一戦は兄の堤太一(静岡・清水)が制す

(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫)

 大会史上初となる双子での決勝戦が実現した。全国中学生選手権の男子42kg級は、静岡・沼津クラブ所属で、昨年の全国中学選抜選手権38kg級で優勝した堤孔一(静岡・清水)と、双子の兄・堤太一(静岡・清水)の双子対決となり、兄の太一が最後にバックポイントを奪って4-4のラストポイント勝ち。互角の対決を制した。

 うれしさと複雑な気持ちが入り混じった優勝だった。勝った太一は「2人で決勝に行ったことはうれしかったけど、勝って、悔しがっている孔一の姿を見たら、胸が痛くなって、ガッツポーズもできなかった」と、優勝のうれしさよりも複雑な心境だったことを吐露した。

 けれども、太一も負けられない事情があった。「実は双子の決勝対決は2度目です。小学3年のときに、全国大会の決勝で孔一と対決して、その時は負けてしまった。勝ててリベンジできた点はうれしいです」。6年ぶりの対決で対戦成績を1勝1敗と五分にできたことに満足そうな表情を浮かべた。

 また、太一にとって今大会は崖っぷちの大会だった。弟・孔一はすでに全国選抜王者としてタイトルホルダーだったが、自身は表彰台の経験もなかった。「去年はクラブの中で僕だけがメダルを取れなかった。やってきたことが試合に出せてよかった」と、弟だけでなく、クラブ全員に後れを取った悔しさをばねにして、1年間、練習に励んできた結果だった。

 今大会は、女子でも2組の姉妹がそろって決勝に進出するなど、兄弟・姉妹が活躍した大会だった。この光景はどの世代でも珍しくない。伊調馨(ALSOK)も姉・千春とともにオリンピックで活躍し、2012年ロンドンオリンピックには、湯元健一・進一兄弟が双子そろってオリンピックに出場した。

 階級制度があるレスリングでは、兄弟で出場しても別の階級に出ることが多いが、堤は「2人とも42kg級がちょうどいいので、2人で全国大会の決勝で闘うことを目標にしていました。過去2回ほどチャンスがあり、いずれも孔一は決勝に行ったのですが、僕が途中で負けてしまって実現できませんでした」。

 あくまで2人そろって決勝のマットに立つことを目標にし、日々の練習に励んでいたが、その夢がかなうと、今度は優劣を決めなければならなくなった。

■合わせ鏡を見ているかのような試合、一進一退の攻防が続いた

 試合は合わせ鏡を見ているかのような組み合いで、チームの応援は控えめ。先制点を奪ったのは、弟・孔一だったが、すぐさま兄・太一が取り返して2-2。第2ピリオドの中盤に再び弟・孔一がリードを奪うが、ラスト30秒に兄・太一がバックポイントで追いついて4-4。両者譲らない互角の対決だった。

 ルールに基づき優勝はラストポイントを取った太一に決まった。表彰式では太一に金メダル、孔一に銀メダルが授与されたが、健闘した孔一に、急きょ茨城県特産のメロンを副賞とするサプライズが。試合が終わればノーサイド。大会運営側は、双子でしのぎを削って、内容の濃い試合を展開した“堤兄弟”を2人そろって評価した。運営側の粋なはからいに会場からは、温かい拍手が送られた。

 2人が所属する沼津クラブの松岡徹監督は、「実は、孔一は手首を骨折し、回復中でした。棄権も考えていたほどでしたが、それでも本人の意思で出場して決勝の舞台までいきました。それだけでも本当によく頑張った」と話し、選抜王者として臨んだ孔一の意地と根性は監督から見ても“金メダル級”だった。

 堤兄弟の全中は幕を閉じたが、秋にもう一度大きな大会がある。全国中学選抜選手権だ。堤は「1勝1敗だから、もう兄弟対決はいいかな」と話したが、階級については家族やコーチらと最終的に決める予定だ。

 高校に入学したら、階級は分ける予定。来年からは2人そろっての“優勝”を目指せることになる。「目標は湯元選手です。2人そろって活躍できて、ぶれない強さがある選手になりたい」。

 数年後、全日本の舞台で堤兄弟が“湯元の再来”と注目される日が来るだろうか―。


 







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