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2015.06.28

【全日本選抜選手権・特集】けがによるブランクと不安を乗り越えての優勝…女子48kg級・登坂絵莉(至学館大)

(文=布施鋼治、撮影=矢吹建夫)

 全日本選抜選手権の女子48kg級は、世界選手権2連覇中の登坂絵莉(至学館大)が実績通りの実力を発揮して優勝。4年連続の世界選手権出場を決めた。

 しかし、昨年10月以降、登坂はけがに悩まされ続けた。左足のつけ根や足の甲を痛めたかと思えば、翌月にはすねを、12月には両ひじを負傷した。今年5月には左手首に痛みを覚えた。全日本選抜選手権の前だったにもかかわらず、大事をとってスパーリングなど患部に負担のかかる練習を10日ほど休んだ。

 登坂はその間、朝も夜も接骨院に通って治療に努めたと打ち明ける。「練習時間は短く、筋トレなどできる範囲内でやるしかなかった」

 時間が経つにつれ、押し寄せる重圧は大きくなるばかり。ディフェンディング・チャンピオンでありながら、ベストコンディションには程遠い状態なのだから無理もない。世界選手権で3位以内に入れば、リオデジャネイロ・オリンピックへのキップを手にすることができるが、反対にここでつまずけばオリンピック出場の夢はいったん遠のいてしまう。

 「負けたら、今までの自分の人生は意味がなくなる」-。大会の2週間前、ようやく練習を再開したが、左手首の痛みはまだ残っている状態だった。ネガティブな感情にとらわれた登坂は、練習場で泣いた。その時、栄和人監督が発した一言は、胸にグサリと突き刺さるものだった。「プレッシャーも怖さも、全部背負え」

 当時の心境を登坂は振り返る。「普通は選手をフォローしますよね。でも、本当にそうなんだなと思いました」。姉のように慕う吉田沙保里選手に相談すると、「まだ時間はあるから」と諭された。胸がスッとした。オリンピックで金メダルという自分の夢は、家族の夢であることを再確認することもできた。

■接戦を制した原動力は「勝ちたい」思いの強さか

 大会では波乱もあった。決勝で顔を合わせると予想していた宮原優(東洋大)が初戦の2回戦で姿を消した。登坂は「何が起こるか分からない」と感じたそうで、驚きの表情を隠さない。「勝ったのは自分の先輩(岩群安奈)。その努力を身近で見ていたので先輩を応援していたけど、複雑な心境でした」

 決勝で顔を合わせたのは今春から自衛隊体育学校に身を置いた入江ゆき。ここ1年半は対戦経験がないものの、通算成績では大きく負け越している強敵だ。強化合宿では幾度となく手を合わせているので、お互い手の内は知り尽くしている。登坂は「決勝は怖かった」と述懐する。「スパーリングではやられることも結構多かった。今回マットの上で向き合ってみると、いつもと違う感じだった」

 勝因は登坂の「勝ちたい」という思いの強さだっただろうか。いつもは攻め主体のレスリングを見せる登坂だが、決勝ではディフェンスにも目を見張るものがあった。2-0で迎えた第2ピリオド終盤、入江にバックを奪われる。残り時間は十分にある。逆転される可能性もある中、登坂はしのぎにしのいだ。

 それでも、諦めず追い続ける入江。動きの止まらない攻防に場内は大きくどよめいた。最後は登坂が逆にバックを奪い返してダメ押しの2点を稼いだ。4-0。試合終了のホイッスルが鳴り響くと、登坂は自ら手を叩いて大会4連覇を喜んだ。

 「勝ちたい執念がなければ、あそこまでの動きはできなかった。練習でもやったことがない。本当に執念だったと思います」今後は世界選手権に向け、まずはオーバーホールに徹するつもり。「思い切り練習したいので、けがをしっかり治したい」。筋トレの成果か、最近、登坂の服のサイズはSからMになったという。

 けがとプレッシャーを乗り越えた現在、気持ちの強さも大きくなったと信じたい。


 







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