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2015.10.23

【特集】休部の危機打開へ、スタッフとOB会が一致団結…苦境を耐えしのげ! 50年を超える歴史を持つ東農大


(文・撮影=樋口郁夫)

 かつて東日本学生リーグ戦で一部リーグに在籍。学生王者や大学王者、さらに学生連盟の委員長も輩出した東京農業大学。1960年創部で、すでに50年を超える歴史がある。3年前にレスリング部のスポーツ推薦がなくなって新入部員が途切れ、現在の部員は4年生3人のみ。今年はリーグ戦の出場もできず、休部の危機に面している。

 しかし、金子忠一部長、飯山禮文監督、宮下久雄ヘッドコーチほか、OB会の情熱は消えていない。来春には一般推薦や初心者によって部員を集め、再スタートへの意欲は十分。OBによってキッズ・クラブ「東京農大ジュニア倶楽部」も設立され、長期的視野に立った活動も始まった。「1」からの再出発を目指す東農大レスリング部を追った。

■休部の危機に面しているチームを、多くの大学が支援

 10月某日。東京の一等地、世田谷区にある東農大レスリング場。全日本大学グレコローマン選手権、および全日本大学選手権へ向け、3人の部員が汗を流していた。他に、“5年生”選手が1人練習を手伝い、同じマットでは東京農大ジュニア倶楽部の飯塚康介監督がキッズ2選手の指導をしていた。

 選手が少ないのでお互いに目が行き届き、手抜きをすることはできない。スパーリングは休む間なく行われ、約2時間の練習でも運動量はかなりのものになる。ただ、大勢の選手の中で刺激し合うことと、いろんなタイプの相手との練習に欠けるのは事実。

 そこを他大学への出げいこや夏休みなどの合同合宿で補う。例年夏は長野・菅平で国士館大、中大、立大などとも実施。ふだんの練習にはない刺激を求めている。出げいこでは、国士舘大、専大、明大、青学大などへ実施したことがある。

 昨年、すぐ近くに日大の合宿所と練習場が引っ越してきて、「いつ来てもいいよ」と言ってくれるという。休部の危機に面しているチームを、多くの大学が立て直しを期待している。

 栗谷川寛主将(青森・光星学院高卒)は「少ない人数でも盛り上げてやろう、という気持ちでやってきました。お互いに注意しあって、ヒートアップした中から上を目指す気持ちが生まれました」と言う。部の消滅の危機に関しては、「ボク達が最後の代になるのは嫌ですね…」と寂しそう。来春1人でも入って部が続けば、高校へ行って勧誘するなど微力ながら協力していきたい」と、卒業後も部の存続に協力したいという。

 10月中旬の全日本大学グレコローマン選手権は、3人の部員のうちただ1人出場した。残念ながら初戦敗退に終わった。来月14~15日の全日本大学選手権(大阪)は3選手出場の予定で、3選手とも大学生活最後の大会。来年以降の上昇につなげるためにも、好成績を残したいところだ。

■「食」「環境」「エネルギー」「健康」のスペシャリストを養成する大学、求人倍率は約3・21倍

 飯山監督と宮下コーチは、スポーツ推薦が廃止されたことで、「それを復活させることに気をとられすぎた」と3年間を振り返る。スポーツ推薦はなくなったが、同大学には一般推薦入試があり、評定平均値が3・5以上あれば、レスリングの成績にかかわらずチャレンジできる制度がある。

平成28年度一般推薦入試サイト)。

 この制度を使い、高校で実績は残せなかったが「大学でレスリングを続け、成績を残したい」という選手を集め、部の存続を目指すことからの再スタートに舵を切り替えた。他に、レスリングの未経験者を対象に新入生の勧誘に力を入れ、来春には数名の部員をそろえて「部員0」という状況を避ける予定だ。

 「農業大学」という名称からして、「農家の息子など将来農業に従事しようとする人間が進む大学」というイメージがある。これは大きな誤解。飯山監督は「卒業生の9割以上は一般企業や官公庁に行っています」と説明する。

 学部は農学部のほか、応用生物科学部、地域環境科学部、国際食糧情報学部、生物産業学部があり、生活の中で重要な要素である「食」「環境」「エネルギー」「健康」の面でのスペシャリストを養成する大学。時代の最先端を行く分野であり、学生の4割は女子。

 大学案内によると、昨年度の求人倍率は3・11倍。求人倍率とは、職を求めている学生1人あたりに何件の求人があるかを示す数値で、この数値が高いほど企業から人気のある大学ということになる。

 株式会社リクルートホールディングスの調査では、2015年度の全大学の平均求人倍率は、景気回復の兆しがあって前年の「1・28倍」より上昇したが、それでも「1・61倍」。東農大の学生が、いかに社会から必要とされている人材であるかが分かる数値だ。(東農大ホームページ

 宮下コーチは、アピールのひとつとして、キャンパスから徒歩2分の場所に運動部寮が新設され、月1万円の寮費(食費は別で2食1000円)で生活できる利点を挙げる。部屋は4人1部屋だが、仕切りがあるのでプライベートは守られ、個室と言っていい構造。留年しても卒業まで住むことができるそうで、「親の負担はぐっと少なくなります」と言う。

■東京農大ジュニアレスリング倶楽部で“東農大のレスリング”をアピール

 選手をそろえたあと期待されるのが、3年前に大学職員になったOBの三浦正司さんの存在だ。選手とスパーリングのできる若手指導者の存在は、高校時代に実績のない選手や初心者にとっても大きなパワーとなってくれそうだ。

 長期的視野に立っては、キッズ・クラブのスタートがある。2001年の全日本学生選手権のフリースタイル74kg級で2位となった飯塚康介さんが、昨年の全国少年少女選手権の4年生39kg級で優勝した長男・康太君(当時AACC)を部員とし、今年スタートさせた(クリック)。

 部員はまだ1人だが、近隣のクラブのほか、埼玉や静岡のチームの練習にも加わる活発な活動を展開。世田谷区の小学校を対象に部員集めにも力を入れ始めた。ここで鍛えた選手が必ずしも東農大に進んでくれるとは限らないが、宮下ヘッドコーチは「東農大のレスリングをアピールすることで、大学に還元されると思います」と、キッズ・クラブの発展が東農大レスリング部の再建と発展につながると考えている。

 スポーツ推薦制度が突然打ち切られ、初心者だけによる“ひん死の状態”を耐え抜き、推薦制度が復活してオリンピック選手を輩出するまでに飛躍した大学に、青山学院大学がある。「1」からの復活は不可能ではない。今が耐えどき。この窮地をスタッフやOB会が一丸となって乗り切り、将来の栄光につなげてほしい。

 ■東農大レスリング部 1960年創部。1965年に三部リーグで初優勝して二部リーグへ昇格。1972年に二部優勝して一部リーグへ。今年は部員不足で一部リーグを棄権。来季、部員が集まれば二部リーグからのスタートとなる。
  個人では1978年の全日本学生選手権グレコローマン48kg級で工藤武之が初の学生王者へ。1990年に坂村智紀が同級で優勝。全日本大学選手権では 1997年のフリースタル74kg級で柴田寛が初の王者へ。翌年の全日本学生選手権でも優勝。柴田は現在までに全日本選手権21回出場の最多出場記録を 持っている。2004年の全日本大学グレコローマン選手権では丸山秀樹が120kg級で優勝し、同大会で初の王者へ輝いた。

 







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《オリンピック・レスリングNo.62》

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