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《勝者の素顔=JWFフェイスブック・インスタグラム》
(文・撮影=樋口郁夫)
男子グレコローマン97kg級(旧98kg級)で国内の第一人者の地位を築いた奈良勇太(警視庁)。2016年世界ジュニア選手権5位、2017年アジア・インドア&マーシャルアーツ大会3位と、国際舞台でも順調に力を伸ばしてきた。10月7日からは一足先に闘いの場であるハンガリーへ向かい、外国選手と十分に練習を積んで世界選手権に臨む。
昨年は初戦敗退だったたけに、大言壮語はしない。「まずは1勝ですね」。同期の樋口黎がリオデジャネイロで銀メダルを取り、文田健一郎が昨年の世界選手権で優勝した。「メダルへのあこがれはありますが、現実を受け入れなければ」と、今の自分を見つめる。
現実といえば、この半年間、警視庁警察学校へ通っていたため、練習量が足りていないという一面もある。「学生時代は授業の合間にもトレーニングしていました。練習時間で言えば、その時の3分の1くらいです」。7月のトルコでの国際大会、8月のアジア大会(インドネシア)と黒星が続いているのは、練習時間の不足が原因か? 奈良は否定する。「ルールが変わりましたから」。
グラウンドがさほど得意ではないので、グラウンドの攻防が入った今のルールに順応できていないことの方が大きい要因だという。「スタンドで技を受けての失点はあまりない。失点のほとんどはグラウンドです」。
グラウンドの防御という課題に全力で取り組まねば、東京オリンピックに間に合わない。幸い、4日に警察学校を卒業、警視庁のレスリング選手となり、練習時間は学生時代よりもとれる。「やる時は集中してやってきました」とは言うものの、発展途上の選手にとって練習時間・量は欠かせない。
豊富な練習量を積め、質も高い練習に取り組める最初の機会が今月7日からのハンガリー遠征。セルビアで国際大会をこなした87kg級の角雅人(自衛隊)と130kg級の園田新(ALSOK)と合流し、地元ほかの選手と練習を積む。グラウンドの防御に課題があるだけに、スタンド戦で押し負けてコーションを取られないようにすることが必要。パワーをつけ、相手の攻撃に対応できる身のこなしができるためには、外国選手との練習にまさるものはない。
ハンガリーといえば、96kg級で世界王者に輝いているバラス・
重量級の選手に特別に遠征費を使ってくれることへの期待も、ひしひしと感じている。「何回か前のアジア大会(注=2006年大会)で重量級が派遣カットになったことを聞いています。結果を出さなければいけない。松本先生(慎吾=男子グレコローマン強化委員長)は『重量級も絶対にオリンピックに出す』と言い続けています。その強い期待にこたえないとなりません」
グレコローマンの重量級は、松本強化委員長が一時代を築き、奈良の大学入学直後に練習をつけてくれた斎川哲克(2012年ロンドン・オリンピック96kg級代表=現栃木・足利工高教)が受け継いだ。日体大の“直系”にあたる奈良。その伝統を受け継ぐことが望まれる。