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2019.12.30

【2019年全日本選手権・特集】“ストップ太田”を誓い合った相手との闘いに勝つ!…男子グレコローマン67kg級・高橋昭五(警視庁)


(文=布施鋼治、撮影=矢吹建夫)

最後の(?)同門同期決戦は高橋昭五が制した

 2019年世界選手権63㎏級金メダリストの太田忍(ALSOK)の参戦で、今年の全日本選手権・男子グレコローマン67㎏級は盛り上がった。

 最初のクライマックスは準々決勝でぶつかる予定だった太田と今年の世界選手権67㎏級代表の高橋昭五(警視庁)と見られていた。だが、日体大で1歳違いの先輩後輩対決は幻に終わってしまう。このブロックの初戦である2回戦で、太田は井ノ口崇之(自衛隊)にまさかのテクニカルフォール負けを喫してしまったのだ。

 決戦前日に組み合わせが決まった時点で、太田との頂上対決を覚悟していた高橋は心の中の手綱を締め直した。「今大会は太田先輩だけではなく、スタイルを問わず番狂わせが多い。そういう中で、自分は『しっかり勝ち抜こう』という強い意志を持ってマットに上がり続けました」

 高橋がそう思うのも無理はない。今年の世界選手権では、東京オリンピック出場の枠取りを期待されながら3回戦で逆転負け。その直後の高橋は、この世の終わりを迎えたような悲しみに包まれており、彼を取り囲んだ記者に泣きながら訴えかけた。「誰か僕のパスポートを捨ててくれませんか? こんな結果だったら、帰国できない」

 失意の高橋をケアしてくれたのは日体大の松本慎吾監督や家族のあたたかい励ましだった。中でも、現在アジア最大の格闘技プロモーション『ONE Championship』に参戦中の兄・高橋遼伍からの「お互い世界でテッペンを取ろう」というエールは身に染みた。

 太田の参戦も、高橋の闘志を一層燃え上がらせるきっかけとなった。「年はひとつしか違わないけど、学生時代は寮で同じ部屋で一番よくしてくれた先輩でした」

「絶対に太田先輩を67㎏級の代表にさせない」

 階級は太田の方が一つ下だったが、練習ではやられることも多かった。今大会では決勝で当たった下山田培(警視庁)も、高橋と立場は一緒だった。高橋と下山田は大学の同期で、職場も一緒。同じ階級なので、ここ最近はお互いに出る大会の決勝で当たることが多かった。一緒に練習する機会は徐々に減っていくばかり。

下山田の必死の攻撃をしのぐ高橋

 しかし、太田がこの階級に参入してくるとなれば、話は別。「絶対に太田先輩を67㎏級の代表にさせない」と誓い合った。高橋は66・67㎏級で1度ずつ、下山田は67kg級で1度、世界選手権に出場している。ずっとこのクラスで闘ってきたプライドがあった。

 まだ組み合わせが決まっていない時点では、「どちらが太田先輩を倒すか」と話し合い、「決勝で会おう」と約束した。グレコローマンの選手層が厚い日体大ならではの熱ききずな。しかしながら、いつものように決勝で当たった時には私情を持ち込む余地などどこにもなかった。

 試合は途中まで下山田が3-1とリードしていたが、第2ピリオドになると高橋はぶらさがり一本背負い投げを決め逆転。さらにもう一度、一本背負いでダメ押しポイントを加え、来年3月、中国・西安で行なわれる東京オリンピック・アジア予選に出場する権利を得た。

「下山田選手は手が長いので、投げを打ちやすい。ちょっと無理やり組みに来たので、そこに合わせて投げに行った。(タイミング的に)運が良かったと思います」

 試合後、下山田は泣きじゃくりながら高橋と握手してつぶやいた。「絶対に東京(オリンピック出場)を決めてくれ」

 この言葉は高橋の胸にグサッと突き刺さった。(捨ててもいいと思った)パスポートは、まだ高橋の手元にある。








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