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2020.06.22

【特集】自粛中でも姉と打ち込み練習、再び巡ってきたオリンピック金メダルへの道を目指す…女子50kg級・須﨑優衣(早大)

(文:ケン・マランツ=UWW記者/翻訳アシスト=柴田マランツ亜論)

 東京オリンピックへの夢は、ほとんどなくなったと思った。予期せぬ“運命のいたずら”によって復活を遂げた女子50kg級の須﨑優衣(早大)は、運命がもたらすあらゆる機会を利用せねばならないと悟った。東京オリンピックで目標を達成するため、1年待たされることになるが、暗闇の中で“金メダル”が放つ一筋の光を求め、遅れを取り戻すしかない。

昨年12月の全日本選手権で優勝、一時は絶望的だったオリンピックの道がつながった須﨑優衣(早大)=撮影・矢吹建夫

 スポーツ界の多くの選手と同様に、新型コロナウィルスの影響で、須﨑はこの数ヶ月間、自宅でトレーニングをし、マットに戻る日のために準備をしてきた。須﨑は、メール・インタビューで「こんなにレスリングと離れた期間は初めて。早くレスリングをしたい。この期間、レスリングの映像を見てイメージトレーニングをしたり、自分に足りない部分のトレーニングに取り組めてきたので、プラスな面ももちろんあります」と話した。

 6月30日に21歳になる須﨑。弱点があるとすれば、何なのか。昨年の世界選手権代表を逃したのだから、議論の余地はあるだろう。しかし、48kg級と50kg級で世界チャンピオンに2度輝いた選手として、これ以上の失敗をするわけにはいかない。

 練習は、千葉県の自宅での体力維持のみに限られたが、約1時間ずつのワークアウトを1日2回やってきた。3〜5kmを走った後、近くの公園や自宅でエクササイズ、あるいはウエートトレーニングを行う。

 レスリングのトレーニングを行う機会もあった。姉・麻衣(早大OG)の協力のもと、打ち込みの練習をした。麻衣は父・康弘さんと同じく、早大でレスリング部に所属し、クリッパン女子国際大会(スウェーデン)で3位という成績も残した。「週末は姉の仕事が休みになるので、姉と一緒にトレーニングと打ち込みをしたりしてきました」

1年延期は、「強くなれる期間を1年間頂けた」と考える

 家族との“再会”はうれしい恩恵だった。大学の授業は全てオンライン化され、友人やチームメートと会うこともなくなってしまった。中学2年生の時にJOCエリートアカデミーに入学して以来、須﨑にとって最も長い時間を家族と過ごしていることになる。

今年2月の全日本合宿での須﨑。間もなく、この練習が再開される

 「長い時間家族全員で過ごすことができ、とても新鮮でうれしかったです。とても貴重な時間でした。オリンピックや世界の舞台で活躍することを楽しみにしてくれているし、応援してくれていることを、一緒に長い時間過ごして、あらためて実感しました。家族のためにも頑張りたいと思いました」

 来年の東京オリンピックに出場するには、2021年3月に中国・西安で開催予定のアジア予選で2位以内に入り、出場権を獲得する必要がある。 昨年12月の全日本選手権で優勝し、予選出場権を獲得した時は3ヶ月の準備期間があった。予選会が中国からキルギスに変更となり、延期され、最終的には15ヶ月先になってしまうとは、彼女を含めて誰が予想しただろうか。

 「開催できるのかできないのか分からない状態で、試合に向けて自分自身を高めて体を作っていくのは大変でした。1年間延期に決まったことで、強くなれる期間を1年間頂けたとプラスに考え、今よりもっと強くなります」と気合を入れた。

「0.01%の確率があるなら、頑張ろう」と言い聞かせた昨年夏

 須﨑のオリンピックの夢は、昨年9月にヌルスルタンで開催された世界選手権の代表権を逃した時、打ち砕かれたように思えた。それでも、JOCエリートアカデミーの吉村祥子コーチ(エステティックTBC)の「0.01%でも可能性があるなら頑張ろう」という言葉を心に留め練習を続けた。

アジア予選出場を決めると、両手に顔をうずめて号泣した=撮影・矢吹建夫

 オリンピックへの扉は再び開いたものの、そこを通り抜けるには、まずアジア予選に進出する必要があった。そのために、全日本選手権で世界選手権代表の入江ゆき(自衛隊)や、2016年リオデジャネイロ・オリンピック金メダリストの登坂絵莉(東新住建)を倒さなければならなかった。

 須﨑は準決勝で登坂を破り、決勝で入江に2-1という僅差で勝利した。「これがラストチャンス。必ず、この最後のチャンスを自分のものにして、私が絶対に東京オリンピックに行く」その強い思いで闘った。

 「(世界選手権代表決定戦の)プレーオフで負けた時は迷いが生じ、自分を信じ切れてあげられなかった。全日本選手権では、私を信じて応援してくれる人たちのためにも、自分のためにも、“私ならできる”と信じて闘いました」

レスリングが大好きなので、いつも試合を楽しんでいます

 2018年、初の世界ジュニアタイトルを獲得してから約1ヶ月後のシニア世界選手権(ハンガリー)で、決勝でマリア・スタドニク(アゼルバイジャン)に圧勝し、2度目のシニア世界一を獲得した。その時のUWW中継で、米国人解説者は彼女について「彼女は微笑んでいて、試合を本当に楽しんでいる。リラックスしている」と解説した。

2018年世界選手権決勝、マリア・スタドニク(アゼルバイジャン)に快勝し、全身で喜びを表す須﨑

 これが正確な評価かどうか尋ねられた須﨑は、「はい。合っています」と答えた。「私はレスリングが大好きなので、いつも試合を楽しんでいます。私が自分の力を最大限に発揮して世界選手権で金メダルを獲得した時も、強い選手に勝った時も、楽しんでいました。試合の前は緊張しますが、試合までの間に、優勝するためにしっかり追い込んで、厳しい練習をたくさんしてきたので “私なら絶対に大丈夫。あとは思いっ切り全力で試合を楽しもう”という心意気で闘っています」

 須﨑の厳しい決意と陽気な性格は、国内外のファンに愛されてきた。 UWWホームページを通じて世界中のファンへのメッセージを求めると、応援への感謝を伝え、パンデミックを克服するために努力を続けるよう激励のコメントを残した。

 「世界中に応援してくれる方々がいて、本当にうれしいです。心から感謝しています。私が負けた時には励ましてくれ、私が勝った時には自分のことのように喜んでくれて、ファンの方々のおかげで、頑張ることができています。今はコロナウィルスで世界中が大変な状況ですが、みんなで一つになり、またレスリングができる日、試合ができる日を楽しみに、みんなでこの難局を乗り越えましょう」

  そして、「さらに強くなり、進化してまた世界で活躍する姿を見てもらえるよう頑張ります!」と続けた。全日本合宿に再合流するまで、あとわずか。







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