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2021.10.02

【特集】1年生でインターハイ制覇! 格闘技一家の長女、「ポスト土性沙羅」へ名乗り…女子68kg級・北出桃子(愛知・至学館高)

 

(文=ジャーナリスト・粟野仁雄)

 マットを走るようにしてスパーリングを申し込む相手は、東京オリンピック62kg級で金メダルを取った川井友香子(ジャパンビレッジ)。「姉妹でオリンピック金メダル」の大殊勲から、まだ1ヶ月半だが、姉の梨紗子(同)とともに、早くも古巣の至学館大で後輩たちと汗していた。

1年生でインターハイを制した北出桃子=撮影・矢吹建夫

 福井・おおい町で8月に行われたインターハイ女子68kg級は、愛知・至学館高1年生の北出桃子が見事に優勝した。1回戦で当たったのが「東海高校大会でぼろぼろに負けていた(学年が)ひとつ上の選手」という伊藤渚(三重・いなべ総合学園高)。トーナメント表を見たとき、「勝つチャンスかもという思いと、うわっ、どうしようという思いが混ざりました。2回続けて負けたくなかった」。

 試合は最初の30秒で4点も取られた。「やばい、と思いました。でも、すきを見て2点取り返して流れを変えられました」。大接戦で息切れしたが、攻め続けて12-10で勝った。2回戦は持永聖愛(大阪・堺リベラル高)に8-0。準決勝は万木蓮花(同)に2-1。

 決勝は星野レイ(東京・日体大桜華高)。アクティブポイントなどで3点を先取したが2点取られて追い上げられる。しかし「希和コーチに(至学館高・栄和人監督の長女)に『このまま自分のレスリングを』と言われ、点を取られないことに徹し、相手のタックルを切って」(北出)3-2で振り切った。「やっぱり1回戦が大きかった」。話し方から、落ち着いて闘った様子が目に浮かぶ。   

小学校卒業で親元を離れ、三重・一志ジュニア教室へ

 大阪市旭区の出身。「いろんなスポーツやりました」と話すが、サッカー以外はテコンドー、柔道、柔術と、格闘技ばかり。兄・達也はレスリングを経てテコンドーに打ち込み、小学校卒業後、言葉も話せない中、たった一人で韓国に留学。全韓国高校種別テコンドー選手権大会で優勝する快挙を達成。“テコンドーの神童”と言われた。

 ネット番組の企画だが、RIZINに参加しているキックボクサーの那須川天心と“神童対決”をやったほど。9月19日のJOC杯全日本ジュニア選手権(埼玉・さいたま市)では高校男子55kg級で優勝し、兄妹で高校チャンピオンとなった。また、弟・幸也は、全国少年少女選手権3度の優勝を経て、現在はサンボの選手。

川井友香子と練習する北出=筆者撮影

 格闘技兄弟の中、桃子は「中学からはレスリング一筋と決めました」。同時に飛び込んだのが、吉田沙保里さんの亡き父・栄勝さんが創始者のレスリング教室「一志ジュニア」(三重県津市)。今は沙保里さんの兄・栄利さんが運営する。「いろんな所から誘われたけど、父の道場で続けようと思っていた。でも、土壇場で栄利さんに誘われたんです。ホームシックにはならなかったです」。中学時代は全国中学選抜選手権などで優勝している。

 高校1年生でのインターハイ優勝は、東京オリンピックの女子53kg級で金メダルを取った至学館大・元主将の向田真優(現ジェイテクト)や、同50kg級優勝の須﨑優衣(現早大)も達成している。「中学生の頃は、1年生でチャンピオンなんて、すごいな、と思っていました。自分がなってしまいました。(大会は無観客だったが、その後の)帰省の際には両親が迎えに来てくれ、『おめでとう』と言ってくれました」とちょっと誇らしそうだ。

モチベーションを維持し、さらなる飛躍を

 68kg級は、日本人には厳しい階級だったが、2016年リオデジャネイロ・オリンピックで、これも先輩の土性沙羅(東新住建)が優勝し、東京オリンピックにも出場した。土性は引退したわけではないが、北出は「ポスト土性」を狙う最若手だ。「沙羅さんに練習してもらったけど、やっぱり強い、リオでは最後まで絶対に勝つという気持ちが強かったから勝てたと思います。本当に尊敬しています」。

北出のスパーリングを見つめる栄和人監督

 インターハイで、至学館高は3人が優勝するなど活躍した。率いていた栄和人監督は取材日、北出に盛んに声をかけていた。教え子の快挙について、栄監督は「技術もまだまだ未熟だけど、あんな未熟なままで優勝してしまうのだから、すごいよ」と驚く。

 「監督には、たまにきついこと言われるんですけど、自分の弱いところをよく見てくれているな、って感謝しています」。自己の経歴や試合の経緯、試合中に何を考えていたかなどを、筋道立てて滑らかに語る頭のよさもある。筆者は「高1って、こんな理路整然と話ができたかなあ」と驚いた。

 今年12月の全日本選手権や来年の全日本選抜選手権は、まだ出場資格年齢(17歳)に達せず参加できない。コロナで国際大会も減り、当面、大きな公式試合からは遠のく。だが、モチベーションを維持して練習を積んでいくことで、北出はさらにクレバーなレスリングを展開し、栄監督をいっそう驚かせるはずだ。







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