(文=布施鋼治 / 撮影=矢吹建夫)
追われる者の苦しさを体感しながら全日本でV2を達成-。2021年全日本選手権の最終日、女子50㎏級は吉元玲美那(至学館大)が昨年に続いて制した。日体大や育英大が台頭する中、至学館は吉元も含めて女子では最多となる3階級を制覇した。
大会前、吉元は「世界選手権優勝のプレッシャーを感じないで、自信を持って臨もうと思っていました」と語っている。昨年の初優勝で他の選手からのマークが厳しくなることは明白だったが、10月の世界選手権で優勝したことで、吉元に対するマークはより一層厳しくなることは十分予想された。
実際に、伊藤海(早大)との決勝では、第1ピリオド最初にアクティビティー・タイムを課せられ、リードを許してしまった。タックルに入ろうと思っても入れない。そうしようとする動きを察知され、逆にバックを狙われ、会場がどよめく場面もあった。「(私に対する)相手の対策をすごく感じました。それに引っかかってしまったというか、その通りになってしまった」
第2ピリオド、吉元はプレッシャーをかけながら相手の攻め手を拒む。消極的と見なされた伊藤は、2度もアクティビティー・タイムを受けてしまう。結果的に、いずれもポイントを取れずに30秒が経過し、吉元の点数となった。
結局、この2点が決勝点となり、昨年の全日本選手権の決勝同様、吉元が伊藤を下した。
「競り合う中で勝ち切ることは、今後も大切になってくる。今回もそうなった中で勝ち切ることができた。自分が成長した部分だと思う」
堂々の2連覇達成ながら、吉元は自ら反省することも忘れない。「カウンターを狙われることは分かっていた。そのために深く入り込めないところが、自分の課題だと思う。詰めもまだ甘い。(自分のスタイルが)分析されても勝ち切る力と攻撃力をさらに高めていきたい」
来年6月の全日本選抜選手権からは、東京オリンピックで金メダルを獲得した須﨑優衣(早大)が復帰してくることが予想される。吉元は須﨑を「気持ちが強い選手」と評した。「オリンピックは圧勝だったけど、どんなにスレスレになろうとも、必ず勝っている。(劣勢でも)最後に逆転している。勝ち切る力がすごい」
東京オリンピック前は世界チャンピオンの須﨑、アジアチャンピオンの入江ゆき(自衛隊)、そして2016年リオデジャネイロ金メダリストの登坂絵莉(東新住建)という三つ巴の様相を呈していた女子50kg級。須﨑のライバルだった入江も、もう一度オリンピックに挑戦してくることは十分考えられる。
2024年パリ・オリンピックに向けて、女子の最軽量級は前回にも増して激しい国内争いが展開されるのか。オリンピック・チャンピオンと世界チャンピオンの頂上対決が待ち遠しい。