【2022年全国高校選抜大会・特集】強豪の影で蓄えていたエネルギーを爆発させた全国優勝…51kg級・菊地優太（静岡・飛龍）

雌伏（しふく）のときを乗り越え全国王者にたどりついた菊地優太（静岡・飛龍）＝撮影・保高幸子

　昨年の王者が体調不良で棄権した2022年全国高校選抜大会・個人戦51kg級は菊地優太（静岡・飛龍）が優勝した。昨年はフリースタイルの全国大会出場の経験がなかった選手。学校対抗戦でも、優勝した日体大柏（千葉）の選手を含めて4試合に勝っており、通算9戦全勝という内容だった。

　菊地は「優勝できて、ホッとしています」と第一声。決勝は、学校対抗戦でも13－7で勝っている片岡大河（千葉・日体大柏）が相手で、終了間際のテクニカルフォール勝ち。「年下の選手。1点ずつていねいに取りにいこうと思って、その通りにできました」と振り返る。学校対抗戦でも勝っている相手なので精神的にも優位だったと思うが、「負けないぞ、という気持ちを持ち続けました」と言う。

　1回戦から通じて、同じ東海地区の選手でお互いに手の内を知っている伊藤久遠（三重・いなべ総合学園）との準々決勝だけが4－4の接戦で、あとは快勝と言える試合。それでも「みんな強かったです。気持ちを切らさず最後まで闘えました。得意技でポイントを取れたこともあって、その点はよかったです」

優勝はうれしいが、昨年王者の不在は心残り

　ただ、昨年王者の白川剣斗（佐賀・鳥栖工）の不在は「心残りですね」と話す。白川とは昨年の全国高校生グレコローマン選手権で対戦し、第１ピリオド、テクニカルフォールで敗れていた。本来のスタイルでの闘いではないが、負けていたことで、当然リベンジ心はあっただろう。白川を破らなければ、まだ本当のチャンピオンではない、という気持ちを持っているようでもある。

決勝で闘う菊地。終了間際にテクニカルフォール勝ちした＝撮影・保高幸子

　4月下旬のJOC杯は、ジュニアの最軽量が57kg級となるので、体重的な理由で見送り、インターハイを目指す。そこでは、打倒白川を果たしての優勝が目標。「スピードが持ち味なので、スピードを生かして攻めるレスリングをやりたい。タックルを取られたこともあったので、入られても防御をしっかりしていきたい」と自分の長所を話すとともに、弱点の克服を誓った。

　東京都出身。AACC～自由ヶ丘学園ジュニア・アカデミーで小学生や中学生の全国王者、JOC杯カデット優勝などを経験し、飛龍へ修行の場を求めた。「監督やコーチの熱心さにひかれました」。これまで多くのチャンピオンを輩出している同校で全国一を目指すための決断だった。

　チームの同じ階級に、2019年全国中学王者の勝目大翔がいて、その壁を越えられず、昨年はこの大会もインターハイも出場できなかった。井村陽三監督は「いずれ階級を分ける」と言い聞かせたそうで、強豪との練習の中で腐らず実力をつけていった。

インターハイでは軽量2階級制覇も可能！

　勝目が階級を上げたことで出番が回ってきて、蓄えていたエネルギーを爆発させた。井村監督は「去年は試合経験を積ませられなかったけど、もともと力のあった選手。今回、チャンスはあると思った。狙わせての優勝です」と予想通りを強調。「2人が同じ階級にいるのは、もったいなかったですよ」と言う。

2019年にJOC杯カデットで優勝、世界カデット選手権にも出場した

　校名が「沼津学園」だった時代から、オリンピック銀メダリストの松永共広を筆頭に数多くの強豪を輩出してきた同校だが、この大会の優勝は2016年の山本壮太以来6年ぶり。インターハイでは2014年の山本泰輝から生まれていない。「私もあと2年で定年です。『2年で何人チャンピオンを作れるかな』と頑張ってきましたので、よかったです」と久しぶりの全国王者輩出を振り返った。

　勝目は、負傷治療のため予選に出場しなかったので今大会の個人戦には出場していないが、学校対抗戦では昨年のインターハイ王者を含めて4戦全勝と強さを見せている。毎日が全国トップ同士の練習で、インターハイでは菊地＆勝目のＷ優勝なるか。