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2022.06.08

【2022年全日本選抜選手権にかける】大けがから復帰してアジア女王へ! 「なたみ」の名が間もなく浸透する…女子59kg級・屶網さら(至学館大)

 

 「屶網」という姓を初めて見て、「なたみ」と正しく読める人は皆無に近いだろう。「名字由来net.」によると、全国で約140人しかいない姓とのこと(名字ランキング1位の「佐藤」は約18万5000人)。石川県・羽咋神社にある古代皇族の墓の墓守の名前が由来との説があるが、定かではない。

4月のアジア選手権で優勝、世界一を視野に入れた屶網さら(至学館大)=UWWサイトより

 レスリング界では、間もなく「なたみ」と読む人が大多数になる可能性がある。昨年12月の全日本選手権・女子59kg級で屶網さら(至学館大)が2度目の優勝を果たし、今年4月のアジア選手権でも優勝。この間のJOC杯ジュニアクイーンズカップ57kg級では、妹の瑠夏(るか=愛知・至学館高)が勝ち、8月の世界ジュニア選手権への出場を決めた。

 姉は、高校2年生で出場した2018年アジア選手権で銀メダルを獲得。妹は2019年世界カデット選手権で優勝しており、ともに国際舞台での実績を持っている。姉・さらは今月の明治杯全日本選抜選手権(東京・駒沢体育館=同級の試合日は16日)で世界選手権(9月、セルビア)出場の切符をかける。「世界選手権へ行く、という目標で頑張っています。アジア選手権で見つかった課題は克服し切れていませんが、とにかく結果を出したい」と闘志を燃やしている。

 シニア&ジュニアの世界選手権でW優勝が実現すれば、「屶網」という名前がレスリング界をにぎわし、当然のように「なたみ」と読んでもらえることになる。

外国選手に「力負けしなかった」!

 全日本選手権では3試合を無失点のフォールかテクニカルフォールで圧勝。アジア選手権では5選手の総当たりリーグ戦を勝ち抜いた結果からして、自信をもって臨める大会と思われる。それでも「みんな強いですから」と気をゆるめない。

昨年の全日本選手権決勝で闘う屶網。3試合に圧勝し2度目の日本一に輝いた=撮影・矢吹建夫

 気になる選手に、昨年57kg級で2位となり、階級を上げた元木咲良(育英大)の名を挙げる。ジュニアクイーンズカップU20-59kg級を制した勢いもあり、世界チャンピオン(櫻井つぐみ)を輩出した育英大の選手は要注意だ。

 2024年パリ・オリンピックの国内予選は今年12月から始まる。それに向けて階級を変更している選手も少なくないが、屶網は今年の世界選手権までは非オリンピック階級の59kg級でやることを決めていた。「世界選手権で優勝してから、57kg級に挑みたい」。まず世界チャンピオンの実績をつくり、それからオリンピック代表への挑戦を描いている。

 通常体重は59kgを少し超える程度。どの階級でも、外国選手はかなりの減量をして臨むことが多いので、その体重では体格で劣っているはずだが、屶網は「けがをして、その治療中、しっかりと上半身の強化をしましたので、海外の選手に力負けはしなかったと思います」と自信を持つ。

オリンピック・イヤーの元旦に痛恨の負傷

 けがは、2019年の年末から年始にかけて行われたオリンピック・イヤー恒例の年越し合宿の最中に起こった。その日付がすらすら出てくる。1月1日だから、忘れようがない。全日本選手権59kg級を制し、東京オリンピック以降を見据えて合宿に参加し、練習中に前十字じん帯を断裂。戦列離脱を余儀なくされた。手術して復帰したあと、傷口に菌が入って再手術。練習に戻ることができたのは昨年夏ころ。実に1年半以上の月日を要した。

高校2年生で出場した2018年アジア選手権。決勝で2016年60kg級世界チャンピオンのペイ・シングル(裴星茹=中国)に1-3で惜敗した

 「大きなけがは3回目だったんです。仕方ない、という気持ちでしたね」。今だからこそ、笑みを浮かべて振り返るが、けがを乗り越えながら順調に実力を伸ばしてきただけに、当時は平静ではいられなかっただろう。「マットで練習している選手を見ると、『早く戻りたい』という気持ちになり、辛かったです」と振り返る。

 マットに立てない間、至学館大の同期生である類家直美(屶網と同じ全日本選手権で優勝)が2020年アジア選手権を制し、永本聖奈が全日本選手権の激戦階級の57kg級で2位入賞、吉元玲美那が全日本選手権優勝を経て世界選手権で優勝と、チームメートが活躍したことも辛さを倍加させた。一方で、「この期間中にトレーニングを必死にやらないと、復帰してから追いつくことはできない」という思いもあり、その気持ちが支えてくれた。

 その期間中のトレーニングの蓄積が外国選手にも負けないパワーにつながった。復帰してからは、西日本学生選手権と全日本学生選手権で順調に勝ち、全日本チャンピオンへカムバック。4年前にあと一歩だったアジア・チャンピオンにもたどりつき、一段ずつ階段を上っている。「地力?」との問いに、「周りの支えのおかげです」と即答した。

「最強チームでやりたい」と至学館高へ進学、世界一を視野に

 5歳で大阪・エンジョイでレスリングを始めた。同クラブは、決して勝利だけを求めて詰め込むチームではなかったという。屶網姉妹以外にも志賀晃次郎(拓大~現警視庁福生警察署)、白井達也(現日体大)ら世界トップを目指している選手がいる一方、大相撲に進んだ宇良(うら=夏場所は前頭6枚目で勝ち越し)や、東大に進んで主将を務めた有川将史もいて、レスリングという枠にとらわれず幅広い人材を世に送り出している。

至学館大で練習する屶網(相手は妹の瑠夏)

 屶網は「自由にやらせてもらって、よかったと思います」という中から、小学校高学年になると負けず嫌いの性格が出てきて、近くのクラブに出げいこに行くようになった。中学2年のときの黒星が悔しく、「最強チームでやりたい」と至学館高への進学を決め、現在に至っている。

 負傷というつまずきもあったが、ひとまずの到達点が世界チャンピオン奪取。それは、すでに視野に入っている。その実現のためにも、まず全日本選抜選手権に全力で挑む。秋には「なたみ」という名前が広がるか。







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