【2022年栃木国体・特集】2回戦でライバルを倒し、インターハイV逸の無念を晴らす…少年男子フリースタイル55kg級・松村祥太郎（千葉・日体大柏）

　8月のインターハイ王者が順当に勝ち上がった2022年栃木国体の少年男子フリースタイル。王者が出場していなかった55kg級は、インターハイ5位だった松村祥太郎（千葉・日体大柏）が勝ち上がり、フリースタイルでは昨年のインターハイ51kg級以来の全国制覇を成し遂げた。

　「今年、全国高校選抜大会、インターハイとフリースタイルでは優勝できなかった。高校最後の大会で優勝でき、ホッとしています」

▲序盤のタックルとローリングで試合の主導権を握った決勝戦。落ち着いた多々かぶりで優勝を引き寄せた＝撮影・矢吹建夫

　8月の全国高校グレコローマン選手権では優勝していたものの、中心にやっているフリースタイルでの優勝は格別の様子。決勝の相手は、小学生時代に全国少年少女選手権の決勝で優勝を争ったこともある伊藤洋行（秋田・秋田商）。今年3月の全国高校選抜大会・準決勝では2－1で競り勝つなど実力が拮抗している選手だ。

　開始早々に場外に出されて1点をリードされる展開となった。それでもテークダウンと2度のローリングで逆転。さらに2点を取って8－1として試合の主導権をにぎり、カウンターで2点を失ったものの、8－3のスコアで勝利を引き寄せた。

執念で今季2戦2敗のライバルを破る！

　ヤマ場は、決勝戦もさることながら、初日に行われた2回戦、インターハイ2位の勝目大翔（静岡・飛龍）との一戦だっただろう。昨年のインターハイでは決勝で対戦して6－5で辛勝。お互いに階級を上げた今年は、全国高校選抜大会の学校対抗戦で5－6の黒星。インターハイでは準々決勝で対戦して4―9で敗れた。今季2戦2敗、通算では「2勝2敗」（本人談）のライバルだ。

　今大会の組み合わせが決まり、勝目と2回戦で激突することが分かって以来、試合動画を見直すなど徹底した研究をしたと言う。優勝を目指す選手なら、強豪とどこで当たろうが同じ、という意識が必要と思われるが、早い段階で闘うのは嫌なもの。その思いは否定しなかった。連敗していたことも影響していたのか、「思うように体が動かなかった」と振り返り、リードを奪われてしまった。

　それでも、ラスト約20秒にポイントを逆転。「最後は、意地というか執念でしたね」と振り返り、粘りの勝利を強調した。

▲2回戦でライバル（勝目大翔）に競り勝った松村。優勝をぐっと近づけた＝撮影・保高幸子

シニア57kg級で通じるためには体重とパワーアップが必要

　昨夏のインターハイ51kg級で優勝したあと、「来年（2022年）は55kg級で団体・個人戦で全勝する」という目標を立てていた。インターハイの学校対抗戦では全勝をマークして王座奪還に貢献し、最優秀選手（MVP）にも選ばれたが、個人戦で優勝を逃したことは痛恨の思い。MVP受賞を「救いではありましたけどね」と話し、悪い気持ちはしなかったものの、100パーセントの満足ではなかった。高校の大会の最後に無念を少しは晴らせたようだ。

▲8月のインターハイ学校対抗戦で日体大柏の王座奪還に貢献し、最優秀選手に選ばれた松村（右）。個人戦で優勝を逃したせいか、表情は今ひとつだった＝撮影・矢吹建夫

　高校生の場合、成長に従って階級を上げても、同じ階級の強豪も階級アップする場合が多く、顔ぶれは大きく変わらないケースが少なくない。松村も「（周囲の）メンバーはあまり変わらなかったんです」と振り返る。その中でも自分はなかなか体重が増えず、力負けすることが多かったと言う。

　その状況は今でもあまり変わらないようで、「スピードで勝負してきた」そうだ。しかし、シニアになると最軽量級が57kg級になり、このままでは通用しないことは感じている。大学進学に向け、「ご飯をしっかり食べて体重を増やし、ウエートトレーニングをやってパワーアップしないとなりません」と言う。

　12月の全日本選手権は、監督と相談して決める予定。57kg級では体重面の不安があり、ましてオリンピック階級なのでハイレベルの闘いが予想される。「けがをしてしまっては何もなりませんから」と話す。次にその勇姿が見られるのは来年かもしれないが、パワーアップした姿を見せてくれるか。

（撮影＝保高幸子）