東日本学生の2022年最後のイベントとなった「東日本学生選手権(秋季)」は、会場入り口に小型ながらデジタル看板を設置。将来の試金石とした。
これまで大会会場の入口にある看板といえば、板や横断幕が定番だった。今は、すべてにおいてデジタルの時代。その流れに従って導入した。今回はテスト的なケースで、大会名が表示されているだけだが、いずれは大型の機械を導入し、レスリングのイメージビデオや、体育館の中で行っている試合を生中継することも視野に入れている。
駒沢体育館は駒沢公園の中にあり、大会とは関係のない人が数多く行き来する。大会名の看板だけなら、「レスリングやっているのか…」で通り過ぎるケースがほとんどだが、レスリングのアクションビデオや実際に行われている熱い闘いを見せることで、「ちょっとのぞいてみようか…」となる可能性も出てくる。
国際大会の表彰式で掲揚される国旗がデジタル化されて久しい。はためく国旗がなくなって「寂しい」「味気ない」という声もある一方、若い選手は何の問題もなく受け入れていて、それが時代の流れ。新しい技術の導入で世間を引きつけることが必要だ。
同連盟は今年、経費と紙資源の節約を目的に大会パンフレットのデジタル化に踏み切った。特に混乱もなく、この試みは成功。慣例や従来の常識にとらわれていては前進できないことを証明した。
他に、昨年は連盟初の女性学生委員長を誕生させ、今年はリーグ戦での連合チーム結成など数多くの“慣例を打ち破る”行動をおこしている。同連盟の吉本収理事長(神奈川大監督)は、今後の試みとして、大会本部の記録入力の端末とネットをつなげ、トーナメント表のデジタル化とリアルタイム掲載を目指している。
すでに世界レスリング連盟(UWW)が世界選手権などで導入しているが、記録を入力するとすぐにスマホで見られることで、会場で試合を待っている選手にとっても役立ち、地方でネット中継を見て応援する選手の動向を気にしている人たちへのサービスになる。
スコアシート(ジャッジペーパー)のペーパーレス化も視野に入れている。大会ごとに膨大なスコアシートが使われ、終われば、そのすべてがゴミ箱へ行く。吉本理事長にとっては、山積みにされる未使用のパンフレットとともに頭痛の種だった。
だが、UWWもスコアシートのペーパーレス化の方針を示しており(関連記事)、これもデジタル化の恩恵を受けられることが分かった。デジタル化してコンピューター上に残せば、多くの人が試合展開を知ることができ、選手が卒業してからアクセスして当時を振り返ることもできる。
選手に授与する賞状のデジタル化も考えている。「記念すべき賞状は額に入れて部屋に末永く飾る…」は、今は昔のこと。時代の流れの速い現代では、多くの選手は「過去のこと」としてとらえ、どこに置いたか分からなくなっていることも少なくない。デジタル化してスマホに保存できるようにした方が、選手にとっては便利なのでは、との発想だ。就職活動で提出する場合も、スマホに保存されていれば、思い立ったときにすぐプリントできるメリットもある。
いずれも、経費の問題もあり、まだ議論が必要な段階で、すぐに実現できるものではないが、発想がなければ前進はない。吉本理事長は「まずアイデアを出すことが必要。次に、スタートすることが大事」と話す。時代の最先端を行く吉本理事長の手腕が期待される。