ビーチ・ワールドシリーズ2023年第1戦（アルゼンチン）出場の日本チームが帰国

　アルゼンチン・ブエノスアイレスで行われたビーチ・レスリングの2023年ワールドシリーズ第1戦に出場した日本チームが5月11日、成田空港に帰国した。80kg級で阿部宏隆（茨城・水戸市スポーツ少年団）が銀メダルを取り、日本初のワールドシリーズ参加で及第点を得た形となった。

　阿部は「優勝を目指して行ったのですが、（達成できなかったものの）銀メダルを取れて、ホッとしている気持ちです」と、悔しさの中に達成感もある様子。決勝の相手のジョージア選手は、フリースタイルで2018年U23世界選手権優勝、2021年世界選手権3位、ビーチではワールドシリーズで優勝を重ねている強豪。「予選からずば抜けていました。すべての試合をあっという間に終わらせていました」とのこと。

　その選手と決勝で闘い、30秒のうちに1ポイントを3度取られて完敗。「何もできませんでした」と、その強さに脱帽という表情。「圧力が強く、レスリング力も強かった。準決勝までは通じた自分の（ビーチでの）力が何も通用しませんでした」と振り返った。

▲2位入賞の阿部宏隆（右＝茨城・水戸市スポーツ少年団）と、無念の予選リーグ敗退の山田義起（立山商事）

　その環境がないこともあり、この大会に向けてビーチの練習はしていなかった。出場していた外国選手は、インスタグラムに練習シーンをアップしている選手も多く、「それなりの練習をして臨んでいるようです。日本が世界での闘いに勝つには、ビーチの練習が必要だと思います」と言う。

　外でやる闘いだけに、それに合わせた練習も必要とのこと。今大会は太陽が照りつける中での闘いだったので、「途中で日射病のような状態になりました」と話す。時に強風が吹いたり、雨が降ったりすることもあるわけで、どんな環境下でも勝つだけの対策を訴える。

　予選リーグで敗退した70kg級の山田義起（立山商事）は「悔しいです」と第一声。日本でのルールと違っていたところがあって、それも敗因のひとつ。来月、シンガポールで行われるワールドシリーズ第2戦にも参加予定で、「世界ルールをしっかり研究し、それに合わせた練習をしたい」と、リベンジを誓った。

　沖縄在住。近くの砂浜でランニングするなど、“砂対策”はやって臨んだが、「やはり、（マットのレスリングとは）違いましたね」と言う。砂だけではなく、闘いそのものも違い、「別の競技として考えなければならないでしょう」と言う。それだけに、実際に世界のビーチを経験できたのは大きい。シンガポール大会へ向けて、「この経験を生かした練習をやり、１から頑張りたい」と気持ちを新たにした。

　鎌賀秀夫監督（日本協会）によると、タックル行ったとき、ひざを砂につくことに関するルールで日本と世界の相違があったとのこと。「国際審判員と確認したい」と話し、闘いの基本のおさらいを口にした。

▲試合会場。炎天下の中で行われた

　意外に知られていないが、ビーチ・レスリングは、1990年代の終盤、日本協会の福田富昭理事長（当時）がFILA（現UWW）に提案したことに始まる。東京・台場での実技の写真や映像を提示し、レスリングの新スタイルとしての採用を訴えた。

　FILAは2004年にビーチを認定。日本は翌2005年に、FILAのマリオ・サレトニグ副会長（カナダ）やアジア連盟のキム・チャンク会長（金昌圭＝韓国）を招聘し、茨城・大洗で第1回ビーチ・レスリング選手権を開催。FILAがトルコで世界ビーチ選手権を開催したのは翌2006年で、いわば日本が世界を先導してスタートした種目だ。

　鎌賀監督は「日本は世界で初めてビーチの大会をやった国。にもかかわらず、世界の大会になかなか参加してこなかった。2026年のユース・オリンピック（セネガル）では男女のビーチが実施される。本気になってビーチの選手を養成しなければならない」と訴えた。

※+90kg級に出場した天野雅之選手（中大職）は別便のため、写真・コメントはありません。