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2014.05.26

【連載】ネバーギブアップ! 2020年、金メダル10個への挑戦(4)…日本協会強化委員長・栄和人

(日本協会強化委員長・栄和人)

前回記事(35年前の世界ジュニア選手権でのほろ苦い思い出)


第4回「天国の堀幸奈さんに、必ず世界一の感動を届けます」

2012年のジュニアクイーンズカップで2位になった堀幸奈さん

 今回は、先月のJOCジュニアオリンピック(神奈川・横浜文化体育館)の期間中、目頭が熱くなった経験をお伝えしたいと思います。レスリングへの思いを、あらためて感じさせてくれた出来事です。

 昨年3月、沖縄県で一人の女子選手が交通事故のため17年の短い生涯を閉じました。東京・安部学院高校でレスリングをやっていた堀幸奈(ゆきな)さん。沖縄・恩納村への修学旅行の最中、他の部員とともに早朝ランニングをしていたところ、わき見運転で信号無視の車にはねられました。

 必死の治療もむなしく、事故から2週間後の3月21日、病院で息を引き取りました(クリック)。前年のジュニアクイーンズカップで2位に入り、アジア・カデット選手権でも銀メダルを獲得していました。この年も、約1ヶ月後にジュニアクイーンズカップを控え、修学旅行に参加していた部員で自主トレーニングをしていた時の事故です。

 幸奈さんの母・京子さん(旧姓福田)は、女子レスリングの一期生と言える世代の選手です。1987年の第1回世界女子選手権(ノルウェー)に参加して銀メダルを獲得。2年後の第2回大会(スイス)にも参加し、チームの主将を務めました。幸奈さんは、母が達成できなかった世界選手権での金メダル獲得、そしてオリンピック出場へ向け、レスリングに打ち込んでいました。

 埼玉県朝霞市で営まれた葬儀には、吉田沙保里選手とともに参列しました。本人、そしてご両親の無念さを思うと、いたたまれない気持ちになり、2人とも涙が止まりませんでした(クリック)。

 今年のJOCジュニアオリンピックカップの時、母・京子さんから「幸奈の思い出です」として、1枚のハンカチをいただきました。「幸魂」という言葉の下に、下記の言葉が書いてあり、最後に「輝」と書いてあります。

負けないこと
投げださないこと
逃げださないこと
信じ抜くこと
ダメになりそうな時
それが1番大事
いつか、母の記録を追い越したいです。

 これは、亡くなる3ヶ月前にあった女子エリート合宿でのミーティングの時、私が選手に話して聞かせた言葉です。幸奈さんはこの言葉が心に残り、合宿後の感想文にそれを書きました。

 感想文はコピーし、活動報告として保護者に届けています。そのコピーから文面を写し、ハンカチを作られたそうです。つまり、幸奈さんの自筆の文によるハンカチです。このハンカチを見た時、幸奈さんの魂が下りてきて、すぐそばにいるような気がしました。「私の分まで頑張って」と伝えに来たのではないか、と。

 幸奈さんは、私の話した言葉をしっかりと受け止めてくれました。指導者として、こんなに感動し、重責を感じることはありません。私たちは何百人もの選手に多くの言葉を伝えています。そのひと言ひと言が選手を支えると思うと、これまで以上に真剣に思いを伝えていかねばならないと感じました。

 その思いを幸奈さんに伝えることは、もうできません。困難に立ち向かえば、つらい局面に何度もぶつかりますが、それが経験できるのは、生きているからこそです。そのことの幸せさを、私たちは感じなければなりません。選手の皆さん、練習や試合でつらく苦しいことがあっても、それは幸せなことです。その幸せを、しっかりと噛みしめてください。

 今年の世界選手権(ウズベキスタン)には、このハンカチを持って行き、ジャージのポケットに入れてセコンドにつきます。試合前にハンカチを握りしめ、天国の幸奈さんに「見守ってくれ」と頼んでみようと思います。優勝した選手が涙を流した時には、そのハンカチを渡して涙をふかせます。

 私たちは幸奈さんの遺志にこたえるため、全力を尽くして闘います。世界一の感動を、必ず天国の幸奈さんに届けます。世界一を目指した仲間は、永遠に一緒です。


《ネバーギブアップ! 2020年、金メダル10個への挑戦》

■第3回: 35年前の世界ジュニア選手権でのほろ苦い思い出(2014年5月9日)

■第2回: 米国で頑張る永島聖子さんにエールを贈ります(2014年4月25日)

■第1回: 吉田栄勝さんの功績と思い出(2014年4月18日)


 







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