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2013.09.10

【特集】世界選手権へかける(18)…男子フリースタイル74kg級・高谷惣亮(ALSOK)

《世界選手権へかけるシリーズ》

男子フリースタイル 55kg級 60kg級 66kg級 74kg級 84kg級 96kg級 120kg級
男子グレコローマン 55kg級 60kg級 66kg級 74kg級 84kg級 96kg級 120kg級
 女   子  48kg級 51kg級 55kg級 59kg級 63kg級 67kg級 72kg級

(文=布施鋼治)

 昨年のロンドン・オリンピックに続き、男子フリースタイル74kg級で世界選手権に出場する高谷惣亮(ALSOK=右写真)は、昨夏、オリンピックが閉幕しても自分の試合映像を見返すことができなかった。テレビでオリンピック特集が放送されると、即座にチャンネルを変えた。高谷は振り返る。「ロンドンの話題を振られることもイヤでしたね」。

 帰国して1週間くらいし、心の整理をつけたつもりだった。しかし、たとえ初戦敗退でも日本代表という肩書を持つ高谷を世間は放っておかない。「日本代表だったんだって? すごいね」「う、うん、ありがとう」。話題を振られると、すぐ会話を打ち切るように務める自分がいた。心のダメージは少なからず残っていた。「自分に腹が立って仕方がなかった」-。

■「日本と同じ闘いをしていたら、海外では負ける」-

 試合映像を見たのは、12月の全日本選手権の前になってからのこと。そこには必要以上に相手の攻撃を待つ自分が映っていた。「自分のやりたい技も出さずに、ずっと待って待っているという感じだった」

 幾多の国際試合の経験から、自分に足りないものはおぼろげながら把握しているつもりだ。「スピードは世界で闘えるレベルにあると思う。けれど、パワーの面ではちょっと足りないものがあると感じています」

 国際試合のキャリアを積み重ねるうちに、国内と国外では同じ試合展開をイメージするのは危険と考えるようになった。高谷は差し合いひとつとっても全然違うと力説する。「ちょっと前までは国内も海外も同じように闘わないといけないと思っていたけど、全く逆ですね。日本と同じ闘いをしていたら、海外では負ける」

 代名詞ともいえるタックルでも、最近はふたつほど心がけていることがある。ひとつは狙わないということ。「タックルって、『入りたい、入りたい』と狙っていたら、絶対に入れない。狙って入ろうとすると、体(のバランス)が崩れる。周りから『入れ、入れ』と促されると、入りたいと思うけど、そうなったら絶対に入れない」

 もうひとつは突っ込まないこと。これは今年2月にイランで開催されたワールドカップで、ロンドン・オリンピックの74㎏級王者、ジョーダン・バローズ(米国)と闘った時の教訓が活かされている。「(突っ込みすぎると)切られてバックに回られるケースもある。バローズと闘った時も、バックに回られて足首をひねられ、バキッという音とともに足をぶっ壊されてしまった。その時も狙って狙って突っ込んでいた。失敗したなと思いましたね」

■リオデジャネイロまで「あと3年もある」

 だからといって焦りはしない。高谷の発想は柔軟だ。リオデジェネイロまではあと「3年しかない」ではなく、「3年もある」と捉えている。「危機感を持ちながらやるのは大事だと思う。でも、理解もしていないのに危機感だけを持ったら、『どういうこと?』となっちゃう。3年しかないと考えるより、『3年もあるんだから、自分でどう考え、どういう練習をして、どういうふうに取り組んでいくのか』を考える方がいい。そういう意味で、3年もあると考えているわけです」

 自分のレスリングに応用できそうなことだったら、貪欲に何でも取り入れる。最近はサッカーのブラジル体操やヨガに取り組む。ヨガについて訊くと、高谷は「メッチャクチャ役立っています」と、身を乗り出しながら話し始めた。

 「柔軟性を高めて自分の攻撃の可動範囲を広げることができるし、壊れにくい体を作ることもできる。ヨガはストレッチに呼吸法が入ったもの。その呼吸の仕方で体を柔らかくしていく。合宿している時でも、だいたい毎朝やっています。同じ部屋の選手が寝ている中、ひとりでヨガポーズをとっています」

 すべては自分の意思で取り入れた。高谷は、「そうしないと自分のためにはならないじゃないですか」と語気を強めた。「ちょっと視点を変えようと思ったんです。ロンドンのあと、海外の試合でも勝ったり負けたり。自分で何が足りないのかなと考えました。確かに筋トレも大事だと思うけど、その前にもっと基礎となるものをやった方がいいんじゃないかと思い立ち、調べていくうちにヨガと巡りあったわけです」

 新ルールは、2004年までのルールに重なり合う部分が多いため、8月末の菅平合宿では、参加していた2004年アテネ・オリンピック代表の小幡邦彦・山梨学院大コーチから積極的にアドバイスをもらった。「ロシアの選手だったら、こういう技を仕掛けてくるとの対策を教えてもらったりしました。収穫がありましたね」

 テレビカメラの前では「金メダルを獲ります」と大見得を切る。しかし、「オリンピックやワールドカップで失敗した経験をふまえ、いろいろ試しながら、メダルを獲りにいきたい」-。24歳になったタックル王子も、悩み、考えながら強くなる。

高谷惣亮(たかたに・そうすけ=ALSOK)   初出場
 1989年4月5日、京都府生まれ、24歳。京都・網野教室~京都・網野高~拓大卒。2009~11年全日本学生選手権優勝、2008~11年全日本大学選手権優勝など学生界を席巻。この間、2010年世界学生選手権7位などの成績。
 2011年全日本選手権で優勝し、2012年のロンドン・オリンピック・アジア予選で2位となってオリンピックへ出場。その後は国内の大会で勝ち続け、第一人者の実力を見せた。177cm。

 ◎高谷惣亮の最近の国際大会成績

 《2013年》

 【2月:ワールドカップ(イラン)】
7・8決戦 ●[不戦]Nurlan Bekzhanov(カザフスタン)
5回戦 ●[不戦]Jakob Makarashvili(グルジア)
4回戦  BYE
3回戦 ●[不戦]Miroslav Stefanov Kirov(ブルガリア)
2回戦 ●[0-2(0-2,1-7)]Jordan Ernest Burroughs(米国)
1回戦 ●[0-2(3-5,0-1)]Sadegh Saeed Goudarzi(イラン)

 【1月:ヤリギン国際大会(ロシア)】=16位(34選手出場)
 3回戦 ●[1-2(1-0,0-1,0-1)]Mostafa Khosejkhani(イラン)
 2回戦 ○[2-0(3-0,3-0)]Nyambayar Baatar(モンゴル)
 1回戦  BYE

 《2012年》

 【8月:ロンドン・オリンピック】=16位(19選手出場)
1回戦 ●[0-2(0-1,0-1)]Ashraf Aliyev(アゼルバイジャン)

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 ◎高谷惣亮のオリンピック成績
 
 【2012年ロンドン・オリンピック】=16位(19選手出場)
1回戦 ●[0-2(0-1,0-1)]Ashraf Aliyev(アゼルバイジャン)
 
 ※世界選手権の出場はなし


 

 







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