《JWFデータベース》 / 《UWWデータベース》 / 《国際大会成績》 / 《勝者の素顔=JWFフェイスブック》
《世界チャンピオン・向田真優》 / 《全成績(中学1年生~)》
(文=布施鋼治)
「勝ち上がっていくにつれ、追われる立場になってきた。誰よりも強い気持ちで試合に臨むことが大切になってくると思う。金メダルが獲れるように頑張りたい」
昨年の世界選手権55kg級を制した向田真優(至学館大)は、2年連続Vに向け、覚悟を決めている。強化合宿の最大の課題はけがをしないことだった。「あとは、攻めて、攻めて自分のレスリングをすること。けがしないこととのバランスは難しいけど、1日1日を大切にしていきたい」
”ポスト吉田”と言われて久しいが、吉田から学んだことは計り知れない。最近身にしみてわかったこと─、それは「研究されても、強い選手は勝つ」ということだ。「得意技をしっかり出し切って、守られても攻めていくことが大切だと思う。得意技を失敗したからといって反撃されるのではなく、そうなったらそうなったで、違う技でとりにいけるようにしたい」
8月上旬の強化合宿では吉田から実戦に役立つアドバイスをもらった。「タックルに入ったあと、私はグラウンドで行こうと思いすぎて、つい相手の腰に手を回してしまう。でも、吉田さんは『そうではなく、タックルに入ったら、すぐフォールを狙うことが大切』だとおっしゃっていました」。
勝ち上がっていくにつれ、相手はどんどん強くなっていく。勝てる試合は、短時間で終えた方がいい。すなわち、タックルからすぐにフォールを狙った方がいい。「そういう面を気づかせてくれることは本当にありがたい」と振り返る。
最も警戒しているのは、今年のアジア選手権2回戦でも当たったヨン・ミョンスク(北朝鮮)だ。「その時は自分のタックルが決まって、テクニカルフォールで勝つことができたけど、ヨン選手はカウンターがうまい。私が入った時に逆をついてきたりする。彼女と再び対戦するなら、常に低い体勢で攻められるようにしたい」。
北朝鮮からは別の選手がエントリーしており、ヨンとの再戦はなさそうだが、カウンター・タイプの選手との対戦では、この時の経験が役に立つことだろう。
昨年の世界選手権での反省も忘れない。準決勝までスタンド・レスリングの攻めに終始し、決勝を迎える時には腕がパンパンになっていたことだ。そこで、以後の練習では筋トレによる強化を念頭に上半身の調整に励んだ。
栄和人監督(協会強化本部長)には「上半身の筋肉がついた」とほめられ、「すごくうれしかった」と振り返る。「監督からは『女の体になったらダメだ。男の体になれ』と指摘されました。その言葉が胸に響いて、(先の)強化合宿に入る前に、雑念を捨てて試合に臨もうかと思い、茶色だった髪の毛も黒色に戻しました」
優勝するためなら何でも捨てられる。坂上嘉津季(58kg級)と須崎優衣(48k級)とともに世界選手権が終わるまで大好きなお菓子断ちも決行中だ。「差し入れとかもあるので、『これ、少しだけ食べてしまいました』と事後申告するのはありなんですけどね(笑)」
ハングリー精神の塊となった黒髪の20歳は、パリのマットで成長ぶりを見せられるか。
向田真優(むかいだ・まゆ=至学館大) 初出場(通算2度目の出場) 1997年6月22日生まれ、20歳。三重県出身。東京・安部学院高卒。157cm。2013年世界カデット選手権52kg級優勝など早くから国内外で台頭し、2014年ユース・オリンピック52kg級優勝。2015年全日本選手権は53kg級で2位。 2016年は全日本選抜選手権53kg級優勝のあと、世界ジュニア選手権55kg級で優勝。12月の世界選手権55kg級でも勝った。 |
|
|
|
《関連記事》
■2017年06月18日: 【2017年全日本選抜選手権/第2日・特集】優勝選手の声(3スタイル)
■2017年05月13日: 【アジア選手権・特集】女子53kg級優勝・向田真優(至学館大)の声
■2016年12月11日: 【世界選手権・特集】世界2位を撃破! 19歳の若き世界チャンピオン誕生!…女子55kg級・向田真優(至学館大)
■2016年12月06日: 【特集】2016年世界選手権へかける(6)完…女子55kg級・向田真優(至学館大)
■2016年05月30日: 【明治杯全日本選抜選手権/最終日・特集】優勝選手の声(女子)
■2016年04月05日: 【ジュニアクイーンズカップ・特集】憧れの至学館大でオリンピックを目指す! 55kg級・向田真優(至学館大)
■2015年10月13日: 【全日本女子オープン選手権・特集】前世界女王を撃破! 向田真優(JWA/東京・安部学院高)が再起の優勝